失敗したとき、人はどうすればいい? ネガティブ思考に囚われないための「立ち直り」法

失敗したとき、人はどうすればいい? ネガティブ思考に囚われないための「立ち直り」法

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 私たちは、自分で自分の困難を克服する力を奪っている……。今回取り上げたいのは、アドラー心理学で「勇気くじき」と呼ばれているものだ。

◆未来の「目的論」と過去の「原因論」

 例えば、職場で部下が失敗したときに、「どうして失敗したんだ?!」と怒る行為は、この「勇気くじき」である。

 誰かが失敗をしたときに、変えることのできない過去のことを責めて、責められた本人は変えることのできない過去について悩むことになってしまう。そうすると、責められた人はどんどん追い詰められて、その困難を乗り越える勇気が奪われていく。このように、過去に原因を探すことを「原因論」と呼ぶ。

 本来であれば上司は、変えることのできる未来の「これからどうするか?」に視点を向けて、困難を乗り越えられるように部下を奮い立たせるほうが正しい。このように、未来の目的に思考の焦点を置くことを「目的論」と呼ぶ。

 この、「勇気くじき」という行為は、他者に対してだけでなく、自分自身に対しても行ってしまう。

 例えば、困難に直面したときに「前も失敗したから、きっと、今回も失敗する」と過去の失敗のせいで新しい困難に挑戦する勇気をくじいたり、失敗したときに「どうしてこうなってしまったんだ」と困難を乗り越えるのではなく、変えることのできない過去の原因を探して自分を追い込んでしまったり、自分で自分の困難を乗り越える勇気を奪ってしまうのだ。

◆ネガティブの原因は人間の習性にあり

 また、私たちの脳はポジティブな過去の経験よりも、ネガティブな過去の経験のほうが頭に残りやすく、思い出しやすい。さらに、ネガティブな考えは、思考のなかを目まぐるしくループして何度も、心にパンチを食らわせていく。

 そして、頭のなかでいっぱいになったネガティブな情報だけで生まれる偏った妄想から、誤った判断を行ってしまう。

 つまり、原因論で困難に向き合うことで、ネガティブな気持ちが加速して、困難に向き合って乗り越える勇気がなくなったり、間違った判断をしてしまうのだ。私たち人間は、どれだけネガティブな経験に取り憑かれているのだろうかと嫌になる。

 なぜ、人間の脳はネガティブに考えてしまうのかというと、それが、生き延びる術だったからだ。

 我々の祖先は、まだ狩りをしている時代に遠くのほうで何かが動いたのが見えたときに、それが危険なものかもしれないと直感的にネガティブに考えることで、できるだけ危険を回避してきた。そうして、長く生きることができ、ここまで進化し、繁殖することができた。なので、ネガティブに考えてしまうことは、人間としては正しい反応ではある。

◆落ち込んだ気持ちから脱出する方法とは

 ただ、ネガティブな思考に捕われてもいられない。その思考から抜け出すためには、先ほど紹介した「目的論」で考えてみることが重要だ。私も、ネガティブな気持ちに捉われたときは「目的論」で考えるようにしている。

 何か失敗したときは、「どうしてこうなってしまったんだ」と悩むのではなく、「どうしたらいいのだろう」と自分の達成したい目的を作って、それに向かって進んでいく方法を考えるのだ。

 目的論で考えることで、すべては今この瞬間から始まっているという感覚を得ることができる。

◆目的論は「原因探し」にも有効

 仕事に失敗したときに、「どうして失敗してしまったんだろう?」と考えるのは、目線が過去に行っているため原因論的な考え方だ。逆に目的論では、「成功するためにどうしたらいいか?」と、未来に目線を向けて考える。

 筆者も、最初はこの目的論の発想について「問題が起きた原因を考えずに、目的思考で考えても成長しないのではないか?」と考えていた。しかし、まずは目的論で思考し、気持ちを切り替えてから原因を探るほうが効果的だ。

 ネガティブな気持ちのまま原因を探しても、問題を解決するために前向きになることができない。なので、“問題を解決する”ために目的論で考えるのではなく、“気持ちを切り替える”ために目的論で考えることを試していただきたい。簡単ではないが、習得する価値のある技術だ。

 【参考資料】

『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健

『アドラー心理学 ―人生を変える思考スイッチの切り替え方』八巻 秀

<文/山本マサヤ>

【山本マサヤ】

心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。

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