モーレツ型エリートだけでは成長は失速する。壁にぶち当たった急成長ベンチャーが陥っていた人事の盲点

モーレツ型エリートだけでは成長は失速する。壁にぶち当たった急成長ベンチャーが陥っていた人事の盲点

photo via Pexels

 ベンチャーから急成長したIT企業T社から相談を受けた。中小・中堅企業が多い取引先を、大企業にも広げていくためにさまざまな取り組みをしているのだが、なかなか前に進まないというのだ。

◆大企業に取引先が広がらない原因とは

 筆者が営業部長20人と演習していて興味深いことがわかった。目標達成すること、自律裁量で取り組むこと、地位権限を高めたり広げることでモチベーションを高める「牽引志向」の人の割合が、実に80%に上っていたのだ。他者協調や安定保障や公私調和に意欲を高める「調和志向」の人はわずか20%にとどまっていた。

 日本のビジネスパーソンのモチベーションファクター(意欲を高める要素)は牽引志向51.4%、調和志向48.6%と半々なので、牽引志向8割というのは、相当に高い割合だ。同社では取引先を拡充し、業績伸展をさらに加速させるために、牽引志向の高い人を営業部長にしているという話だった。

 目標達成で意欲が高まるなど、牽引志向の高い人に営業活動を担ってもらうことは、一見すると業績伸展に直結しそうだ。しかし、私にはそのことが取引先拡充、ひいては業績伸展に掉さしているように思えてならなかった。

◆業績伸展を担うのはどんな人物?

 業績伸展の担い手は、目標達成の人だけだろうか。業績伸展の担い手は、どのモチベーションファクターの人だろうか。このように質問すると、目標達成のモチベーションファクターの人だという答えが返ってくる。

 しかし、私はこの考え方が間違いで、だから取引先拡充ができないのだと言いたい。

 公私調和のモチベーションファクターの人は、公私に限らず、さまざまな仕事のバランスをとることでモチベーションを上げる。さまざまな仕事の調整をすることも、業績伸展に役に立つ。

 安定保障の人がリスクを回避したり、安定的にプロセスを進捗させることも業績伸展に必要だ。他者協調の人がチームで連携することも、もちろん役に立つ。

 一方、周囲と連携しないで、独自のアイデアで取り組むことでモチベーションを上げる自律裁量の人の創意工夫も、業績向上に必要だ。地位権限をはげみにして業績向上に取り組む人も、目標の進捗状況を把握しながら取り組む目標達成の人も、もちろん業績伸展に貢献する。

◆モチベーションファクターはバランスが肝心

 つまり、目標達成の人だけでなく、どのモチベーションファクターの人であっても業績伸展に貢献するのだ。

 そして問題は、一般的に同じモチベーションファクターの人同士は気心が知れやすく、コミュニケーションがしやすいということだ。言い換えれば、モチベーションファクターが異なると、特に牽引志向と調和志向で異なると、話が噛み合わないことが多くなる。「波長がすれている」「ケミストリーが生まれない」と言われるが、つきつめればモチベーションファクターの不一致が問題なのだ。

 日本のビジネスパーソンは牽引志向と調和志向と半々だ。ベンチャー企業はT社のように牽引志向が強い人が多く、業種にもよるが企業規模が大きくなるにつれて、調和志向の割合が高まる。

 業績伸展のために良かれと思って牽引志向の人を集めて営業組織を構築してきたが、T社の場合は結果的にはそれがあだになって、調和志向の割合が大きい大企業ととの取引拡充が思うように進まず、結果として業績伸展ができなかったのだ。持続的成長を遂げている企業のモチベーションファクターは、牽引志向と調和志向のバランスがとれているのだ。

 牽引志向が高すぎると思ったら、同じ資質・能力の人であれば、調和志向の人を採用することもひとつの方法だ。牽引志向の人が、自分とは異なるモチベーションファクターの人を巻き込むための異なるモチベーションファクターをつなぐブリッジを設定して、動機づけやプロセス設定をする方法もある。

 メンバーも顧客も価値観が多様化する今日、多様なモチベーションファクターに対応できる体制を整えておくことが取引先拡充、ひいては業績伸展に不可欠なのだ。 

◆異なるタイプをどう効果的に組み合わせるか

 質問:ビジネスに貢献するのは目標達成の人か

 モチベーションファクターの2志向・6要素のうち、業績を上げ、ビジネス伸展に最も貢献するのはどのモチベーションファクターの人でしょうか? 牽引志向で目標達成の要素を持った人でしょうか?

 回答:いずれのモチベーションファクターの人もビジネスに貢献する

 モチベーションファクターの違いは、良し悪しを示すものではありません。例えば、業績を上げることを考えた場合でも、以下のとおり、モチベーションファクターの6要素のいずれを発揮しても、業績を上げることができるのです。業績を上げるために、人それぞれが持つモチベーションファクターをどう高めるかという観点で活用していくことをお勧めします。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第209回】

<取材・文/山口博>

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

関連記事(外部サイト)