台風10号、パチンコ店が立体駐車場を車水没対策で地域に開放。その報道にさえ垣間見える「偏見」

台風10号、パチンコ店が立体駐車場を車水没対策で地域に開放。その報道にさえ垣間見える「偏見」

大型パチンコ店は自走式の立体駐車場を併設するところが多い(写真はイメージです) murara-555 / PIXTA(ピクスタ)

◆九州地方を襲った台風10号

 特別警報級とも言われた台風10号が九州地方を襲った。当初想定された規模よりも小さかったとはいえ、人命被害や家屋の被害は免れなかった。

 今回の台風に関して言えば、国交省と気象庁が合同会見を開き、強い警告を発しながら国民に注意を呼び掛け、事前の準備を促したし、それに応じる形でマスコミ各社もトップニュースで台風情報を流し続けた。

 その結果、自治体はコロナ禍における避難所の整備に奔走し、公共交通機関や公立学校、大手チェーン企業等は計画的な休業を事前発表するなど、社会全体が台風被害の最小化を目指して一致団結した動きが見られた。

 政府や自治体、企業や個人のそれぞれがそれぞれに台風対策に勤しむなか、筆者が注目したのは、自家用車等の浸水被害を防ぐための、パチンコ店の立体駐車場利用である。

 災害時におけるパチンコ店の施設利用については、過去最大級の台風と言われた昨年の台風19号上陸時にも注目されており、HBOでも「台風19号の中、注目されたパチンコ店のツイート。知られざる防災拠点、災害避難所としてのポテンシャル」という記事にまとめられている。

◆浸水被害対策で立体駐車場の利用を呼び掛けた九州地方のパチンコ店

 2011年の東日本大震災以降、パチンコ店の災害時利用については業界内外で多く議論されてきたところではあったが、昨年の台風19号襲来時のパチンコ店の対応が世間の注目を集めることで、より多くの認知を受けることが出来た。

 そして今年の九州地方では、その役割がより一層、世間に浸透したように見受けられる。

 今回の台風10号の九州地方接近が頻繁に報じられると、立体駐車場を保有する九州地方の多くのパチンコ店がSNSを利用し「車の浸水被害を避けるための立体駐車場利用」を広く呼び掛けた。

 台風接近に伴い営業を取りやめたり、早仕舞いをしたりしたパチンコ店でも、立体駐車場の利用は可能にした。何よりも昨年の台風19号時に比べ、明らかに多くのパチンコ店がその意思表示を積極的に行ったし、パチンコ業界全体において災害時の「当たり前のこと」のような共通認識が見て取れた。

◆NHKにも取り上げられたが……

 店舗ごとに細かなルールは違うが、大まかにはパチンコ店の利用客であれ、パチンコ店を利用したことのない人であれ、区別なく駐車場の利用が可能である。

 店舗ごとに出庫の自由不自由や損傷被害等に対する責任を負わない旨の誓約書を交わすこと等、一定の取り決めはあるものの、基本的にはパチンコ店側の慈善や厚意に拠るところが大きい話なので、利用者側には大きな負担はない。

 今年の台風はこれで終わった訳ではない。台風被害自体が年々甚大になっている状況を鑑みても、今月来月再来月とこのような事態が起こる事は十分に想定内だ。もし次に大型台風の被害が想定される場合が、最寄りのパチンコ店の発信する情報に耳を傾ける事も良いかも知れない。

 今回のパチンコ店の立体駐車場利用で特筆すべきことは、NHKニュースが「台風に備えて車を(パチンコ店の)立体駐車場へ避難させようという動きが広まって」いると報じたことだ。

 具体的に言えば、鹿児島県にあるユーコーラッキー新屋敷店が立体駐車場を開放しているというニュースなのだが、パチンコ店の災害時利用を世間一般に大きくお知らせする良い機会であったし、何よりも地域防災の一役の担い手としてありがたい報道であったろう。

 しかし一部の業界関係者のなかでは、このニュースに心を痛めている人もいる。

 とあるパチンコ業界関係者は言う。

「台風災害に際して、NHKがパチンコ店の立体駐車場利用について広く周知してくれるのはありがたいことですが、少し残念だったことは、『パチンコ店』ではなく『遊戯施設』と紹介されていたこと」

 実際、NHK鹿児島NEWSでは「こうした中、鹿児島市新屋敷の遊戯施設では、6日から立体駐車場を無料で開放しました」とある。

◆報道姿勢に、パチンコ店への偏見が露呈する

「コロナ禍のなか、パチンコ店をネガティブに報じる際には『パチンコ店』で、今回のようなポジティブな発信の時は『遊戯施設』と表現されることに違和感があります。そもそもパチンコは『遊戯』ではなく『遊技』。報じてもらえるのはありがたいが、心境は複雑です」

 この報道の「遊戯施設」という表現がどのような経緯をもって選択されたのかは知る由もない。ちなみにコロナ禍の初期に、パチンコ大手チェーン店が協力休業に応じたニュースをNHKが報じた際には「パチンコ店」となっていた。

 詰まるところ、記事を書く人、ニュースを報じる人の個人的な見解や知見が表出するのだろう。

 何にせよ最後の段は蛇足だ。

 読者の方々は、災害時における避難等の選択肢として、地域のパチンコ店を頭の片隅においておいても良いのでは、ということが本稿の主旨である。

<取材・文/安達夕>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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