TOEIC800点台の社員が600点台の社員より活躍しなかった理由とは? コロナ下でこそ見つめ直すべき、エリートに足りないもの

TOEIC800点台の社員が600点台の社員より活躍しなかった理由とは? コロナ下でこそ見つめ直すべき、エリートに足りないもの

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 筆者はグローバル企業日本法人の人事部長時代、アジアパシフィックのトップタレント向けプログラムに、主催する側として参加した。アジア各国の法人からトップクラスの評価を得ているメンバーが一同に会し、さらにスキルを高めるためのプログラムだ。

◆TOEIC600点と800点、評価が高かったのは……

 日本からは、高いパフォーマンスを発揮している2人のメンバーが選抜されて参加した。しかし、英語力にはTOEIC800点台と600点台というように差があった。グローバル企業では英語力は必須で、高い英語力を発揮できることは、それだけでアドバンテージになる。誰しも800点台のメンバーが活躍するだろうと疑わなかった。

 しかし、結果は真逆だった。高い評価を受けたのはTOEIC600点台のメンバーで、TOEIC800点台のメンバーは、パフォーマンスに大いに問題があるという烙印を押されてしまったのだ。

 このプログラムは、トレーナーが何かを解説して、参加者がそれを聞くだけという、講義形式で行うものではない。トレーナーと参加者で、あるいは参加者同士で、演習を繰り返すプログラムだ。プログラムの進行さえも、トレーナーの説明によってではなく、トレーナーと参加者の問答によって行われる。演習や進行にあたって、常時、反応や発言が求められるのだ。

 英語力の高いTOEIC800点のメンバーが発言をリードするだろうと思ったら、実はまったく発言できず、進行にもついていけなかった。なぜならば、電子辞書をたたいて、何をどう発言しようか考えているうちに、次の演習に入ってしまったり、次のセッションに進行してしまうということが繰り返されたからだ。

 一方、TOEIC600点のメンバーは、文法的には誤りがあったり、適切な語句を選択できていなかったこともあっただろうが、躊躇することなく発言し、立ち上がって身振り手振りで表現したり、ホワイトボードに万国共通のイメージ図を記しながら、言わんとすることを伝えていた。その結果、高い評価を受けたのは、TOEIC600点のメンバーだったのだ。

◆「行動」よりも「正解」を求めてしまう

 このように、確認したり考えあぐねている間に先に進んでしまい、行動するタイミングを逸してしまうことはよくあることだ。お互いをよく知っているメンバー同士の場合は、普段はパフォーマンスを発揮しているが、たまたまこの場面では発揮できなかったのだろうと思ってくれる。

 しかし、メンバーが流動したり、他流試合の場合には、そうはいかない。はたから見れば、何も行動されていないことと同じで、パフォーマンスが発揮されていないことになってしまう。今日、メンバーが流動することは実に多くなっている。

 細部まで確認しないと行動に移せない人の多くは、行動の価値基準が自分の外側にある人が多いように私には思える。どのような答えが期待されているのか、正しい答えが何なのかということを確認しないと先に進めない。

◆コロナ下でより重要さを増す瞬発力

 一方、すぐに行動に移せる人の多くは、行動の価値基準が自分の内面にある比重が高いと言える。言いたいことを身振り手振りでも、ホワイトボードにイメージ図を記してでも、伝えたいと思い、行動に移せる。

 「自分の気持ちの高まり度合を確認しましょう」という簡単な演習でも同じ状況が繰り広げられる。何に対する気持ちの高まり度合かを確認しないと先に進めない人もいれば、すぐに自分の内面を見つめて、気持ちの高まり度合を見極めることができる人もいる。

 この自分の内面を見つめる力があるかないかは、瞬発力を大きく左右し、パフォーマンス発揮ができるかどうかに関係が深い。環境変化が加速する今日、特に必要なスキルではないだろうか。

◆モチベーションは外ではなく内にあり

 質問:「自分の気持ちの高まり度合い」とは、何に対する気持ちの高まり度合か

 自分の気持ちの高まり度合を事前と事後でチェックする方法ですが、いったい何に対する気持ちの高まり度合を見極めればよいのでしょうか。この書籍についてでしょうか、仕事についてでしょうか、家族についてでしょうか?

 回答:自分自身で内面の気持ちを見極めましょう

 それは、質問されても他の人には答えようがないものです。その人の頭のなかは、他の人には窺い知れないからです。

 頭のなかがこの書籍のことで一杯であればこの書籍のことでしょう。仕事のことでいっぱいであれば仕事のことでしょう。家族のことでいっぱいであれば家族のことでしょう。ご自分の内なる思いを見極めていただき、その高まり度合を記せばよいのです。

 実は、このことができない人が多いのです。細かく、枠組みを与えられないと行動に移せない人が増えている証左ではないかと思うのです。これは、モチベーションを高めることの妨げになっていると私には思えてなりません。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第204回】

<取材・文/山口博>

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

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