下がり続ける日本人の読解力。「読みやすい本」に潜む脳への悪影響とは

下がり続ける日本人の読解力。「読みやすい本」に潜む脳への悪影響とは

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 経済協力開発機構(OECD)は、3年に一度国際的な学習達成度の調査を行っている。OECD加盟国は、アメリカ、イギリス、韓国、エストニアなど37か国で、それらの国の15歳児を対象に、「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3部門で調査をしているのだ。

◆読めば読むほど読解力が下がる

 2018年に行われた調査によると、日本の数学的リテラシーは1位、科学的リテラシーは2位と世界的にもトップレベルだった。しかし、読解力においては2012年には1位だったのが、順位が下がり続けて2018年には11位となった。韓国(5位)やアメリカ(9位)よりも低い結果である。

 この読解力については世界的にも低下傾向にあるが、日本もこのトレンドに沿って低下しており、他国に追い抜かれている。

 このような結果を見ると、「最近の若者は本を読まなくなったからだ」と思う人がいるかもしれない。たしかに、読書量は減少しており、本を読む頻度が高い生徒のほうが読解力の得点が高いということがわかっている。

 ということは、もっと読書を推奨したほうがいいのだが、「何で読むのか」「何を読むか?」「どう読むか?」ということまで考えることが、読書効果を高めるためにはかなり重要だ。読み方を間違えると時間の無駄になったり、逆に読解力を下げることになってしまうかもしれない。

 「私は年間100冊も本を読んでる!」という人も、もしかしたら、その読書量がかえってあなたの読解力を下げてしまう読み方をしている可能性があるのだ。

◆スマホ・タブレットに合わせて脳が変化

 近年、書物に触れる方法は紙の本や雑誌だけでなく、電子書籍やnoteのようなブログでも読書をすることができる。それぞれいい点はあるのだが、悪い点を把握しておかなければ、どんなに読書をしても、あなたの読解力は低下していく。

 例えば、タブレット端末で読書をした場合と、紙の本で読んだ場合の読み方の違いについてだ。

 ご存知の方も多いだろうが、紙の本で読んだ場合は脳はじっくり読もうとするのだが、タブレットで読書をした場合、人間の目はジグザグかF字型で画面を見る「斜め読み」で読書をしてしまうことが最近の研究でわかっている。

 iPadに限らず、kindleのようなタブレットで読書をするときに、脳は画面を俯瞰して自分が気になるキーワードをピックアップして結論を読み、それに納得できれば裏づけになる細部を読みにいくような読書スタイルを行ってしまうのだ。

 そうなると、本全体の論理構造や流れについて意識することがなくなってしまい、興味のある部分しか読まなくなってしまう。そのような読書習慣があると、脳もその読書方法に適用するよう変化する。そして、脳に合わない本やブログを読むときにストレスを感じてしまい、脳に合った本やブログ、つまり論理構造が複雑なものよりもシンプルに情報を得るためのものを読むようになってしまう。

 そして実は、それはタブレットを使った読書に限定されるわけではなく、紙の読書でもそのようなスタイルの人が増えてきている。なぜなら、ネットで必要な情報を集めることが多く、そのときに斜め読みをしてしまい、脳がそれに合わせて変化しているからだ。

 例えば、最近よく売れている自己啓発本などは、論理構造を理解するために大量の脳メモリーを使って読者の“頭に汗をかかせる”ことなく、わかりやすい情報を与えるだけになっている。

◆「読みやすいから売れる」の皮肉

 そのような本をたくさん読んでも、読解力や考える力、理解する力は大きく身につけることができない。

 もちろん売れている本、流行の本を読むのもよいことだ。しかし、読解力を身につけるためには、できればアナログ、難しければデジタルでもいいので、日本の古典文学や哲学書のような、複雑な論理構造や行間理解が必要な読書を行う必要がある。もちろん、斜め読みをせずにだ。

 皆さんは、哲学書や古典文学を最近読んだだろうか?

 古典文学は美しい論理構造を持っており、前提知識がないとわからないものは少ない。難しくて読んで理解するのに時間がかかるが、論理構造がめちゃくちゃでわからないという類の本ではないので、脳の読解力の向上に繋がるのだ。

 現在売れている本は、今の日本人の読解力レベルに合わせてあるので、「読みやすいから売れている」という可能性もある。つまり、たくさん読んでも実にならないかもしれないのだ。また、書かれている内容が重複していることも珍しくない。

◆あえて読みにくい本を読む

 話を簡単にまとめると、読みやすい本は読んでいて楽だが、読みにくい本を読むことも必要だということだ。

 例えば、読解力を上げたいならば、ニーチェやキルケゴールらの書いた哲学書や、太宰治や夏目漱石の著書がオススメだ。比喩の内容を考えたり、論理構造やストーリーが美しく作られているので、読解力を身につけるのに効果的だろう。

 読者の皆さんも、このような読解力が必要な本を最近読んだのはいつだろうかと、思い返してみてほしい(もちろん、エッセンシャル版や超訳版ではなく)。

 本をたくさん読むことはよいことだし、最新の情報を得るためにニュースやブログ記事を読むのもよいことだ。だが、「何を読むか?」「どう読むか?」を意識して読まなければ、自分のスキルアップには繋がらない。

【参考資料】

『OECD生徒の学習到達度調査(PISA)』国立教育政策研究所

『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳:「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』メアリアン・ウルフ

<文/山本マサヤ>

【山本マサヤ】

心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。

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