賛否両論「学園祭のオンライン化」は誰のためのものか。

賛否両論「学園祭のオンライン化」は誰のためのものか。

"オンライン学園祭"に疑問も

賛否両論「学園祭のオンライン化」は誰のためのものか。

2019年の早稲田祭

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、いくつかの大学が学園祭のオンライン化を決めている。2日間で毎年20万人以上が来場する日本最大規模の学園祭・早稲田大学の「早稲田祭」も、オンライン形式で開催されることが発表された。なぜオンライン化してまで学園祭を断行するのか。現役学生でもある筆者が、運営スタッフ代表に取材した――。

◆開催を喜ぶ声の中、多くの疑問の声も……

 今年の早稲田祭はオンライン形式で行う――。運営スタッフが公式Twitterでそう発表すると同時に、WEBサイトには、「日本一の学園祭」「オンラインでしかできない祭り」などの派手な文言が目立った。YouTubeでスタイリッシュなPVが配信され、オンライン学園祭を盛り上げようと大々的なアピールが行われた。

 運営スタッフは「例年のオフラインの代替を目指すのではなく、日本一の学園祭として新たな早稲田祭を目指しております」としており、学園祭をオンラインで開催することを前向きにも捉えているように見える。

 一方、公式Twitterの発表を見て、筆者の知る学内のある企画サークルのメンバーは肩を落とした。

「オンラインでの学園祭が、そんなに盛り上がるとは思えない。運営スタッフは学園祭が中止になってしまうと、新入生が組織を抜けたり、上級生が就活で使うネタが無くなってしまうからどんな形であれ開催せざるを得なかったのでは。頑張っているのは分かるが、自己満足にも見えてしまう」

 学生からは、オンラインでも開催があることに期待をする声がある一方、「延期という形でオフライン開催を目指せなかったのか」「具体的に何をやるのか伝わってこない」と懐疑的な意見もSNS上では目立つ。

◆オンライン学園祭の決定はあまりに唐突だった

 また、別のサークル代表者からはこんな不満も。「早稲田祭は大学主催ではなく、運営スタッフがサークルから預かった賛同書に基づいて開催するものです。しかし、事前相談がないばかりか我々サークル代表者はオンラインでの開催をTwitterで知りました。いくらなんでも寝耳に水、事前にメールで通告くらいは欲しかったです」。

「運営スタッフはオンライン化の経緯として、オフラインでの開催を目指したが大学との協議の結果オンラインになったと言っています。しかし、協議の内容はなんなのか、大学からどんな指示があったのかについては一切説明してくれません。せめてプロセスくらい教えて欲しいです」

 今回のオンライン学園祭の開催は、運営スタッフの独自の判断ではなく、大学とギリギリまで協議して決められたものだ。しかし、早稲田祭はあくまでも大学から独立した運営スタッフが開催している。経緯がはっきり分からないまま唐突にオンライン学園祭と言われ、当惑している学生も多そうだ。

◆運営スタッフ代表に聞く、オンライン学園祭とは

 今回、早稲田祭2020の運営スタッフ代表の福島さんに話を聞くことができた。大学生として感じた疑問や、サークル関係者から聞いた疑問などを直接ぶつけてみた。

――オンラインで学園祭を行うとなると、従来のオフラインでの学園祭の盛り上がりをどう再現するのかが課題になりそうです。

「オフライン学園祭の魅力を引き継ぎたいとは考えていますが、実際にその熱気を再現するのは限界があります。そのため、オフラインを模倣するのではなく、オンラインならではの魅力がある祭りを目指していきたいと思っています。

 オンライン化の意外な副産物として、今年は早稲田祭に初めて参加する団体が増えました。例えば、展示を行うサークルでは、物理的に準備が楽になったことによって、参加のハードルが下がったのではないかと思います」

――オンライン学園祭、といっても具体的なイメージがしにくい人も多いと思います。どんな企画を想定していますか?

「まだ参加団体がどのような催しをするのか確定していないのですが、『学園祭当日に企画者が大学内の教室を借りて配信を行う』、『制作物をネット上に発表する』などの形を想定しています。例えば、ダンスサークルなら大学の教室内で踊っている様子をYouTubeでライブ配信する、出版サークルなら創作物をpdfなどで公開するなど、いろいろな形があると思っています。観客は入場できませんが、演者は大学に来られることになっています」

◆オンライン学園祭の実現に向けてはまだ手探り状態

――学生への取材では「せっかくのオンラインなのに、場所と時間を限定して配信するのはもったいない」「パンフレットの広告収入がない中、財源はどうするのか」などの疑問も聞かれましたが、どう思われますか?

「全般的に言えるのは、参加団体が決まらないともろもろ不確定ということです。オンラインでどう企画を作っていくかも、それぞれのサークルとこれから話し合いながら決めていく予定です。

 また、昨年までパンフレットの広告収入で賄っていた予算は、ウェブ広告などで集める予定です。毎年徴収しているサークルからの協賛金も財源ですが、今年の金額はまだ決まっていません。運営スタッフは単年度組織なので赤字を次の年に回したりはせず、その年に集められる予算内でやりくりすることになっています。」

――サークル関係者からは、オンライン化が決まったプロセスの説明がないことに不信を抱く声もあります。

「延期という選択ができなかったのは大学側の事情によるものです。大学との協議の内容は、センシティブな部分なので回答は控えさせていただきたいです。運営スタッフは大学から独立した組織なので、大学側にこちらの思いをきちんと伝えて交渉しているものの、原則的に大学の方針に従うようにしています」

――最後に、福島さんが考える早稲田祭の意義とはなんでしょうか?

「早稲田祭は、早大生が全力を尽くしている『早稲田文化』を発表し、みてくれた人に何か力を与える場だと思います。運営スタッフが作っているのはあくまで箱。それ以上の意義は参加団体が作っていくものです。

 しかし、運営スタッフはその場所を作るものとしての責任を果たしたいと思っております。また、箱としての学園祭は今までは変わらない部分が多かったと感じていますが、今回のオンライン化で形態がガラッと変わったことは、各々が学園祭ついて考える機会になるのではと思います」

◆「オフライン学園祭中止、オンライン学園祭開催」は妥当か

 取材を終え、前代未聞のオンライン学園祭を学生だけで運営すると決めた運営スタッフの覚悟には脱帽した。一方、具体的な内容やルールには未定の部分も多く、見切り発車との印象を持たれてしまうこともやむをえないだろう。各大学で次々とオンライン学園祭の開催が決定されているが、運営側は体裁の良い話だけでない、丁寧な事情説明と発信を行い、学生から理解を得られるように努めるべきだ。

 盛り上がりに欠けるオンライン開催だとしても、学園祭は開催をしなければならない理由がある。学生文化の継承のためだ。コロナ禍でサークル活動や新歓活動が制限される中、大学の魅力の一つであった学生文化やサークル文化は危機にひんしている。その上、文化発表の大きな舞台である学園祭まで中止になれば、活動が止まったまま上級生が卒業してしまい、後輩にノウハウが継承されず立ちゆかなくなるサークルが出てくるのは想像に難くない。

 しかし、就職活動の早期化・長期化でサークルの引退が早まっている事も相まって(サークルにもよるが、引退は大学3年生の夏ごろが多い)、短い期間で卒業する大学生たちの創るサークル文化はあっという間に崩壊する脆弱(ぜいじゃく)さを持ち合わせている。オンラインでも学園祭が開催されれば、サークル活動の活性化になるとともに、「学園祭に向けた準備のため」という大義名分のもと大学が活動制限を緩める理由にもなるだろう。

 大学生である自分個人としても、例年通りの学園祭が出来ないのは非常に残念だ。しかし、このオンライン学園祭という初めての試みがサークル文化の灯火を繋げることを願う。

◆大学生だけが自粛を強いられ続けている

 オンライン学園祭には、期待できることもある。この開催が学園祭のパラダイムシフトのきっかけになるかもしれないことだ。昔に比べ、大学の学園祭の自由度が下がり続けていたと感じている。大学自治がなくなったことの延長で、各地の学園祭は規制が増える傾向にある。

 例えば、学園祭で飲酒ができる大学はほとんど無くなった。また、学園祭の企画がSNS上で批判を浴び中止に追い込まれる……なんてことも起こるようになった。福島さんが語ったように、オンライン学園祭で一度別のフォーマットが試されることで、時代に合った学園祭の形を再構築できるかもしれない。

 そもそも、各大学が一斉に学園祭の開催を認めない方向で動いているが、その判断は妥当なのだろうか。Go Toキャンペーンが始まり、イベント規制の緩和が段階的に始まり、社会活動とのバランスを取りながらコロナと共存する方向で社会は動いている。

 その中で、大学生の置かれている状況は厳しい。授業もオンラインで行われている上、サークルや部活動の活動制限は続き、「#大学生の日常も大事だ」という大学生活の回復を訴えるハッシュタグはTwitterのトレンドに入った。

 実社会の自粛緩和に対し、通常の大学生活が許されないという不満が、オンライン学園祭への学生の冷ややかな反応の背景にあるとも感じる。学園祭に象徴される、課外活動も大学生の重要な学びと経験の一つだ。経済効果では表せないかもしれないが、大学生活の中で刺激を受け成長するという経験を特定の世代だけが失うことの社会的損失は大きい。

<取材・文/茂木響平>

【茂木響平】

ライター・イベンター。大学のお水飲み比べサークル会長。現在、上智大学4年生。面白そうな場所に顔を出していたら、なりゆきでライターに。興味分野はネット・大学・歴史・サブカルチャーなど。Twitter:@mogilongsleeper

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