欧州某国で日系企業の面接に行って、海外の日系企業に優秀な人材が集まらない理由の一端を垣間見た!

欧州某国で日系企業の面接に行って、海外の日系企業に優秀な人材が集まらない理由の一端を垣間見た!

Elnur / PIXTA(ピクスタ)

 コロナウイルスの影響によるリモートワークの普及などで、これまでのような過剰労働、会社第一主義に歯止めがかかるのではないかと期待されている日本。しかし、実際には、そういった「日本企業の規律」は変容するどころか、海外に「輸出」されているのが現状だ。

◆月収は現地平均の倍ではあるが……

 残業、休日出勤、勤務時間外のメールや電話対応……。近年は度々「働き方改革」が叫ばれていることもあり、少しずつではあるが、ようやく過剰労働は悪しき習慣であるという認識が浸透しているように思える。

 筆者はこれまで何度か海外で暮らす日本人への取材を行ったことがあるが、そういった過酷な労働条件を理由に移住を決意したという人は少なくなかった。少子高齢化が進み、働き手の不足が問題となっているが、そうした面からも「日本企業の規律」には変化が求められているはずだ。

 しかし、筆者自身、かねてからそういった働き方に疑問を抱いていたこともあり、海外の日系企業での就職活動を行ってみたのだが、そこで見聞きしたことは変容とはかけ離れたものだった。

 ある日、日本の転職エージェントからかかってきた電話で、某大手企業が欧州の拠点で人材募集をしていることを伝えられた。給与は現地平均賃金の約2倍だ。

 こう聞くと悪くないようにも思えるが、同社は日本人なら誰もが知るメガ企業で、日本での年収は約1300万円以上とも言われる。それに比べると現地のレートでは高いとはいえ、やはり給与は圧倒的に低い。また、首都に拠点があるため、家賃のことも考えると、正直「世界に轟く日本企業」というイメージからは少しギャップを感じた。

◆リモート面接前の質問項目を見てゲンナリ

 とはいえ、欧州で暮らしながら、世界を股にかける大手企業で働くチャンスはそうそうない。キャリア的にもきっとプラスになるはず。そう期待を募らせていたのだが、リモート面接の前に届いた質問項目を見て、またも気を落とすこととなった。

・日本企業の規律を学び、実践してみたいですか?

 率直な意見としては「胡散臭い」……。というか、なんだかカルト的な雰囲気を感じてしまった。さも当たり前のように使われている、「日本企業の規律」とはいったい何なのか?

 薄々、どういうことなのかは想像がついていたが、続く質問を見て、悪い予感は的中した。

・顧客からのメールや電話には可能な限り早く対応しますか?

・休暇中も仕事に責任を持てますか?

・仕事に関連した書類を読むことに、進んで自分の時間を費やしますか?

・顧客を楽しませるため、時々プライベートな時間を費やせますか?

 輝かしく聞こえる「日本企業の規律」とは結局のところ、残業や休日出勤の言い換えに過ぎなかったのである。

◆現地住民を「怠け者」扱い

こうした「日本企業の規律」について、現地の友人に話しを聞くと、「休日に仕事をしたら、それ休日じゃないじゃん」という正論が返ってきた。身も蓋もない言い方だが、たしかに言うとおり……。

 そんな仕事に対しての考え方の違いは、面接でも感じられた。「日本企業の規律」について、面接担当者は「こちらの人たちは終業時間になると、残務があっても帰ってしまうんです」と説明していたが、それは日本が特殊なだけであって、世界では当たり前のことだ。怠け者であるかのようなニュアンスが含まれていたが、ビジネスにおけるルールに則って働いているにすぎない。また、現地の人々への敬意が欠けているようにも感じられた。

 もちろん、諸外国にも残業や休日出勤がないわけではないが、できるだけそれを避け、仮にどうしてもやらなければいけないのであれば、正当な対価が支払われてしかるべきだ。

 筆者はそれを「日本企業の規律」という言葉でコーティングし、あたかも素晴らしい文化であるかのように「学ぶつもりはありますか?」と上から目線で問われたことに、強い違和感を覚えてしまった。

◆まるで経済成長しない日本式が正しい根拠は?

 労働生産性は先進国中最下位、経済成長率は30年近く低迷、そして「Karoshi」という言葉が世界で悪名を轟かせている日本が、ドヤ顔で「日本企業の規律」を押しつける根拠はいったい何なのだろうか?

 たしかに、人材と時間の制限があるなか世界市場で戦うには、身を削る必要があるのかもしれない。しかし、試合終了のホイッスルが鳴ったあとも戦い続けたり、選手が次々と倒れるなかで、「これが我々のやり方だ」と誇ることは果たして正しいのだろうか?

 繰り返すが、決して日本経済はかつてのように優れているわけではない。また、世界経済を席巻していたときも、それを支えていたのは急成長した人口と時間外労働だ。「日本企業の規律」というと柔よく剛を制すような日本人の琴線に触れるイメージが湧いてしまうが、実際は労働者たちの力でゴリ押ししていたにすぎない。

 海外では本項で記したように、まるで世界には知られていないビジネスメソッドであるかのように使われている「日本企業の規律」。日本国内では、同じく過剰労働や人権侵害が大きな問題となっている技能実習生たちにも、似たような謳い文句が使われているが、こうした言葉遊びをやめない限りは、日本経済が再興する日は遠いだろう。

 また、中国系企業のエンジニア待遇などは日本でも度々話題になるが、その厚遇は日本とは格段に違う。このままでは日系企業の元には優秀な人材など集まるはずもないだろう。

 日本企業はその規律を誇り輸出する前に、労働者に対する正しい敬意と対価を払うべきはずだ。

<取材・文/山田レシェック>

【山田レシェック】

コロナ禍でまだ準都市封鎖中の欧州某国に滞在する欧州某国人系日本人のライター。現在現地で現地人として就職活動中

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