停電になっても安心。誰でも簡単にできる「オフグリッド」で、電力会社から自立しよう!

停電になっても安心。誰でも簡単にできる「オフグリッド」で、電力会社から自立しよう!

70Wのパネルを庭に置き、ポータブル電源に充電

◆電気が止まると、何もできなくなる現代の生活

 台風が心配な季節である。年々大型化し、集中豪雨になり、強風になり、洪水や土砂災害の範囲が増し、人的被害が拡大してきた。温暖化の進み具合が加速度を増している証だ。俺が住む千葉県も去年の台風15号から続く複数の台風で大きなダメージを受けた。2週間以上、電気が止まっていた近所もある。

 電気が止まると、照明がつかず、夜は真っ暗。

 電気が止まると、井戸の家はポンプが動かず水が使えない。

 電気が止まると、給湯器が始動せず、温かいシャワーは出ないし、お風呂も入れない。

 電気が止まると、冷蔵庫が使えず、食べ物が傷む。

 電気が止まると、クーラーも暖房も使えない。

 電気が止まると、オール家電の家は調理もできない。

 電気が止まると、スマホや携帯電話の充電ができない。

 電気が止まると、テレビが見られない、ラジオも聞けない。

 電気が止まると、パソコンが使えない。

 電気が止まると、ルーターやWi-Fiも使えない。

 

 要は、電気がなければ衣食住の「衣」以外のすべてを失う。これは非常に危険だ。いのちを電力システムに預け過ぎてしまっている。裏返せば、人が生きる術のすべてを電力システムに人質にとられているわけだ。

 頭で分かっていても、実際に経験しないとわからないことがある。俺は他の方より災害被害者や弱者の立場からものを考えてきたつもりだが、去年の大型台風で少しだけ当事者になったことで身に染みることが多々あった。

◆発電と農業を両立させる「ソーラーシェアリング」

 そこで台風シーズンが到来する前に、少しだけでも電気の独立をしなければ……と考えていた。そんな折、電話が鳴った。俺が住んでいる千葉県匝瑳市でソーラーシェリングによる発電事業を行っている「市民エネルギーちば」代表・東光弘さんからだ。

 ソーラーシェアリングとは、発電と農業を両立させるシステムだ。農地の上の高いところに、隙間をあけて細長い太陽光パネルを設置する。たくさんの隙間から農地に太陽の光が届くので、作物が育つ。影ができることによって収穫が減るとも限らず、増える場合もある。これは、農業を中心とした地方再生の雛形になりつつあって、日本だけでなく世界に先立つソーラーシェアリングの最先端が、匝瑳で展開されているのだ。

 売電の利益を地域の課題解決に使う仕組みも確立してきた。ソーラーシェアリング事業のもう一人の代表・椿茂雄さんが村つくり協議会を設立し、俺も僭越ながら関わらせてもらっている。

 ソーラーシェアリングの利益を「村つくり基金」として、荒れた竹林の整備、買い物難民の解決、保育園のサポート、空き家と移住希望者のマッチングなど、迎えつつある地域課題に取り組んでいく。

 その1つとして、災害停電時に地域の方々への電力供給もできるようになった。災害で送電網が寸断して停電になった時には、太陽光パネルで発電した電気がムダになる。であるならば、地域の方々に電気を無料開放して、スマホ充電や炊飯器でご飯を炊けるようにするなど、生活基盤が保たれるようにする仕組みだ。匝瑳市とも先月はじめに提携を始めた。これは電気の地域自立への一歩になるだろう。

◆資源戦争や、電力業界から自由になれる「オフグリッド」

 さて、話を戻そう。東さんが電話でこう話してくれた。「ソーラーシェアリング で使っていたB級品の太陽光パネルが大量に出たから、家庭で簡単に電気を発電できるワークショップをしないか?」と。

 ありがたいご提案に、迷う必要は皆無だ。もちろん二つ返事で「ぜひやりましょう」と返答した。 地域で電気の自立を目指すだけでなく、個々の家も電気で自立していく。災害時だけでなく、普段から自宅で電気を作り、自家消費する。それはこれからの未来に進んでいく雛形になるはずだ。しかも高額な出費をせずにできる仕組みとして!

「オフグリッド」という言葉が世界で広がりつつある。オフグリッドとは、電力会社の送電網につながっていない状態、あるいは電力会社に頼らずに電力を自給自足している状態のことを言う。

 電気がなければ、経済も事業も暮らしも動かない。だから世界の人々は電力業界やエネルギー資源業界に牛耳られてきたと言っても過言ではない。

 例えば、石油資源などがあるところは必ず戦争紛争がある。中東の戦争の歴史を見れば、その裏に石油資源獲得が絡んでいることは明白だ。エネルギーのために人々のいのちが犠牲にされてきた事実。政治ですらも、そのピラミッド縦型従属構造の中に組み込まれている。

 再生可能エネルギー普及を目指してきた俺たちを牽引してきた言葉がある。「石油による戦争から、太陽による平和へ」。そう、巨大化したピラミッド縦型従属構造から自由になれるのが、オフグリッドなのだ。

◆石油も石炭も原子力も使わない、大企業にも権力者にもつながらない、自立した電力

 ということで、東さんからのご提案のお陰で、台風到来前の8月のはじめに実現した「普段時も災害時も、いちばん近道のオフグリッド」と題したワークショップには、35組が参加してくださった。

 少々劣化した70ワット太陽光パネル2〜3枚を参加者に配り、コードなどの接続部を自分で作る。参加者が自己負担で購入したポータブル電源(アウトドアなどで使う人が多い)に繋いでもらえば、それだけで電気を発電し、自宅で使えるというわけだ。

 ポータブル電源にはAC(普通のコンセント)出力やDC出力(自動車のシガーソケットと同じ)とUSBの出力端子があり、難しいことはない。家電との接続は普段と同じ、ただ差すだけだ。

https://youtu.be/wAsbL4JE43E

 我が家では、4万円くらいのポータブル電源を購入。2枚のパネルを南向きに並べてポータブル電源に繋ぐと、夏の晴れた日なら1日から1日半で充電容量いっぱいになる。そのポータブル電源を使いたい部屋に持っていき(重さは5kg程度で、女性でも片手で持てる)、照明・スマホ充電・ノートパソコン電源・扇風機などに使う。

 使用度合にもよるが、これで4日〜1週間は持つ。2つのポータブル電源があれば、1台を使っている間にもう1台を充電できるので、切れ目なく使える。もちろん、太陽光パネルからコードを家内に引き込んで常時繋いでおいてもよい。

 使ってみて初めてわかることがある。家電製品も照明も、壁のコンセントや天井の配線から電気をつないでいたのに、ポータブル電源はどこにもつながっていない。壁のコンセント近くに家電製品を置く必要がない。家電製品の近くにポータブル電源を運べばいいわけである。

 これは一種の意識革命だ。さらには、壁のコンセントや配線から独立しているということは、電線や電力会社ともつながっていないことになる。

 今ここで使っている電気は、中東から運ばれてくる石油や、温暖化にいちばん寄与してしまう石炭や、危険極まりない原子力で作った電気ではない。国や地域や身分や収入や権利に関係なく、地球上どこでも誰のもとにも降り注ぐ太陽の光から作られていることに、驚きと喜びがジワーッとこみ上げてくる。

 大企業にも権力者にも、どこにもつながれていない。自立しているのだ。それすなわち、フリーダム! 誰にも依存せず、しいては誰にも従ったり屈したりする必要がないのだ。まさにこれは革命だ!

◆台風で停電しても、冷蔵庫もお風呂も使えた!

 災害時に困るのは、シャワーを浴びたりお風呂に入れなかったりすること。生死には直接関わらないが、精神的になかなかキツい。実際、去年の台風で体感したことだ。

 さて、このポータブル電源でお風呂のお湯を出すことは可能なのか? ドキドキしながら給湯器のコンセントをポータブル電源に繋いで、お湯の栓を回した。すると……蛇口から出る水が徐々に熱を伴ってくる、見事に熱いお湯が出たじゃんか! 嬉しい、嬉しい。これで停電になっても何も困らないんだ。仲間や近所の方にも使ってもらえる!!!

 さらにはポータブル冷蔵庫も購入してみた(1万円くらい)。25リットル収容できるので、500mlペットボトルが20本分入る。保温もできるので麹や甘酒や納豆も作れる。暑い時期の災害時、寒い時期の災害時、これで少しは快適さが保てるし、食糧保存に有効だ。

 匝瑳市に移住してきた内山隼人さんは、ダンスユニットとして活躍してきたワールドオーダーの一員だ。その内山さんも先のワークショップに参加したのち、オフグリッド生活に進化した。容量の大きなポータブル電源を購入し、井戸水ポンプや洗濯機も動かす。彼が Facebook にこう書いている。

「このワークショップをきっかけにわが家も急速にソーラー発電が始まり、電灯、スマホやパソコンの充電、扇風機、井戸水ポンプ、洗濯機、給湯器、充電式の電動工具が使用できます。非常時の為と思ってポータブル電源を購入しましたが、普段時もかなり使っています。

 東日本大震災の後からやりたいと思っていたオフグリッドにはまだ足りないけれど、降り注ぐ太陽のエネギーで電気を賄うというのは、とても楽しいし、気持ちがいいです。この自然エネルギーを使わないなんて、もったいない!

 止まらない環境破壊を止めるためには、まずは自分のライフスタイルを変える必要があるという思いもあって、田舎に引っ越しました。原発のない世界を自分の生活からつくっていく」

◆オフグリッドは、都会と田舎の立場を逆転する

 同じワークショップに参加しても、都心から来た人だと存分に活かせないという。太陽光パネルを置く場所がないからだ。特にマンションやアパートでは、小さなベランダがあるだけだ。太陽光そのものが建物に阻まれて存分に届かない場合もある。田舎は高い建物が少ない分、日照が十分に担保されている。

 俺が住む匝瑳市は、海から平野部が広がり、内陸部もせいぜい50〜100m未満の丘陵であり、3階以上の建物はほぼないので、空が広くて開放的で日照率も極めて高く、日照時間も長いのだ。

 コロナ禍のこの数か月で東京都への流入人口が減り、とうとう流出人数のほうが多くなった。大阪でも、移住志向の人が急増しているというデータも出ていた。「都市を田舎にする」という俺の夢に、世の中が動き出した。地方分散へ、自立型分散へ、オフグリッドへ。時代を変えていく一人になろう。

【たまTSUKI物語 第28回】

<文/坂勝>

【坂勝】

30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。

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