「吉四六漬け」「やたら漬け」も終売に――廃業・製造中止続く漬物業界、その理由は?

「吉四六漬け」「やたら漬け」も終売に――廃業・製造中止続く漬物業界、その理由は?

吉四六漬

 大分県玖珠町の名産で、九州各地で販売されている野菜のもろみ漬け「吉四六漬(きっちょむづけ)」が、2020年9月末での製造中止・終売を発表。地元住民や観光客から永年親しまれた味を惜しむ声が上がっている。

 実はここ最近、全国各地で老舗漬物店の廃業や漬物の製造中止が相次いでいるという。果たしてその理由とは――。

◆北部九州に根付いた「吉四六漬」も製造中止に

 吉四六漬は1978年に玖珠町農協が製造を開始。商品名は「日本昔ばなし」などで知られる県出身のとんち名人だった庄屋「吉四六さん」から採られたもので、パッケージイラストは大分県出身の漫画家・イラストレーター富永一朗氏が担当した。野菜のもろみ漬けは、北部九州では醸造業が盛んであった豊前地方を中心に以前から食べられていたもので、吉四六漬はこれをアレンジしたものであると考えられる。

 玖珠町農協はのちに合併により玖珠九重農協(JA玖珠九重)となったが、その後も定番だった「胡瓜」「大根」「人参」に加えて、「椎茸」「セロリ」「こんにゃく」など大分県産野菜を中心とした様々なバリエーションを展開することで話題を集め、大分県や福岡県を中心とした九州各地の百貨店やスーパーマーケット、土産品店などで販売されるようになった。

 しかしここ最近は売り上げが減少傾向にあったため、9月末での「製造終了」に踏み切ったという。

◆減塩志向で「消費減」続く漬物業界

 実は、永年親しまれた漬物が製造終了となったのは「吉四六漬」のみではない。

 今年5月には山形市中心部で明治時代に創業した漬物店「丸八やたら漬」が、8月には高知市中心部で戦前から続いた漬物店「中央食料品店」が廃業するなど、こうした動きは全国各地で起きている。

 一般社団法人「食品需給研究センター」(東京都)の推計によると、日本国内の漬物生産量は2000年ごろには約120万トンであったのに対し、ここ数年は70万トン台に激減。こうした漬物の消費減には食の多様化、消費者の高齢化に加えて、「消費者の減塩志向」も大きく関わっているであろう。医療・健康関連のウェブサイトなどでは高血圧を招く一因となる塩分濃度が高い食べ物として「漬物」が挙げられている例は少なくなく、また、漬物の品目別消費量を見ていくと近年でも堅調なのは「浅漬け」「キムチ」など、比較的塩分濃度が低いものが中心となっている。

 一方で、近年の漬物は冷蔵・保存技術の発達により昔に比べて塩分濃度が低いものが多く、そのため漬物を「悪者扱い」するのは早計だといえる。

◆実は「コロナ禍」も打撃になっていた!

 さらに、今年に入って漬物業界に大きな打撃を与えているのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。

 漬物は長期保存が利くため「土産品」や「贈答品」としての需要も大きい。北海道の「松前漬け」、長野の「野沢菜漬け」、京都の「しば漬け」「千枚漬け」、九州の「高菜漬け」など「土産物の定番となっている有名な漬物」は全国各地に数多くあり、これらを観光の際に買って帰った経験がある人も多いだろう。

 実際に、先述した山形市の「丸八やたら漬」は、コロナ禍によって観光客による土産品需要が激減したことも廃業の一因であるとしている。大分県の「吉四六漬」も大分土産の定番の1つとなっていたため、製造中止を決めた背景にはコロナ禍による観光客の減少も影響していると思われる。

 「減塩志向」のなか、コロナ禍による「土産品需要の激減」で窮地に立たされる漬物業界。

 今後もコロナ禍による観光客の減少に歯止めがかからなければ、こうした「観光客から人気を集めてきた有名な漬物」の終売が続くことになろう。

 もし地元に「有名な漬物」があるならば、これを機に観光客になった気分で購入して味わってみてはどうだろうか。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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