コロナ禍で重宝がられた中国の最先端OMO「フーマー」。成長鈍化の一因にコロナならではの理由も

コロナ禍で重宝がられた中国の最先端OMO「フーマー」。成長鈍化の一因にコロナならではの理由も

フーマーフレッシュの入り口(アンリデザイン提供)

◆コロナ禍で注目度が一層加速した「フーマーフレッシュ(盒馬鮮生)」

 新型コロナ収束が見えない中、アフターコロナで注目されているのが、OMO(Online Merges with Offline。シノベーションベンチャーズの李開復が提唱し始め、2017年12月に『ザ・エコノミスト誌』で発表されて周知された概念。自宅でスマホを見ながら食料品を購入して宅配するなどのように、オンラインとオフラインを分けて考えずに融合したマーケティングを行うという考え)やDX(デジタルトランスフォーメーション。2004年くらいから提唱され始めた「テクノロジーを利用して個人の生活や企業の業績や顧客層が変化すること」などを指す)などを活用したサービスだ。

 飲食業界でもメニューの電子化やさらに進化させて非接触型、客の個々のスマートフォンへQRコードでメニュー自体をを取り込み注文することで、店員との接触機会を減らすだけでなく、店内での待ち時間を減らすことで感染リスクを低減させるなど活用が一気に進んでいる。

 そんな中、2018年ごろからIT業界を中心にOMO、DX世界最先端を爆走していると熱い視線を集めてきた中国企業がある。中国最大のECサイトを持つ「アリババ」が運営する「フーマーフレッシュ(盒馬鮮生)」だ。

 フーマーは2016年に上海1号店がオープン。現在の店舗総数が公式サイトに書かれてないので、アナログでカウントしたところ中国全土で232店(新業態のフーマーミニも含む。うち上海51店)展開しているようだ(7月23日時点)。

 どんな店かと言えば、ある中国人はスーパーマーケットっぽいと表現し、またある中国人は見て楽しむレストラン、さらにまた別の中国人は倉庫を実店舗にしたような店とたとえる。

◆ECでもあり実店舗でもあるフーマー

 フーマー公式サイトには、大きく30分内の配送(3km以内)と表示され、ロブスターや鮮魚写真が大きく表示される。このあたりを全面にPRしたいようだ。

 フーマーは、アリババのECサイトのノウハウを生かしてオンラインで肉や野菜、ワイン、ロブスター、調理した料理まで配送に対応している。と同時に実店舗でショッピングをしたり、食事をしたりもできる。

 いけすで泳ぐ魚やエビなどを実際に見たり、触ったり体験して納得してからその場で調理をしてもらうこともできる。いわば、安心してオンラインで買うための「体験の場」のような場所になっている。実際に利用する中国人に聞くと、家族で楽しむアミューズメント施設のようだとも話す。

 オンライン会計は、アリババ運営の「アリペイ」のみ。店舗での会計は、レストランは同じくアリペイのみだが、スーパーは、レジがあり現金でも支払える。競合相手となる「WeChatペイ」や「銀聯カード」(デビット方式)は利用できない。

 フーマーは決済をアリペイへ集約することで、顧客の購買や行動データなどを集めてビックデータとして活用している。そのため、顧客から見ればOMOであり、アリババからすればDX的な側面が強いと言える。

 これら点を日本のIT企業を中心に高い関心を示し19年にはフーマーのビジネスモデルを取り上げる記事が急増した。

 とここまでは、DXをビジネスチャンスととらえるIT企業や新しもの好きの視点となる。一方、実際に近所にフーマーがある利用者視点ではどうかというと違った感想が聞かれる。

◆フーマー実店舗近隣住民たちの「不満」

 広州、大連、上海の複数の中国人の話を聞くと、ほぼ共通して出てくるのが、「高い」、「狭い」、「人が少なくて活気がない」だ。

 フーマーのターゲットは、都心の高所得層の若者で、日本やヨーロッパ製品など外国製品も多数並ぶ高級スーパーに位置づけられる。

 またフーマーは、DXを促進することで利益率を高めているらしく、同じ面積あたりの大手スーパーの3、4倍の売上を達成している。そのため各店舗も「ウォルマート」などの競合スーパーと比べるとコンパクト。その代わりレストランエリアを広めにデザインしているようだ。

 来店者が少ない印象を持つのは、オンライン購入も多いことや事前に注文して受け取りだけという客もいるからだと思われる。

 ただ、こうしたデメリットも、OMOを徹底していることでデメリットと捉えないユーザーが少なくない。

 「店に行ったことは最初の1回だけで、後はずっとオンラインでお米から水、シャンプーまでほぼすべての日用品をフーマーで買っています」(大連・30代女性)

 この女性は元々「タオバオ」のヘビーユーザーでスマホから洋服まで買っていたため、フーマーにもすぐに魅了されてハマったようだ。

◆顧客のビッグデータをさまざまに「活用」

 話を聞いた利用者からは不評も聞かれるがフーマーの一番の目的は、顧客の行動、好み、傾向など細かな購買データを集積することにある。それを自社グループの商品開発や仕入れの効率化、または、「Tポイント」のように情報として販売して利益を出しているとも考えられる。

 実店舗は倉庫も兼ねているので仮に来店者が少なくてもオンライン販売も含めてトータルで利益を出せれば問題ない。

 しかし、取材を進めるとちょっと気になる話も出てきた。新型コロナの影響もあるのか、成長に陰りが見え始めていることだ。19年の記事を見ると、アリババは19年末に300店。今年20年末までに2000店を計画しているとぶち上げていた。だが、達成は事実上、困難な状況だ。

◆成長の翳りの要因は中国人気質!?

 「馬さん(ジャック・マーCEO)はフーマーを飲食業を中心に据えたいと考えてようです。確かにロボットが配膳したりと子どもが喜ぶ近未来な感じですが、もう飽きたようです。中国人は目新しいものが好きですが、飽きるのも早いんです」(広州・人材紹介企業経営者)

 また大連で日本やニュージランドとの貿易業に従事する女性は、「中国人全員がオンラインショップやスマホ決算を求めているわけではありません。確かにフーマーは値札のQRコードで生産地や安全情報を確認できるので安心できます。中国人の根底にある業者への不信感を払拭するものだと思います。それは店や業者があまり信用できないからです。信用できる業者や商品ならお店の人と会話しながら現物を見て買いたいと思う人も多いのではないでしょうか?」と話す。

 

 今回、新型コロナで、本来中国人が好む人と人との交流やアナログ的なやり取りを求める人がより増えていることも一因かもしれない。フーマーがアフターコロナに、どんな新しい戦略を打ち出してくるのかに注目したい。

<取材・文/我妻伊都 写真提供/アンリデザイン>

関連記事(外部サイト)