シルバーウィークで激増した日本の「移動傾向」。コロナ第3波「秋の波」への門が開く可能性も

シルバーウィークで激増した日本の「移動傾向」。コロナ第3波「秋の波」への門が開く可能性も

Ryuji / PIXTA(ピクスタ)

◆「秋の波の予兆」か? 本邦のパンデミック実態

 本邦は、パンデミック対策に失敗しており、一貫して感染率が上昇し、現在確定診断付き新規感染率4ppm程度*まで増加していますが、東部アジア・大洋州域外の諸外国に比べれば一桁少数で済んでいます。一方で、合衆国と同様にパンデミック対策における大失政から第一波パンデミックを折角収束に持ち込めた見込みであったにもかかわらず6月から第二波パンデミックを発生させてしまい、7月10日頃からの市民による自粛という自主的介入、その後の7月4連休の自粛という自主的介入によって漸く第二波パンデミックを収束に向かわせていました。しかし、GOTO政策、お盆明け効果、学校再開効果によって新規感染者数は下げ止まってしまい、8/31の週には明確に均衡状態になり、9月中旬以降には再上昇に転じています。但しこれが「秋の波」であると断定することはまだできませんが、スペイン、英仏と類似した傾向を一〜二月遅れで示しつつあります。但し、謎々効果によって規模は1/10程度となっています。

〈*ppm換算表 ナカライテスク〉

◆統計でみる本邦の第二波パンデミック

 ここでOur World in DATAから2020/09/22時点での本邦におけるCOVID-19確定診断付き新規感染者・死者の日毎の推移を示します。リンク先では最新情報が表示され、自身で操作もできます。

 グラフから明らかなように、本邦は、フタコブラクダや二上山のような二ツ山を描いています。これは合衆国や本邦のようなコロナ失敗国に特徴的なもので、一部の例外を除き第一波パンデミックの制圧が不完全なまま、経済再開=社会的行動制限の緩和から撤廃をしたために第二波パンデミックを起こしています。

 本邦は、世界で唯一と言ってよい国策によるPCR検査抑制国ですので、市中に紛れた感染者を探し出し、隔離、追跡するという当たり前のことをしませんから、社会的行動制限を緩和すれば直ちに感染は拡大し始めます。新規感染者として統計に表れるのは、感染日からだいた14日後ですので、本邦では5月連休が終わった5/11を起点とした5/25前後に感染再拡大が始まったものと考えられ。統計もそれを示しています。この頃には、非常事態宣言解除など、事実よりも政治の都合優先で公的介入緩和が実施されており、6月に入ると新規感染者数は、指数関数的増加を示しています。

 7/10頃になると、市民による自主的介入が始まり、公園がガラッガラ、新幹線がガラッガラという発言がSNSでは相次ぎ、7/23-26の4連休では、G0TOは中止しないが外出は控えろという頭のおかしな政府方針がありましたが、移動傾向(モビリティ)はGOTO政策で観光客が押し寄せた沖縄などを除き目立って減少していました。

 8/8-8/16のお盆休みでは、GOT0は推奨するが帰省はするなと言う再度頭のおかしな政府方針がありました。残念ながら明らかに移動傾向は増加していましたが、通勤、会社などで集団を形成しませんので感染拡大をある程度抑制していたものと考えられます。

 この7/10頃からの自主的介入、7月4連休の効果はたいへんに大きなもので、7月下旬には新規感染者数の増加が鈍り、8月冒頭には新規感染者数が減少に転じています。繰り返しますが、統計に表れる新規感染は、実際の感染が生じた14日後が目安で、第二波パンデミックにおいても減少に転じた切掛けは7月4連休の自粛によるものと考えて良いです。

 このまま社会的行動制限を私的介入、公的介入を行いながら継続すれば本邦においても10月初頭には5月の水準まで新規感染を減少させることができ、そこで大量検査と隔離を行うことで冬が本番になる12月という悪条件ですが、パンデミックの制圧をできた可能性があり、筆者はそのシナリオが最後のチャンス=逆転満塁サヨナラホームランであろうと考えていました。この場合、クリスマスから年末年始に頃には恋人同士がマスク着用の上で街に繰り出す程度は問題なくなっていると筆者は考えていました。

 その為にもお盆休み明けから2週間経過後の8/31からと学校再開から2週間経過後の9/7からの週の新規感染者数の動向が極めて重要と考え、慎重に監視してきました。

 グラフから自明ですが、極めて残念なことに、お盆効果による新規感染者数の抑制は期待した程ではなく、9月に入ると下げ止まってしまいました。下げ止まった水準は、日毎新規感染者数が100万人あたり4人(4ppm)であり、これは7/24の水準と同じかつ上昇基調であり今回は、今後減少する要素がありません。次回論じますが、この下げ止まった時点での感染率を筆者はベースライン(基準線)と考えており、重視しています。第二波パンデミックにより本邦は、ベースラインが0.3ppmから4ppmと約10倍増加しています。

 これは極端な例えをすれば、5月の時点では1個のくりまんじゅうにバイバイン*をかけるのに対して、9月以降は10個のくりまんじゅうにバイバインをかけるようになったのと同じで、増加の立ち上がり時間が短くなります。

〈*ドラえもんのポケットの道具で、振りかけたものは5分で二倍に増えてゆく。のび太がバイバインをかけたくりまんじゅうを一個食べきれずに捨てたことから、指数関数的にくりまんじゅうが増加し、地球を破滅させる事が必至となり、宇宙へ捨てた。バイバインは、増倍時間5分、5分間再生産率R=2.0と非現実的だが、指数関数的増加の例題として筆者はよく用いている〉

 筆者は、5月中旬には医師会検査が本格化していた事から数値のオーダー(桁)での比較は可能と考えています。現在のベースラインは、COVID-19制圧の入り口であったと言える5月中旬の水準の10倍です。本邦において9月の下げ止まった水準は、実績として合衆国や欧州の5月の状況と傾向が同じであり、介入=社会的行動制限の緩和を行えば第三波パンデミックを招きかねないものです。

 今回は紙面の都合上詳しくは述べませんが、筆者が東京都の統計を見てきた限り、判明日での新規感染者数の下げ止まりは9/4-7、発症日での下げ止まりは8/31前後であり、その後は増加に転じています。但し、現時点では指数関数的増加には見えませんので増加を人為的に止めることは可能でしょう。

 この新規感染者数の下げ止まりは、お盆休み明けによるものと考えられますが、その後の増加傾向には学校の繰り上げ始業の寄与があると考えられます。事実、9月に入り、小中高校でのクラスタ発生が多数報じられています*。これは9月より学校を再開している合衆国でも全く同じ事が発生しています**。

〈*神戸の小学校でクラスター発生 感染者27人に 2020/09/21 神戸新聞:これは一例であり、9/7以降、学校での感染拡大が全国的に急増していることが報道から分かる〉

〈**US coronavirus: More students go back to school as Covid-19 cases rise among children and at colleges 2020/09/08 CNN、Parents send student to school while knowingly infected with coronavirus, mayor says 2020/09/17 CNN〉

◆移動傾向(モビリティ)をみる

 ここでAppleが公開している本邦の移動傾向をみると、5月連休以降一貫して増加していますが、7月の4連休で特異的に減少したもののその後は増加が継続し、9/19-22のシルバ−ウィークに驚くほど激増しています。これは事実に背を向け続けてきた日本政府の責任以外の何物でもありません。

 この移動傾向の増加は、感染拡大の目安となります。ちょうど良い例が、欧州で先行しています。経済再開とバカンスが第二波パンデミックの切っ掛けと指摘されるフランス、スペインと本邦の外食GOTOに類似した外食半額政策*や経済再開を積極的に推奨した英国について移動傾向と新規感染者数の推移をみてゆきます。

〈*外食を50%割引、付加価値税は5%に減税 英財務相が経済刺激策を発表 2020/07/09 BBC〉

 移動傾向が基準点(1/13の値)を超えた時点に注目すると、6月に基準点を超過したフランスとスペインでは7月から第二波が、7月に基準点を超えた英国では8月から第二波が大きく立ち上がっています。

 本邦では、6月に移動傾向が基準点を超えましたが超え方は顕著でなくなだらかに増加した後、7月4連休における移動傾向の落ち込みも目立ち、結果として7月に立ち上がった第二波を8月から収束に向かわせました。移動傾向は8月中旬以降も+20%程度で安定し、9月に入って以降は一貫して増加傾向となりました。そして9月シルバーウィークで移動傾向が鋭く立ち上がっています。シルバーウィーク中に自動車、公共交通機関が基準値の二倍に達し、徒歩も大きく増加したことは特筆すべき事です。

 これは10月初旬から本邦における第三波の立ち上がりの可能性を強く示唆しています。

◆先も足下も後ろも見えにくくする本邦統計の欠陥

 こういった現象が新規感染者数の推移に表れるのは、14日後頃であり、これは10/4が目安となります。但し、これは筆者が8月末から9月第二週の間の本邦統計を精査していて深刻に感じたのですが、本邦統計は、遡及しての上方修正が日常的に行われており、特に速報値発表後2週間は日常的に大幅な上方修正が黙って行われています*。筆者はこれをサイレント修正と呼称しています。従って、速報値は目安にすることすら危ない代物です。パンデミックとの闘いでは統計は地図と羅針盤に相当するもので極めて重要ですが、本邦ではこの統計に大きな欠陥があります。なお、本邦統計が安定するのは発表から2ヶ月後です。それまでは大小のサイレント上方修正が日常的に行われています。

〈*「速報値であるため後日修正される」と断りはあるが、黙って修正して良い程度を超えた上方修正が行われている〉

 この本邦統計の欠陥については、TwitterでMAKIRINTARO(@MAKIRIN1230)氏が根気よく東京都の発表する統計を監視してきた結果発見し、指摘されています。 同氏は、更に独自に東京都統計の修復と更新を毎日行われています。筆者は基本的に本邦の統計はMAKIRINTARO(@MAKIRIN1230)氏により更新されたものと海外機関発表(ジョンホプキンス大学や欧州CDC、ロスアラモス国立研究所など)を採用しています。

 本邦旧帝国を代表に統計が駄目な国または政権は必ず市民を巻き添えにして滅びます。ソ連邦も統計が政治的圧力で崩壊し、国も滅びましたが、原簿は官僚機構によって大切に保全されてきており、グラースノスチ政策後は、本邦ほか海外研究者も加わり直ちに統計復元と評価が行われました*。ロシアでは現在も行われている半世紀以上前に処刑などされた政治犯の名誉回復は、原簿が破壊されていなかった為に可能となっています。本邦は、原簿すら破壊してしまう、原簿の信頼性が低い、原簿を捏造することで際立ち、根本的に異質です。実は80年代末頃、本邦の統計は旧帝国の失敗への反省から世界でも際立って優れたものになったとされてきましたが、僅か30年で旧帝国並みの欠陥統計国家に戻ってしまっています。

〈*ソ連経済と統計 島村史郎編著 1989年8月1日 東洋経済新報社

 いずれにせよシルバーウィークの結果は10月上旬に統計へ表れます。筆者は慎重に監視を続けています。

◆10月の動向は警戒が必要

 ここまで、本邦と欧州の5月以降の実態を比較してきましたが、本邦の実態は、謎々効果と高いマスク着用率、市民の自粛、学校閉鎖以外はほぼノーガードと言う状態で、国や保健当局の姿はそこにありません。これが本邦の世界的に際立った特徴です。

 9月に入り所謂「コロナ疲れ」で市民の努力は効力を失った状態で、それがシルバーウィークの移動傾向に現れています。このコロナ疲れは、籠城ウェルカムの筆者には全く理解できませんが、全世界的に見られる傾向で、市民が批判される筋合いはありません。

 また学校も大学以外は再開しており、世界唯一と言える国策による検査抑制と相まって子供達をウィルスの運び屋としている可能性が強く疑われます。

 移動傾向の推移ほか本邦の統計を見る限り、9月に始まった「秋の波」は、10月になると急激に立ち上がる可能性があり、厳戒を要します。

 今回はこれまでとして、次回は欧州、大洋州と本邦を比較し、更に分析を進めます。そして、パンデミック予測の紹介を始めることとします。

◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ24:統計と予測編2

<文/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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