校則は令和でもやっぱりヘンだった! トンデモ校則はなぜ続くのか?

校則は令和でもやっぱりヘンだった! トンデモ校則はなぜ続くのか?

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 都の公立高校にある「ツーブロックヘア禁止」という校則が都議会の議題に上がり、大きな波紋を呼んだ。令和の時代になってむしろ増加傾向にあるという“トンデモ校則”。なぜそれらは廃止されないのか……?

◆校則厳罰化は加速する一方。昭和や平成以上に理不尽なルールも

 東京都の一部公立高校で「ツーブロックヘア禁止」という校則があることが問題視され、物議を醸している。ツーブロックヘアは若者には一般的な髪形にもかかわらず、都議会で見解を求められた教育長は「事件や事故に遭う可能性がある」と説明。この珍妙な答弁が話題となり、理不尽で不合理な“トンデモ校則”が、今も全国各地に存在することが浮き彫りになったのだ。

「上下の下着の色が白に指定されていました」

 こう語るのは東北出身の森中沙也さん(仮名・18歳)。

「色物のブラジャーがブラウスから透けていることを男性教師に注意されて、とても恥ずかしかった」と赤裸々な体験を話してくれた。

 この事例について校則や部活動の調査研究を行う名古屋大学大学院准教授・内田良氏は語る。

「下着の色指定は昭和から残る校則で、廃止されないで残っているケースが多い。通常は女性教師が検査を行うはずなのですが、男性教師がこうした発言をしていたとすると完全なセクハラですね」

「なぜかLINEのタイムライン機能だけが校則で使用禁止だった」と教えてくれたのは、都内の現役高校生・関田和哉さん(仮名・17歳)。教師に理由を聞くと、当初は「書き込みをすると、個人情報が特定される恐れがあるため」と説明されたが、帰り際に「オレにも実際はよくわからない」と胸の内を吐露されたそうだ。

◆教師ですら頭を捻る、妙な校則

 ’17年に理不尽な校則をなくすために発足された「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」の発起人の一人・須永祐慈氏は語る。

「実は多くの教師たちが校則について理不尽に感じています。ただ5年前後で赴任先が替わるので、教師も校則廃案のために動く気にならないのが実情ですね」

 実際に「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」が調査した「各世代による中学時代の校則体験」のグラフを見ると、現在に近くなるほど校則は増えていることがわかる。コロナ禍においては「マスクを使用する際は“アベノマスク”限定」というルールが話題になったのは記憶に新しいし、「マスクは白のみ」という信じがたいルールを設けた学校もあったという。

◆理不尽校則増加の要因は親・教師・生徒の三者にあり!?

 こうした理不尽で不合理な“トンデモ校則”が続々と誕生している理由を、内田氏は「一部の“モノ言う保護者”たちの存在によって、学校側もクレームを受ける前に先手を打って、とにかく校則を多く作っておいたほうがラクだと考えるようになった。こういったことも背景にあるのではないか」と分析する。

 しかし、これで驚いてはいけない。想像もつかないような“トンデモ校則”はまだまだある。

「紫色の持ち物が禁止でした」と当時を振り返ったのは、亀山謙太さん(仮名・20歳)。その理由を尋ねると「ヤンキーの間で紫色が流行しており、それを止めるためだった」とのこと。

「校則に書かれてはなかったけど、整形やプチ整形が禁止で、友達が反省文を書かされていました」と答えてくれたのは尾崎由紀さん(仮名・19歳)。友達は鼻を整形したことを担任教師に見抜かれたという。

 また、「うなじが男子の欲情を煽るのでポニーテール禁止でした」と語ったのは丸山美穂子さん(仮名・25歳)。「髪の毛が長くて束ねたいだけなのに、面倒な校則でした」と語る。

 さらに、現役高校生の町田浩一さん(仮名・17歳)は「緑茶とコーヒーの持ち込みが禁止です。理由はカフェインが体によくないかららしいけど、カフェインたっぷりのエナジードリンクを飲んでいることは注意されたことないですね」と笑った。

 校則を理不尽に思っている生徒たちはなぜ抗議をしないのだろうか。須永氏はこう分析する。

「’10年代の生徒は『内申点』や『進路』を気にして、校則を変えようという運動を起こす生徒が減少した印象があります。世代的にリスクを冒さないようになりつつあるのかなと……。もちろん、生徒会で校則を変える署名を募って提出した事例も聞きましたが、その際は生活指導担当の教師に握りつぶされてスルーされたそうです」

◆トンデモ校則に悩むのは生徒だけではなかった

 ここまで聞くと、教師の古い体質に大きな問題があるように思えるが、教師側にも意見はあるようだ。内田氏は語る。

「近年、教師の長時間労働が増えたことも社会問題になっており、教師側もかなり疲弊している。トラブルを防ぐために、仕方なく校則を強化している部分はあるのかなと思います」

 P&Gが2019年に行った「髪型校則に関する調査」によれば、「時代に合わせて、校則も変わっていくべきだと思いますか?」という教師への問いに対し、実に92.1% が「そう思う」(「そう思わない」は7.9%)と回答していたという。

 では、令和になってもはびこり続ける“トンデモ校則”をなくすにはどうすればよいのか。

 須永氏は「“ツーブロックヘア論争”は非常によい問題提起になりました。メディアで“校則”に関する議論がもっと巻き起こることが大事。そのために私たちのプロジェクトでもおのおので調査や教育委員会への提案・啓発などをより進めていきたい」と語った。また、内田氏は「教員の働き方を改革することで、校則を緩めることができるかもしれない」と提案した。

 ドラマ『白線流し』のモデルになった伝統校・岐阜県立斐太高校では、女子生徒の「黒タイツ着用禁止」をめぐって、生徒会執行部が教師や保護者、OBと対等な立場で意見を言い合える会議を実施。見事に、校則廃止に追い込んだ。

 こういった事例のように生徒自らが校則を変えていこうという意欲的な気持ちがない限り、“トンデモ校則”はなくならないのかもしれない。

◆校則がなくなったことで生徒の成績も向上?

 時代遅れの“トンデモ校則”に翻弄される学校がある一方で、前出の須永氏は「校則がない、校則に縛られていない自由な校風の学校もある」と都内にある2校を紹介してくれた。

「世田谷区立桜丘中学と千代田区立?町中学がその代表的な学校で、両校とも校則のほとんどを撤廃しました」

 なかでも桜丘中学の取り組みは非常に珍しい。

「頭髪の色や長さ、制服の着用は自由、スマホやタブレット端末の持ち込みも可能、チャイムも朝に一度鳴るだけ。遅刻や途中退席をしても注意されません。さらに、授業に参加したくない生徒は廊下で自習することも可能です。また、いち早く3Dプリンターや人型ロボットの導入をしているんです」(須永氏)

 当初は校則を廃止して「社会規範の守れない生徒ばかりになったらどうする?」という保護者からの反対意見も多かったという。

「当時の校長・西郷孝彦氏が生徒たちの個性を伸ばすために校則撤廃の方針を貫いた。そのおかげで、荒れていた校内が一変。校内暴力やいじめ、非行は減少し、進学校への進学者数や平均学力が区の上位になった。近年では区域外から同中学に越境入学してくる生徒がいるほどです」同

 また、千代田区立?町中学も変わった取り組みを行っていると内田氏は言う。

「クラス担任制や宿題の提出、定期テストを完全廃止。生徒の自主性を重んじる教育を進めています。そもそも全国的にトップ進学校ほど校則が緩いと言っていい。ただ、それでもトラブルが少ないのは生徒自身の意識が高いから。桜丘中や?町中は、東京都の中でも平均年収の高い家庭が多く住むエリアだからこそ成立したとも考えられる」

 その上で「今後は東京以外の地方や中堅校でもこのような模範となる学校が出てくることが理想」と言う。校則に縛られない生徒たちが全国各地に増加することを期待したい。

●須永祐慈氏:「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」発起人。同プロジェクトは、2017年に渡辺由美子氏、荻上チキ氏とともに発足された

●内田 良氏:名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)

<取材・文/瀬戸大希 写真/朝日新聞社>

※週刊SPA!8月4日発売号より

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