公文書改ざん問題追及の元NHK・相澤冬樹記者が泥酔して大失態。改めて考える、自己と向き合う道

元NHK・相澤冬樹記者が泥酔して大失態 酒に酔って、イベント出演をすっぽかす

記事まとめ

  • 元NHK・相澤冬樹氏は森友学園への国有地巨額値引きや財務省公文書改ざんで真相を追及
  • 相澤氏は芸人のプチ鹿島らによるイベントに出演する約束を酒に酔ってすっぽかす大失態
  • 相澤氏はダースレイダーとプチ鹿島、LOFT9の担当、チケットを購入した方に謝罪も

公文書改ざん問題追及の元NHK・相澤冬樹記者が泥酔して大失態。改めて考える、自己と向き合う道

公文書改ざん問題追及の元NHK・相澤冬樹記者が泥酔して大失態。改めて考える、自己と向き合う道

大失態のもとになった大阪・西成の立ち飲み屋

 8月29日、土曜日のお昼前。私は大阪市内の精神科クリニックを訪れました。普段はうつ病で通っているのですが、この日は違いました。酒で大失態を演じて、今後の行動を真剣に考えるため、かかりつけの精神科医に意見を求めに行きました。

 私の大失態で多くの方に大変なご迷惑をおかけ致しました。すべての皆さまに心よりお詫び申し上げます。私は記者として、森友学園への国有地巨額値引きや財務省の公文書改ざんで真相を追及してきました。その立場を踏まえ、自身のことについて説明責任があると考えました。今回何が起きたのか、今後どうするつもりなのかを皆さまにご報告いたします。

◆酒に酔って、イベント出演をすっぽかす大失態

 その大失態をしでかしたのは8月25日の夜のことです。私は、ラッパーのダースレイダーさんと時事ネタお笑い芸人のプチ鹿島さんのお二人が送る「ヨルカラナンデス」というライブ配信イベントに出演するお約束をしていました。出演は夜9時20分から。昼の用事を終えた私がさっさと帰宅せずに知り合いと大阪・西成の立ち飲み屋に行ったのがそもそもの間違いでした。

 夜7時45分ごろ、事前の確認のためZoomをつなげました。この時、私は主催者のお二人と「今、西成の立ち飲み屋に来ているんです」という話をしています。その後、知り合いに「配信があるから帰る」と言って地下鉄に乗りました。

 ところが、この辺りから記憶があやふやになっています。そのまま帰宅せずに自宅近くの別のお店に寄っています。このお店にいる時に約束の時間が来ました。配信を出している東京・渋谷のLOFT9というライブハウスの担当の方から何度も電話などで連絡がありましたが、すでに酔いつぶれていた私はまともに話ができる状態ではありませんでした。

 私と一緒に「メディア酔談」というユーチューブ配信をしている、境治という高校の新聞部仲間がいます。コピーライターから、現在はメディアコンサルタントとして活躍しています。この境が心配して配信中に盛んに私に連絡を取ろうとしました。携帯の着信記録はありますが、私はまともに受け答えができず「すぐに配信に参加しろ」という境の呼びかけにも応えないまま、配信参加のお約束を最後まですっぽかしました。

 翌日、私は、ダースレイダーさんとプチ鹿島さんにお詫びの連絡をしました。LOFT9の担当の方にもお詫びとともに返金などで出る損失についてお支払いしますというご連絡をしました。

 プチ鹿島さんからツイッター上で「いまだに視聴者にコメントを出さないのはなぜでしょうか?」という問いかけを受け、ツイッター上でお詫びをして経緯を説明しました。

 私をイベントにお招きくださったダースレイダーさんとプチ鹿島さん、準備を整えてくださったLOFT9の担当の方、出演を期待してチケットを購入してお待ち頂いた皆さま、多くの方に大変無礼な振る舞いをし、ご迷惑をおかけし、お気持ちを損ねましたこと、まことに申し訳ございません。深くお詫び致します。

 それでもダースレイダーさんとプチ鹿島さんは、この大失態を笑いにくるんで温かいネタにしてくれました。毎週金曜のお昼にお二人が配信している「ヒルカラナンデス」という番組です。ここでお話が出ているように、私はプチ鹿島さんと2年前に別の番組でちょっとしたバトルを繰り広げています。それを解消する出演依頼で、お二人は念入りに準備を整えていてくださったのに、私は二重の意味で大失態でした。

◆高校時代からの盟友の、厳しくも鋭い指摘

 翌日、境から連絡がありました。「会って話がしたい」ということでした。境は、今回の私の大失態を受けて、これまで一緒に続けてきた「メディア酔談」などの配信を中止・凍結すると表明していました。

 私たちは東京・五反田の貸し会議室で28日に会いました。冒頭から境は「酒をやめろよ」と求めてきました。そのように言われるだろうし、それも当然だと思っていました。ですが境が考えていることは、単純に酒だけの問題ではありませんでした。

 境が私について一番気になっていたこと。それは「せっかくNHKを辞めて新しい記者として再スタートを切ったのに、なぜ酒に酔って無頼ぶる旧態依然としたオールドメディア的記者に舞い戻ってしまったのか」ということでした。

 そういう「古典的ジャーナリズム」を脱却して生まれ変わろうとしていると思ったから「メディア酔談」に誘ったのに、昭和オヤジを前面に出して語る。酒だけでなく、そういう自分の姿に酔っている。そこを脱して早く次のステップに進めよ、ということでした。

 とても耳に痛い話でしたが、それももっともだと、自分のおごりに気づきました。酒で大失態をしたことももちろん恥ずかしいことですが、それを招いた自分の心持ちがとても恥ずかしいと感じました。

◆発達障害に加えて、双極性障害と診断されていた

 境の話が終わると、私は返事をしました。まず告げたのは、長年通っているかかりつけの精神科クリニックの診察を急きょ予約したので、そこで診察を受けてくること。診察で今回の大失態についてすべて医師に伝えて、医師の指示に従ってこれからの行動を見直すつもりだと告げました。

 私が長年うつ病で迷走していたことは、発病間もない10年ほど前から境も知っています。それと私の飲酒癖が関係あるのだろうということも。でもそれが言い訳にならないことは私もわかっています。正式な診断名は「双極性障害(そううつ病)」で、躁と鬱を繰り返し、いちばん回復が難しいとされています。最近の私はきっと躁に近い状態で、舞い上がっていたのだと思います。

 同時に私は発達障害の一つ、アスペルガー症候群(ASD、自閉スペクトラム症)とも診断されています。この障害の特徴は「社会的なコミュニケーションが苦手で、他人とのやりとりがうまくできない。興味や関心が偏っている」ということです。

 私は人と目を合わせて話すのが苦手です。だから人の顔を覚えるのも苦手です。一言で言えば「記者に向いていない」……私は自分に向いていない職業を、そうとは知らずに選びました。こうしたことも私のうつ病歴や飲酒癖に関わっているのだと思います。でも、この30年余り「いい記者になりたい」という思いでやってきたのですから、これも言い訳にならないと感じています。

 私の中にまだNHKへのこだわりがあることは、私も気づいていました。でも、31年間記者としてそこで育ってきたおかげで今の自分があるから、そこをすべて捨てることはできません。

 それに対し境は「そこが捨てられないのはわかるよ。でもジャーナリズムの考え方については別だと思う」と答えました。こうしたさまざまなことを、境は私と向き合って率直に語り合ってくれました。

 途中でもう一人が加わりました。久保田徹くん。24歳の映像作家で、ご縁あって私の映像を撮りためています。自身のドキュメンタリー作品の一部として、境の承諾を得て撮影にきました。私はそのことを知りませんでしたが、撮られて困ることもないので、私たちのやりとりを撮ってもらいました。

https://www.youtube.com/watch?v=qMrXUhUktXY

 さらに、その場で私の「謝罪動画」を撮ることになりました。カメラに向かって、ご迷惑とご心配をおかけしたすべての方々にお詫びする動画です。

https://www.youtube.com/watch?v=X5En46NdZ1s

◆3日の禁酒が守れなければ、専門医療機関で断酒に

 翌29日、かかりつけの精神科クリニックで診察を受けました。主治医と初めてお会いしたのは12年前。途中、転勤などで間が空きましたが、もうずいぶん長くお世話になっているので、私の病状病歴や飲酒癖もよくご存じです。

 今回の大失態について説明すると、開口一番「仕事の前に飲んだというのが、そもそもの失敗ですね。飲む量を抑えられないとアルコール依存症の疑いが大きいですよ。そうなったら専門の医療機関に行ってもらわないといけません」。

 私は3年ほど前から、ここでカウンセラーのカウンセリングも受けていました。当時、躁状態の傾向が出ていたため、それを抑えるための相談でした。だいぶよくなったのでしばらく中断していましたが、今回、再開することにしました。次にカウンセリングが受けられるのは3日後の9月1日です。

「少し間が短いですけど、次の受診日はこの日にしましょう。その日まではお酒を飲まないでください。飲まずにいられるかどうかが大事です。飲んでしまうようなら、依存症ということで専門機関をご紹介することになります。それは断酒ということになりますよ。相澤さんにとっては生きがいの一つだから苦しいでしょう? だから我慢してください」

 この診察結果を私は境に伝えました。そしてもう一人、「財務省改ざん訴訟」で国などを訴えている赤木雅子さんにも伝えました。「私は真実が知りたい」という著書をともに出した、今もっとも大切な取材先の方です。

◆「お酒を飲む姿が痛々しかった」と赤木雅子さん

 赤木雅子さんは私の大失態を知って、すぐにLINEでメッセージをくれました。その申し出で、大阪・梅田の喫茶店でお会いしました。

 赤木雅子さんの夫、俊夫さんは、財務省近畿財務局で公文書の改ざんをさせられたことでうつ病になり、不正の全責任を押しつけられると追い詰められて、自ら命を絶ちました。だから雅子さんは真相解明をめざし、国などを相手に裁判を起こしています。

 これまでの取材の中で、俊夫さんが飲んでいたうつ病の薬の話題が出た時、「その薬、私も飲んでいましたよ」という形で、私は自分の病歴を雅子さんに伝えていました。ほとんどの薬が私と重なっていました。

 飲酒癖についても話題に上りました。雅子さんの亡くなった実のお父さんも、お酒のことで苦しんでいたからです。お父さんが大好きだった雅子さんは、私の中にお父さんの姿を見ていたそうです。だから今回、次のようにお話がありました。

「相澤さんがお酒を飲む姿は、私にとってはいつも痛々しい感じがしていたんですよ」

そして続けて「境さんの話をよく聞いてください。相澤さんを一番理解しておられます。境さんの言葉は私の言葉と受けとめてください」

 その後、境と面談し、さらに精神科クリニックを受診して、雅子さんに結果を伝えました。すると、「相澤さん!これからですよ!厳しい道のりは!とにかく3日、頑張ってください!」。

 医師の指示を守って禁酒できるのか? それから先どうすることになるのか? 専門の医療機関のお世話になるのか? それを次回1日の受診後に境と赤木さんにお伝えするのはもちろん、この場をお借りして皆さまに再びご報告したいと考えています。

◆皆さまへのお詫びと感謝

 私は酒を楽しんできたと思っていました。酒の失敗も笑い話として甘えてきました。それは失敗がすべて自分一人のことだと思っていたからです。

 しかしその甘い考えが、大勢の方々に多大なご迷惑をおかけする結果を招きました。私にイベントでの発言の機会を与えようとしてくださったダースレイダーさんとプチ鹿島さん、LOFT9の担当の方、チケットを購入して出演をお待ち頂いた皆さま、すべての方の思いを裏切ったことを、心よりお詫び申し上げます。申し訳ございません。

 そして、今回の大失態にご意見を頂いた皆さまのおかげで、自分のおごりに気づき、自分に向き合うきっかけを得ることができました。そのことに深く感謝致します。ありがとうございました。

<文/相澤冬樹>

【相澤冬樹】

大阪日日新聞論説委員・記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『安倍官邸VS.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(ともに文藝春秋)

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