「セクシー」発言の“元ネタ”フィゲーレス氏、小泉進次郎環境大臣を一刀両断

「セクシー」発言の“元ネタ”フィゲーレス氏、小泉進次郎環境大臣を一刀両断

2020年1月21日の閣議後記者会見で、石炭火力発電反対を表明したはずの小泉進次郎環境大臣だが……(写真/横田一)

◆「セクシー」発言は、言葉尻だけが利用されてしまった

 元国連気候変動枠組条約締結国会議(UNFCCC)事務局長のクリスティアーナ・フィゲーレス氏がインタビューに答え、菅政権でも留任となった小泉進次郎環境大臣を痛烈に批判した。

 フィゲーレス氏は、7月18日に収録されたオンラインインタビュー(主催:緑の党グリーンズジャパン)で、環境NGOのメンバーや大学生などの質問に対し、約1時間にわたって返答。「新たな石炭施設を増やす余地は、もはや地球上にはどこにもない」と、小泉大臣のお膝元・横須賀で進む石炭火力発電所の建設に異議を唱えた。

 小泉大臣といえば、記者の質問に対する答えがしばしば“ポエム的”なことで注目されている。中でもグローバルな規模で注目されたのが、2019年10月の「セクシー発言」だ。

 国連気候行動サミット時の記者会見で「気候変動のようなスケールの大きい問題に対しては、楽しくクールで、セクシーであるべきだ」と述べたニュースは、瞬く間に世界中に配信され、話題となった。

 この時、「セクシー」と口にしながら小泉大臣が振り向きつつ同意を求めたのが、臨席していたフィゲーレス氏だった。というのが、そもそも気候危機との闘いにおける議論の文脈に「セクシー」という言葉を持ち込んだのが、フィゲーレス氏その人だったからだ。

 筆者は、上述のインタビューイベントでフィゲーレス氏と直接話をする機会を得たので、この時の経緯について聞いてみた。彼女は、「私は記者会見の場にいただけですよ」とやや困惑気味に答えた。言葉尻だけが利用され、文脈がすっ飛ばされていたからだ。

◆小泉大臣の気候危機に対する態度はまったく「セクシー」ではない

 フィゲーレス氏のいう「セクシー」とは、自身が提唱する「グローバル・オプティミズム(世界的楽観主義)」を構成する一要因である。

 現在、人類は大変な危機に直面している。にもかかわらず世界は分裂し、共通の目標に合意できない。または野心的な目標を掲げ、大胆に行動しようとしない。このような悲観論に直面した彼女自身がそれを覆すため、国際組織の長として提唱した組織的意識改革論が「グローバル・オプティミズム」だ。

 これは、単純に「若い世代も楽しんで参加できるような行動様式」などといった表層的な話ではない。むしろ、気候危機に対し断固たる決意を示し、「できない」という悲観論を一掃して、行動する組織や人を生み出す変革の態度のことだ。

 その決意が、現実に持続可能な技術の革新を促進し、経済や投資のシフトを生み、発展途上地域のエネルギーに対するアクセスを容易にした。

 それによって、より多くの人が持続可能なエネルギーや気候危機問題に関わるようになり、議論に消極的だった各国政府もついに重い腰を上げて、不可能だと言われたパリ協定が締結へと導かれたのである。(出典:TED)

「セクシー」は、あくまでそのような文脈を構成する一要素である。小泉大臣は、気候危機に真正面から立ち向かい、さまざまな組織内外の抵抗や、メディアからの意地悪な質問に対して、断固たる決意を示したことがあっただろうか。

「セクシー」発言が飛び出した記者会見時、石炭火力発電所について問われた小泉大臣は、一言「減らす」とだけ返答した。記者から「どのように?」と問われても、答えることができなかった。

 それどころか、小泉大臣のお膝元である横須賀では、石炭火力発電所が建設されているのである。まったくもってセクシーではない話ではないか。

◆「もはや新たに石炭を使う余地は地球上のどこにも残されていない」

 大学生など主に若年層で構成されるフライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)横須賀のメンバーから、横須賀の石炭火力発電所建設問題に関して質問されたフィゲーレス氏は、「新たな石炭火力発電所は、もう地球上に“ノー・モア・スペース”だ。余地がないものはない」とバッサリ。洋上風力など、代替電源を追求すべきだとした。

「日本の石炭燃焼技術は世界一高効率だと聞きました。なるほど、確かにそうかもしれません。でも結局は石炭じゃないですか! いいですか、大事なことだから繰り返します。国連事務総長もおっしゃっています。”No more new coal”(新たな石炭はダメだ)と。

 これ以上石炭火力発電所を作るということは、終わりなきインフラ破壊の未来に突き進むという意味であり、経済は回復不可能になるでしょう」(フィゲーレス氏インタビュー発言より抜粋)

◆「いま石炭に投資するのは、アスベストに投資するようなもの」

 さらには、日本政府の取り組みに対して「世界は落胆している」と評価。「CO2削減目標も低いままだし、自国内のエネルギー開発にあまりにも不熱心。その気になれば低炭素化できるさまざまなテクノロジーを持っているにもかかわらず、その分野で世界をリードすることもない。理解に苦しむ」とフィゲーレス氏は首を捻る。

 加えて、日本の海外に対する石炭火力発電所の輸出や投資についても批判した。新たに石炭を地上に掘り出して燃焼させることによる気候への影響だけでなく、これ以上の石炭開発は座礁資産化につながる危険性も指摘。「いま石炭に投資するのは、アスベストに投資するようなものだ」と斬って捨てた。

 最後に彼女は、「日本人はどこにいるんですか?」と、国際社会におけるプレゼンスのなさを一言で指摘した。これが、国連気候行動サミットをともにしたはずの、フィゲーレス氏の小泉大臣に対する率直な評価だ。

 当の小泉大臣は、フィゲーレス氏の「石炭にはノー・モア・スペースだ」という言葉をどう受け取るだろうか。今度は「セクシー」のように、言葉尻だけ借用するわけにはいかない。

<文・写真/足立力也>

【足立力也】

コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家〜軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略〜』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1〜2回)では企画から通訳、ガイドも務める。

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