繁忙期なのに街がガラ空き。感染者再増加のスぺイン第3の都市バレンシア、衝撃の光景

繁忙期なのに街がガラ空き。感染者再増加のスぺイン第3の都市バレンシア、衝撃の光景

ランチタイムにバレンシアの女神が奉られている教会のところからの撮った写真。中央に見える建物は州知事官邸。いつも外人観光客で埋まる場所なのに、テーブルで食事をしている人がいない……

 スペインで3か月続いた完全封鎖が6月21日に解除されてから、新規の感染者が増えている。全国369か所でその再発が確認されているが、新規の感染者は現在まで2万人余りとなっている。特にその中でも新規の感染者が一番多いカタルーニャ州では今月26日だけで感染者は1493人となり、カタルーニャでの全感染者は8万9727人となった。これでコロナが発生してからスペイン全国で27万5000人が感染者となっている。(参照:「RTVE」、「La Vanguardia」)

◆新規感染者数再増加で絶たれた景気回復

 特に、スペインにとって深刻なのはコロナの新規感染者がこれからさらに増加する可能性を秘めており、全国レベルで再封鎖が実施されるかもしれないという恐れがある。それ以外に、この新規感染者の増加によって期待されていた景気回復の見込みは完全に断たれたということである。

 スペイン経済の65%はサービス産業に依存しているということ。その中でも観光業が大きなウエイトを占めている。何しろ、スペインGDPの12%を担っている。これほど大きな割合を占めている産業は他にはない。

 年間で外国から8300万人がスペインを訪問し、世界でフランスに次ぐ第2位の観光国となっている。昨年比ではフランスとのこの差は僅か500万人というところまで迫っていた。

 ところが、今年はコロナ感染で外国からの訪問者は急降下している。しかも、それを助長するかのように、先ずノルウェーはスペインからの入国者は2週間隔離することが義務付けられた。更に、26日には英国も同様の手段を取り、それを守らなかった旅行者には罰金として1000ユーロ(12万円)が課せられことになった。即ち、英国の観光者にスペイン訪問は辞退せよという勧告に匹敵する決定である。(参照:「El Pais」)

 また、フランスは当初スペインとの国境を封鎖するという意向を表明していたが、最終的にはスペインを訪問しないようにと勧めることだけにした。それだけでもフランスからの観光客が減るのは必至である。

 英国とフランス、それにドイツを加えた3か国はスペインへの訪問客の3本柱になっている国である。その内の2か国がスペインへの訪問を控えるようにという手段を取ったことはスペインの観光業にとって致命的な打撃である。

 しかも、一般に外国からのスペイン訪問を望んでいる観光者にとって新規感染者が一番多いカタルーニャとそれほどでもないそれ以外の地方との区別がつかないということもスペインへの訪問者が激減する理由となっている。

◆観光客が激減したバレンシアの現在

 筆者は7月25日にバレンシア市内を訪問した。勿論、マスクを着用しての訪問だ。

 バレンシアはマドリード、バルセロナに次ぐ第3の都市で、日本人ツーリストにはそこまで知名度は高くないが、大聖堂などの歴史的建造物やビーチもあり、特に今の季節は観光客も多い街だ。しかし、いざ市内に出てみると、観光客の人影は殆ど見かけなかった。大聖堂の前のレイナ広場の両側にあるレストランは観光客でいつも埋まっているが、多くのテーブルで空席が目立った。またこの広場にある土産物店も閉まっているところもあった。中国人が経営している土産物店はコロナは関係ないといった感じで勿論開いていた。また、その広場に繋がっている市庁舎広場から始まる通りの両側にあるレストランでもシャッターを下ろしているところが数軒あった。

 僅かに見かけた外人観光客はリュックを背負っていた若い女性二人だった。若者はコロナは関係ないという感じで、ホテルから出たところかあるいはこれから宿泊するホテルに向かっていたのかもしれない。ホテルといえば閉まっているホテルもあった。7月と8月は観光ビジネスにとって最も稼ぎ時である。にもかかわらず店を閉めるというのは非常につらい決断であるが、何しろ訪問客がいないのであるから、開けておく方が人件費や光熱費更に加え家賃の支払いなどで結局赤字経営を迫られることになるから閉めておく方が賢明の策となるわけで仕方ないのかもしれないがあまりにも寂しい光景だ。

◆封鎖解除の気の緩みで一気に「再増加」

 そもそも新規の感染者が発生した要因とは何か? スペインでもそれが若者による夜遊びを対象にした場所での発生だということが言われている。ナイトクラブやパブ、ボテリョン(若者が広場にたむろしての飲み会)などがそれだ。これらの場所は、マスクも着用せずにお互いに近距離で話し声も高くなりウイルスにとっては最高の活動の場だという。3か月の封鎖で閉じ込められていた若者の多くは封鎖解除となって一挙に解放されて夜遊びの場所を求めたということである。

 その結果、それまでの感染者の平均年齢が61歳から62歳であったのが、若い世代で感染者が急増したことによって感染者の全体的な平均年齢が45歳まで下がった。(参照:「El Confidencial」)

 そのため、再度ロックダウン初期の段階にまで逆戻りする地域が出始めている。バレンシア州とアンダルシア州の中間に位置しているムルシア州の人口3万2000人のトタナ市では今月23日から封鎖の最初のステップ段階まで逆戻りすることが同自治体で決められた。不要不急の外出が禁止されたのである。店は閉店を余儀なくさせられ、外出は食料の買い出しなどだけとなった。(参照:「ABC」)

 また、バレンシア州のバレンシア市から沿岸沿いに70キロ西南の方に向かったリゾート地ガンディア市でもクラブの営業は閉鎖され、パブやバルも営業は夜10時までということが自治体で決められた。(参照:「ABC」)

 こうしたナイトライフをエンジョイできる場所がスペインには7万5000カ所あるとされている。この分野で雇用されている人は30万人。デスコティックなどが営業を停止させられるようになると、今年末までに60%から80%は廃業するようになると指摘されている。(参照:「El Pais」)

◆感染拡大防止体制の不備

 ただ、スペインでコロナ感染を防ぐ為に一番不足しているのは感染の追跡を行う調査員の不足である。現状のスペインでは1万2000人当たり一人の調査員という非常にみすぼらしい数になっている。これでは感染拡大を防止するのは不可能である。現在、この調査員を増やしているが、それが順調に進んでも5500人当たり一人の調査員まで増やせるのが現状だと推測されている。例えば、ドイツでは4000人当たり一人の調査員となっている。

 特に、問題となっているカタルーニャでは3万人につきひとりの調査員というレベルでしかない。マドリードでも同様にレベルである。スペインの大都市で一人当たりの調査員で対象になる人口が少ないのはバレンシア州である。同州では4000人につき一人の調査員となっている。しかし、バレンシア州の人口500万人とほぼ同等のスコットランドでは一人当たりの調査員は2000人が対象となっている。(参照:「El Pais」)

 同様のことはマドリード州でも指摘されている。調査員が人口の割に非常に少ないということだ。マドリード州政府は5000万ユーロ(60億円)を投入してパンデミックに十分対処できる病院の建設をする予定であるという。しかし、それだけの投資をする前に調査員を増やすことだ。

 スペインでも今年10月ころには第二波が押し寄せて来ると懸念されている。現在取り組んでいる状態では第二波に対抗できるための体制になっていないのが十分に判断される。しかし、一部の人間達の間にコロナ感染の恐ろしさへの認識が欠けているのは明らかである。それがスペイン全体にマイナス影響を及ぼすようになる。実際、コロナ感染を軽く見ている連中の意識の浅さによってスペインの今年下半期の景気回復の道は完全に断たれた。残念である。

<取材・文・撮影/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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