倍率40倍の「幽霊タクシー」が若者たちを魅了。コロナ禍に打ち勝つ三和交通のブランディング力

倍率40倍の「幽霊タクシー」が若者たちを魅了。コロナ禍に打ち勝つ三和交通のブランディング力

三和交通の一番人気ツアー「心霊スポット 巡礼ツアー」。ニコニコ動画配信でも「本気で怖い!」と評判だ

 いまタクシー業界は激動の時代を迎えている。コロナ禍による観光客や日常の利用客の大幅な減少。売り上げの激減と、それにともなって休業せざるを得なくなったドライバーたちのモチベーション低下も懸念されている。

 そんな中、神奈川県横浜市に拠点をかまえるタクシー会社「三和交通」は、この危機的状況をユニークな発想で乗り越えようと日々奮闘しているという。

◆倍率40倍!SNSで話題沸騰「心霊スポット巡礼ツアー」

 ユニークなサービスと積極的なSNSの発信が、いま若者たちの間でなにかと話題となっている三和交通。いまもっとも注目を浴びているのは、ニコニコ動画を運営するドワンゴとのコラボ企画「三和交通で行く 心霊スポット巡礼ツアー」だ。

「『心霊スポット巡礼ツアー』は、毎年たいへんご好評をいただいている夏の恒例ツアーです。毎年1400組以上の応募があり、昨年の当選倍率は約40倍でした。ツアーでは、地元の人しか知らない心霊現象をもとにコースを設定。『心霊ドライバー』とともに、オールナイトで各スポットを周ります。いままでもツアー中に不思議な心霊現象が起きたり、写ってはいけないモノが写真にあらわれたりなど……。毎年何かしらのリアルなハプニングがあります(笑)」

 こう語るのは、広報兼横浜営業所係長をつとめる小関正和さん。

「『心霊ドライバー』たちも、毎年楽しんでやっています。中には『心霊ドライバー』を志願して入社した乗務社員もいるんですよ」

 そんな2020年の「心霊スポット巡礼ツアー」は、8月2日〜8月31日までの毎週日・月に開催するという。「横浜・多魔(多摩)・凍京(東京)・不死身野(ふじみ野)」の4つのエリアで、1日1組限定で催行する。今年の応募申し込みは7月20日(月)までだというが倍率はかなり高い。

 なお、過去のツアーの様子はニコニコ動画でも配信中。すでにSNSでは大きな話題となっている。

◆忍者にSP付きまで!? 溢れる「アイデアタクシー」

「三和交通は、お客様に寄り添った付加価値のある輸送方法を第一に考えています。映像関連のクリエイターだった吉川永一社長の考案で生まれた『アイデアタクシー』は、おかげさまで多くのお客様にご好評をいただいており、中でも『忍者タクシー』は、海外からのお客様に人気です」

 小関さんは通常の広報活動だけではなく「アイデアタクシー」のドライバーもこなしている。

「実際に忍者のふるさとの伊賀まで行き、手裏剣を投げたり水グモで歩いたりなどの修行をしました。サービスでは、乗車・降車の際に手裏剣パフォーマンスをします。羽田空港や中華街でやると『オー、ニンジャ!』と、周りの観光客からも写真を撮られますよ。また、国内では『SPタクシー』が人気。たとえば挙式後の新郎新婦を二次会会場までお守りするなど、要人気分を味わえるサービスです」

 三和交通では、吉川社長が毎月発信するリリースをもとに次々と新しい企画を生み出し実現につなげているという。

◆女子アナと行く不動産内覧ツアー!?

「ちなみにいま企画があがっているのは『不動産内覧ツアーwith女子アナ』。女子アナと一緒に、新しい家探しのお手伝いをさせていただきます」

 また、積極的なSNS発信も同社の魅力のひとつだと小関さんは語る。

「2014年からYouTube配信を行っています。乗務社員たちが激辛料理を食べたり、小学校の入試問題を解いたりなど、『タクシー会社なのになんでこんなことをしているんだろう?』と思えるような動画をアップしていますが、すべてはタクシー運転手の採用活動が目的です」

 このようなユニークな取り組みは深夜番組『タモリ倶楽部(テレビ朝日)』に取り上げられ、SNSを通じて若者たちを中心に話題を集めた。小関さんは次のように語る。

「若い世代をターゲットにしたブランディングで、三和交通は『何か面白いことをやっているタクシー会社』として認識されるようになりました。この効果は、利用者の興味をひくだけではなく新卒採用にもつながっています」

◆コロナ休業による乗務社員のモチベーション低下防止にも

 ところが、状況は新型コロナによって一変する。緊急事態宣言で利用客は一気に激減。これはタクシー業界に大きな打撃を与えた。三和交通においても一部営業所では完全休業、乗務社員の出番調整などの対応に追われた。さらに懸念されたのは、休業中のドライバーたちのモチベーション低下だ。

 同社では、コロナ以前からコンディション管理システム『jinjerワーク・バイタル』を活用。乗務社員のコンディションを定点観測し、些細な変化を捉えて対処することでモチベーションの維持につとめている。人事採用を担当する取締役部長の溝口孝英さんは次のように語った。

「休業中の乗務社員にその日のコンディションをお天気マークで回答してもらうことで、各自のモチベーションを分析。また、人事部でのみ閲覧できるコメントとして、現状の不安や問題を発信することも可能です。気軽に乗務社員の本音が聞けるため、ひとりひとりの変化を瞬時に発見できます」

 一方、乗務社員側はどのように自身のモチベーション管理をしているのだろうか。自身で働き方を選べる自由な社風に惹かれて入社を決めたという、ドライバー1年目の神志那勇気さんに話を聞いた。

「休業期間中は、社の仲間たちと励まし合いながら過ごしました。この管理システムでは会社の人に言いにくい相談事もコメントに記載できるので、弊社は乗務社員ひとりひとりをきちんと見てくれているんだな、と実感しました。まだ1年目で余裕がありませんが、今後は弊社で行っている車いすの方の送迎サービスを定期的にやっていきたいです」

 ユニークな「アイデアタクシー」で他社との差別化をはかり、コロナ禍の厳しい経済状況の中で生き抜く策を模索している三和交通。今後の動向に注目だ。

<文・写真/櫻井れき 写真提供/三和交通 ネオキャリア>

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