激安ファストファッション「PRIMARK」はなぜネット販売を敬遠するのか?

激安ファストファッション「PRIMARK」はなぜネット販売を敬遠するのか?

photo by Hazel Nicholson via Flickr (CC BY 2.0)

 コロナウイルスによる封鎖期間中に販売が伸展したのはネットによる販売だ。ところがファストファッション業界において今もネット販売に踏み切れないでいるのがアイルランド生まれの激安ブランドPRIMARKだ。ホームページは開設しているが、ネット販売は実施していない。

◆少数店舗なのにスペインでの顧客数がZARAを凌ぐPRIMARK

 2006年にスペインに進出して以来PRIMARKのスペインにおける躍進は目覚ましい。店舗数も50店舗を数え、英国に次いで2番目に重要な市場となっている。

 今年はバルセロナのカタルーニャ広場に7000平米の店舗をオープンさせることになっている。それを凌ぐのがマドリードで展開させている12400平米の店舗だ。

 英国とスペイン以外にフランス、イタリア、ベルギーなどでの躍進も顕著だ。

 PRIMARKの凄さは僅か50店舗(2018年当時)しかないのに、例えばスペインでの顧客数はZARAのそれを凌いでいる。

 英国でも2015年のバーステインの統計になるが店舗1平米あたりの年間売上は8200ドル(88万5600円)でH&Mの5250ドル(56万7000円)を凌いでいた。〈参照:「Buisness Insederスペイン版」〉

◆薄利多売戦略がネット販売では裏目に

 PRIMARKの魅力は何といっても価格だ。多くのアイテムが10ユーロ(1180円)とか20ユーロ(2300円)といった価格帯で、著名ブランド物を模写したようなデザインで、しかも品質も悪くない。ということで、非常に低いマージンを設定している。

 それをそのままネット販売にかけると、傾向として30-40%は返品になって来る可能性がある。この費用は店舗での販売と比較して最終的には6倍程度のコストアップに繋がるというのである。ということは、同社のマージンを食ってしまうことになる。だから、同社の経営陣は今もネット販売はやりたいが出来ないというジレンマを感じているのである。

◆突然のコロナ危機でPRIMARKのネット戦略も変わるのか?

 しかし、今回のコロナ危機による封鎖が示したように、これからのネット販売における影響力はますます増大して来る。実際、ZARAの親会社であるINDITEXは今後10億ユーロ(1200億円)を投入して2022年にはINDITEXの売上の25%をネット販売で占める計画をもっている。

 INDITEXよりも先にネット販売を導入したライバルのMANGOは昨年のネット販売の占める割合は同社の売上の26.7%を占めるまでになって5億6400万ユーロ(672億円_を達成した。その為にこの3年間に1億5000万円(180億円)を投資している。〈参照:「El Espanol」〉

 ということから、PRIMARKは必然的にネット販売を導入せねばならなくなるはずである。そうしないと、熾烈な競争下にあるファストファッション業界で顧客の増加が見込めなくなる時期を迎える危険性も発生して来る。

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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