新型コロナ休業支援金申請で雇用企業による悪質な受給妨害が横行。企業側協力なしでも支給決定せよ

新型コロナ休業支援金申請で雇用企業による悪質な受給妨害が横行。企業側協力なしでも支給決定せよ

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◆勤務先が協力してくれず休業支援金を申請できない

 「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(以下「休業支援金」)の申請に企業が協力してくれないというケースが続発している。

 休業支援金は、企業から休業手当をもらうことができない労働者が国に申請することで、休業期間中の給与補償として、休業前賃金の8割を国から直接受け取ることができるという制度である。

 休業支援金を申請する際には「支給要件確認書」を提出するが、ここには「事業主記入欄」がある。事業主記入欄では、労働者が休業支援金を申請している期間に「事業主が休業を命じたかどうか」などといった点について事業主の認識を記入するが、この事業主記入欄への記入を拒む、また記入をしても休業を認めないという企業が少なくない。筆者が事務局次長を務める首都圏青年ユニオンにはそうした企業で働く労働者たちから多数の相談が寄せられているのである。

 これまで厚生労働省は「事業主が命じた休業である」ことを事業主が認めない場合の休業支援金支給決定は困難であるとしていた。しかし最近やや論調が変わっており、事業主が休業を認めないにもかかわらず支給決定がされるケースが出てきている。事業主が休業を認めないケースにおいても支給決定をするという運用を、広く行っていくことを厚生労働省や労働局には求めたい。

◆アルバイトの休業支援金受給を困難にする株式会社プラチナスタイル

 首都圏青年ユニオンの交渉事例を紹介しよう。

 

 株式会社プラチナスタイルは、結婚式の二次会や企業パーティの会場の貸し出し、ビュッフェの調理・給仕などを行う企業である。新型コロナウイルスの影響でパーティ・二次会の予約がなくなり、そこで働くアルバイトは2020年3月初頭から現在まで一切シフトに入れなくなった。

 アルバイトらは休業手当も一切支払われなかったため、休業支援金申請のための協力を事業主に求めた。パーティや二次会の予約がなくなり企業が大きなダメージを受けていたことを認識していたアルバイトだったが、休業支援金ならば企業に迷惑をかけることはないため協力してもらえるだろうと思っていたという。しかし、同社は、「シフトが出ていない期間については休業支援金の対象にならない」との認識のもと、休業支援金申請への協力を拒否した。

 その後アルバイトたちは首都圏青年ユニオンに加入し、改めて休業支援金申請への協力を求めた。その結果同社は、事業主記入欄への記入を行うことに同意しつつも、「事業主が命じて(…)休業させましたか」という項目について「いいえ」と回答しており、休業を認めないという立場を変えていない。

 なお、同社は、9月14日に開催された首都圏青年ユニオンとの団体交渉では「2020年4月以降もシフトはなかったが、雇用契約は継続している」という認識を前提にしていたにもかかわらず、後日作成された事業主記入欄では、休業支援金の申請がされている期間(今回の申請は2020年4月から6月末までについて行った)に「申請を行う労働者を(…)雇用していましたか」という項目に「いいえ」と回答した。休業支援金が申請されている期間について、休業を認めないばかりでなく、雇用契約の存在そのものを否定したのである。

 アルバイト側は、解雇や雇止めの通知は一切受けておらず、また日雇い契約だという説明も一切されていない。そもそも9月14日の時点では雇用契約が継続しているという認識だったのである。休業支援金は雇用契約がなければ受給できない。同社は、休業を認めないばかりか雇用契約の存在さえ否定することで、アルバイトの休業支援金受給を著しく困難にしているといえよう。

◆相次ぐ休業支援金申請への協力拒否

 雇用契約の存在そのものを否定するケースはそれほどないにせよ、会社が事業主記入欄への記入を拒否する、もしくは記入はしても休業を認めないという事例は少なくない。

 企業には金銭的な負担が発生しないにもかかわらず、なぜ休業支援金申請の協力を拒むのだろうか。

 その最大の理由は、「事業主の命じた休業である」ことを認めることで、休業手当を支払う義務があると認めてしまうことになるかもしれないと危惧しているということだ。

 法的には経営者の都合による休業には、企業が休業手当を支払わなければならないとされている。企業は「事業主が命じた休業である」ことを認めてしまうことで、休業手当を支払う義務があると認めてしまうことになり、ひいては違法な休業手当未払いを自ら認めてしまうことになる。それを恐れて、休業支援金申請において休業を認めないのである。

 休業支援金制度は、雇用調整助成金制度の拡充をしてもなお、休業手当の支払い能力がない・支払いたくない企業が多数存在することから、企業の支払い能力や支払い意志に関わらず労働者を救済するために設立された制度である。

 制度上は法的な休業手当支払い義務と休業支援金の対象になる休業かどうかは関係がないとしているが、とはいえ、休業手当の支払い能力がない・支払い意志がない企業が、「事業主が命じた休業である」ことを認めることに消極的になるのは、想定されうる事態であろう。休業手当の支払い能力や支払い意志のない企業で働く労働者を救済するという休業支援金の制度趣旨からすれば、事業主が休業を認めない場合にも、支給決定を積極的に行っていくべきであろう。

◆事業主が休業を認めない場合でも支給決定をすべき

 首都圏青年ユニオンも参加した9月17日の厚生労働省へのヒアリングでは、「事業主が休業を認めない限り休業支援金の支給決定はされないのか」との質問に対して、厚生労働省から「最終的な支給決定の権限は労働局にあり、労働局が個別のケースごとに判断する」との回答があった。「事業主が休業を認めない場合の支給決定の基準は何か」との質問に対しては「個別のケースごとに判断する」という回答を繰り返すばかりで支給判断の基準の不在をうかがわせるが、しかし事業主が休業を認めない場合でも休業支援金の支給決定がされる場合があり得ることを認めたことは重要である。数か月前に行ったヒアリングとは明らかに論調が変化している。

 また実際に、会社が休業を認めないにもかかわらず、休業支援金の支給決定がなされた画期的な事例も出てきた。

 飲食店のアルバイトであるCさんは、2020年4月以降、新型コロナウイルスの影響を受けてシフトが0となっていたため、休業支援金申請への協力を企業に求めたところ、企業は、「シフトが出ていない期間については休業支援金の対象にならない」として休業支援金申請への協力を拒否した。Cさんは企業からの協力がないまま休業支援金申請を行い、その後労働局による審査が始まった。労働局による審査においても、会社は一貫して休業を認めることを拒否し続けたが、労働局の担当者によると、Cさんが働いていた店舗の店長へのヒアリングで休業であることを確認できたため支給決定をしたという。会社が「事業主の命じた休業である」ことを否認し続ける中でも支給決定がされた事例として、非常に画期的である。

 労働局の担当職員は、事業主が休業を認めない場合の支給決定は「例外的だ」と言っていたというが、こうした運用を「例外」とするのではなく、通常の運用とし、休業による給与の減少に苦しむ労働者を広く救済することを求めたい。

<文/栗原耕平>

【栗原耕平】

1995年8月15日生まれ。2000年に結成された労働組合、首都圏青年ユニオンの事務局次長として労働問題に取り組んでいる。

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