<明石ガクト?手塚マキ>動画業界と飲食業界…コロナ禍はこの2業界をどう直撃したのか?

<明石ガクト?手塚マキ>動画業界と飲食業界…コロナ禍はこの2業界をどう直撃したのか?

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 感染者数の最多人数が連日のように更新されるなど、新型コロナの猛威が止まらない。日本経済が急速に冷え込むなかで、各産業はどのような打撃を受けているのか。

 動画ビジネスを牽引するワンメディアCEOの明石ガクト氏と、ホストクラブを中心に飲食事業を展開する手塚マキ氏。フィールドの違いはあれど、新型コロナで損害を受けた2人の経営者がクロストークを展開した。

◆密な空間で作らざるを得ない動画は「止める」しかなかった

 新型コロナ禍で需要が高まった感もある動画業界と、最もダメージを受けた飲食業界。なかでもホストは感染拡大の温床として世間から非難を受けた業種でもある。特徴的な2つの分野で先頭を走る2人が体感した新型コロナの影響とは。

――新型コロナの影響が出始めた頃を改めて振り返ってください。

明石:僕らの世界でいうと、テレワーク化により在宅時間が長くなったことで動画のニーズが増えたといわれがちですが、スタジオというすごく密な空間で撮影して、スタッフもやたら多いんで、基本は“止める”しかないんです。企業も積極的にPRする機運じゃなかったんで、2月頃から決まっていた案件がポツポツとなくなって、気がついたら累積ウン億円の仕事が飛んでて……。ある日、起きたらあまりに歯が痛くて歯医者に行くと「奥歯にヒビが入ってます」と言われましたね。ストレスで、歯を?みすぎたんです(笑)。

手塚:それは「準備していたものが全部無駄になって悔しい」という思いなのか「こんなに会社が赤字になってどうしよう」っていう思いなのか、どっちなんですか?

明石:両方ですね。会社的にも、ちょうど資金調達をしたばかりだったんですよ。なまじ現金があったがゆえに、この危機に俊敏に対応できなかった。それに、『動画2.0』って本も書いて「これからは映像じゃなくて動画」と言ってきたのに、このタイミングで世間から「動画ってたいして必要ないよね」って言われた気がして。

手塚:大きいのはお金よりもそっちの打撃だったんですね。このコロナ禍って、これまでの日常生活の中で起きていることが顕在化しただけの気がするんですよ。

明石:正直その通りだと思います。今はどこも動画に力を入れていて、その上昇気流に乗って浮ついていたところがあったんだと思います。だから、本質的に自分たちが売ってるものが何なのかみたいなことを考え直すきっかけになったんです。そこで行き着いたのが、俺らは「物語」を売ってるんだなと。

――ワンメディアのリリースでもその覚悟を語っていましたね。

明石:はい。物語があって人は共感して物を買ったりサービスを買ったりするわけで、僕らはそこの手伝いをしているんだってことを、今回改めて考え直したんです。

手塚:「広告事業をしている」ではなく、「誰かに必要とされるものをつくる仕事」だと気づいて、一歩前に進めたんですね。

明石:そうです。っていうか、手塚さん、めっちゃ話聞き出すのうまいっすね。これがプロか(笑)。

◆ホストが無駄だなんて自分らが一番知っている

――手塚さんはどのような影響を受けたのでしょうか?

手塚:もちろん売り上げはひどいことになりましたよ。ただ、ガクトさんのように、仕事に対するアイデンティティの崩壊みたいなことはなかったです。世間から「必要ない」と言われることには慣れていますし。平時だって、水商売をしていると言えば色眼鏡で見られるのが当たり前でした。でも、僕らは「人には日常から逸脱した時間がときには必要だ」と思っているからずっとやってきたわけで。

――ほかの歌舞伎町の経営者たちの状況はどうなのでしょうか?

手塚:たくましいですね、歌舞伎町の経営者たちは。今回はさすがに連帯感が生まれてほかの経営者と話す機会が増えたんですが、みんなカネ勘定がめっちゃ早い。3月の段階で、どういうふうに1年後まで持たせるのかという計画を立てていたり、経費削減には同業者と手を組んでビルオーナーや広告媒体に直訴したりしていました。

◆自分たちのビジネスの原理・原則から逃げちゃダメ

――明石さんの周りの経営者たちはどんな状況でしたか?

明石:スタートアップ界隈は苦しんでいましたね。ほとんどのスタートアップはまだ、事業モデルが出来上がってないんです。先に投資家などからお金を集めて、将来性にかけてもらうわけなんですが、コロナで計画が全部白紙になった。売り上げが立ってない会社も多いから、マイナスになるしかないですよね。手塚さんは、通常通り営業できないなかで、何か工夫したりしていたんですか?

手塚:ウチはもともとボトムアップ型の組織なのですが、今回って“前提”が毎日のように変わるし、そのたびに戦略を変えなければいけない状況だったと思うんです。それって新規事業を毎日立ち上げるようなものだし、「運営陣を鍛えるいい機会になる」と思ったんです。けど、実際に運営陣に作戦を立てさせていたら彼らの疲弊がすごくて。そこで次は僕がトップダウンで指揮をとろうとしたんですが、それもうまくいかない。結果的には同業者の風潮に合わせるような形で、現場でそのつど判断してもらうことにしました。慣れないことはするもんじゃないですね。

明石:僕も普段やらないプロボノ(知見や技術を生かしたボランティア活動)の動画をやったんですけど、今見たら「何をやっていたんだろう」って思います(笑)。ジタバタしてみたけど、うわべっぽいことは結果として何も残んないんですよね。やはり自分たちの原理・原則から逃げちゃダメで、自分たちがやっているビジネスの本質を見つめ直さないとダメだと。

◆刹那的な狂った時間が心のバランスをとってくれる

手塚:僕らの水商売も、根本的には人と人の?がりなんですよね。今回のコロナでも売り上げベストのスタッフの声を聞いたんですけど、仕事に対する意義をみんなしっかり考えていました。物理的じゃなく、どうしたらお客さんの気持ちに寄り添えるのかと。

明石:水商売も、僕らのような動画広告を作るのも、「感情産業」ですよね。感情が動くことに対価が払われる。腹が膨れるわけではないし、健康になるわけでもないんだけど、感情の動きがないと、人って人生に彩りがなくなっていく。

手塚:論理的、理性的に生きなければいけないという規範から脱却する時間は必要だと思う。例えばテキーラをみんなで一気に飲むとか、マジで意味ないじゃないですか。でも、その刹那的な狂った時間が、心のバランスをとってくれるんだと思う。毎回後悔するけど。

明石:この前、SNSで朝方の路上で両乳首を2人の女子にいじられているホストの写真が話題になっていましたよね。あれ、すごいなと……。だってもう、いいか悪いか不謹慎かそうじゃないかとかいう次元を超えているんですよ、インパクトが。圧倒的にリアルで。

手塚:こんなコロナ禍でも、歌舞伎町は狂っているんですよね、やっぱり。だから面白いんですよ。

【明石ガクト氏】’82年生まれ。’14年にミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するONE MEDIAを創業。近著に『動画の世紀 The STORY MAKERS』

【手塚マキ氏】’77年生まれ。’97年から歌舞伎町で働き始め、ナンバーワンホストを経て独立。歌舞伎町でホストクラブ、飲食店、美容室などを経営する。Smappa! Group会長

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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