渋谷の宮下公園が「公立空中庭園『ミヤシタパーク』」に!「街・公園・商業施設の一体化」は新トレンドとなるか?

渋谷の宮下公園が「公立空中庭園『ミヤシタパーク』」に!「街・公園・商業施設の一体化」は新トレンドとなるか?

ここにあったはずの「宮下公園」は一体どこへ…。

 「渋谷区立宮下公園」が「街・公園・商業施設の一体化」をめざした「個性的な公立公園」としてリニューアルを遂げ、いよいよ8月4日にグランドオープンを迎える。

 渋谷駅の利用者ならば「宮下公園」の名前は聞いたことがあろうが、一方で「どの部分が公園だったか良く知らない」「単に駐車場の上にあるちょっとした森のことだと思っていた」という人も多いのではないだろうか。果たしてどういうかたちに生まれ変わったのか――実際に現地を訪れて「一体化」による個性を味わってみた。

◆耐震化問題で閉鎖された「区立宮下公園」、高層化して「屋上公園」に

 7月末、グランドオープンを前にした宮下公園に足を運ぶとそこあったのは――大きなショッピングセンターであった。

 何を隠そう、リニューアルした渋谷区立宮下公園は、三井不動産の新商業施設「三井ショッピングパーク レイヤードミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)」の4階部分にあるのだ。このミヤシタパークは渋谷区が宮下公園を人が集まる場所にすることを目的として、官民協働事業(PPP)の一環として渋谷区と三井不動産が共同で開発したもので、渋谷区初となる立体都市公園制度活用事例となった。全国各地に「屋上庭園」は数多くあれども、公立公園が商業施設の屋上に設けられるのは極めて珍しい。

 初代の宮下公園は戦前に都市計画公園として一部開園。開園当初は公園付近に旧皇族・梨本宮家の邸宅があり、公園一帯が宮下町と呼ばれていたため、地名に合わせて公園名が命名された。

 現在のミヤシタパークの前身・渋谷区立宮下公園は1953年に全面開園したもの。1966年には重層化され、下層階は駐車場に、上層階は公園となった。2011年4月には渋谷区とネーミングライツ契約を締結したナイキ・ジャパンとの連携のもと複合施設「宮下ナイキパーク」としてフットサル場やクライミングウォール、スケートパークなどを整備するリニューアルを実施。地元のフットサルプレイヤーやスケートボーダーにとっては馴染み深い場所として定着しつつあったものの、老朽化により地震の際に危険であることが発覚したため、2017年にナイキとの契約を途中解除して閉鎖。そして生まれたのが、この「三井ショッピングパーク レイヤードミヤシタパーク」という訳だ。

◆館内ウォークは公園までの「街歩き」

 「三井ショッピングパーク レイヤードミヤシタパーク」の建物のうち、南街区の商業棟は1〜4階(15,922平方メートル)、北街区の商業棟は1〜3階(10,649平方メートル)。かつての宮下公園の敷地全体を活用しており、敷地面積は約10,740平方メートル、延床面積は約46,000平方メートル、全長は約330メートルにも及ぶ。また、北街区の北側4〜18階は三井不動産ホテルマネジメントの次世代型新ホテルブランド1号店「シークエンス ミヤシタパーク」(240室)となるほか、建物の地下には駐車場が設けられている。

 商業施設部分は北街区の下層階には「GUCCI」「COACH」などのラグジュアリーブランドが多く並ぶ一方、南街区の1階には「渋谷横丁」と銘打った屋台街を思わせる街区が登場、盛岡冷麺やハントンライス、宇都宮餃子、長浜ラーメンなどの郷土料理を気軽に楽しむことができる。このギャップが面白い。

 さらに目を惹くのが、建物の規模に対してかなり多く設置されている「階段」や「エスカレーター」の多さ。「階段」「エレベーター」「エスカレーター」はそれぞれ各4ヶ所に設けられており、館内を歩いていると自然に上層階――そして商業施設の「メインコンテンツ」である屋上公園へと足を運びやすい構造になっている。

 館内を巡ると、体験型のキットカットショップ「キットカットショコラトリー」(南館2階)、天狼院書店によるBOOK&CAFE「天狼院カフェSHIBUYA」(南館3階)、多国籍料理が味わえる「フードホール」(南館3階)、渋谷初となる都市型ワイナリー「渋谷ワイナリー」(北館3階)など、食を中心に様々な業態の店舗が設けられており、大人から子供・地元民から観光客まで幅広いターゲットを想定していることが分かる。そこまで広くない面積、それも「細長い2館体制」という難しいかたちでこれだけのコンテンツを詰め込んだのは、流石は「三井不動産」の手腕だと思わされる。館内をぶらぶら歩きつつ、近くにある階段やエスカレーターで上へとのぼっていけば、いよいよ4階、「渋谷区立宮下公園」に到達だ。

◆いよいよ地上4階の空中庭園へ!

 装いも新たになった「渋谷区立宮下公園」は建物の4階部分にあたり、営業時間は8:00〜23:00。公園面積は約1万平方メートルにも及ぶ。

 以前の鬱蒼とした樹木が生い茂る宮下公園とは打って変わって、開放的な芝生広場には多くのベンチが並ぶ。この芝生広場の広さは約1000平方メートルで、イベントの開催にも対応している。

 広場の周囲には「ボルタリングウォール」、「スケート場」、「多目的コート」などのスポーツ施設が設けられている。これらのスポーツ施設の利用は9:00〜22:00(受付は21:30まで)で、ボルタリング場とスケート場の利用料金は2時間1000円(小中学生480円)、渋谷区民は半額。ボルタリングなどは専門スタッフによって指導して貰うこともできる。

 また、公園内にはスターバックスコーヒーが出店。渋谷駅チカに勤務している人は、行き交う電車を眺めながらスタバ片手に芝生広場でお弁当を広げるのもいいし、時間があればボルタリングで食後の運動…ということも可能だ。

 公園内を見渡すと、フルフラットとなっており「重層化」していながらバリアフリーに配慮されていることがわかる。

 なお、広場内にテントなど立体物の構築をおこなうことは禁止されているため、くれぐれも「ここをキャンプ地としよう」などとは思わないように。園内には渋谷のシンボルである「ハチ公」をモチーフとしたオブジェなども設けられており「映える写真」の撮影もできそうだ。

◆「街・公園・商業施設の一体化」が新トレンドに?

 さて、戦前に開設された当初の宮下公園は「渋谷」という「街の中にある公園」であった。しかし、近年の宮下公園は、下層階の殆どが駐車場となっていたため「街と分断された公園」になっており、フットサルなどの利用者以外にとっては馴染みが薄い存在となっていた。

 今回の「さらなる重層化」により「街と分断された公園」はさらに街と分断されるかと思われたが、それは杞憂であった。

 先述したとおり、商業施設「レイヤードミヤシタパーク」の館内には比較的多くのテラスや階段が設けられていることが特徴だ。さらに、1階に設けられた「横丁」の雰囲気も相まって、ぶらりと「館内を街歩きの感覚でめぐり、近くにあるエスカレーターや階段を上っていくと公園に到達できる」仕組みとなっていた。

 この仕組み、どこかで最近見かけたような……と考える間も無く、公園から周囲を見渡して気付いた。それはすぐ近くにある「渋谷パルコ」だ。

 建替えにより昨年11月に新装開業した「渋谷パルコ」にはスペイン坂から屋上庭園まで続く大規模な「立体街路」が設けられていることが特徴で、上層階からも立体通路のテラスに出てぶらぶら歩いていると(エスカレーター併設)屋上庭園に辿りつく、という構造になっている。ハコ型の商業施設でわざわざテラスに出るなんて…と思うかも知れないが、渋谷パルコのテラスではミニライブやDJイベントなど様々なイベントが開かれていることもあり、訪問時には立体通路を行き交う客もいたほか、テラスや屋上は夜景を見て楽しむ人たちで賑わっていた。

 かつて、全国各地の大型商業施設の多くが屋上遊園地や屋上庭園に力を入れており、これらは「市民の憩いの場」として親しまれていた。東京都心の百貨店などでは現在も「屋上庭園」として存続している例が比較的みられるが、全国的に見ると防災面の問題などもあって屋上に出られる商業施設は数が減っている。

 しかし、新装なった宮下公園や渋谷パルコ以外にも、今年4月にはユニクロが横浜市に屋上公園と一体化した店舗「ユニクロパーク横浜ベイサイド」を開業させるなど、近年は「屋上の整備に力を入れる」どころか「街・公園・商業施設の一体化をおこない、公園自体を建物のアイデンティティとする」商業施設が増えてきている。

 一般的に大型商業施設は街に対して「内向き」になりがちであるが、今後は「街・公園・商業施設の一体化」をめざした「個性的な屋上」を持った商業施設が増えていくことになるかも知れない。もちろん、そのためには「人類が新型コロナウイルスに打ち勝ち、再び公園でくつろげる時代が来ること」が必須となるのだが――。

<取材・文・撮影/若杉優貴 ウラカシ(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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