経験人数300人の「ヤリチン」となった元非モテ男性が、今幸せでない理由

経験人数300人の「ヤリチン」となった元非モテ男性が、今幸せでない理由

元非モテ男性「女遊び」語る

経験人数300人の「ヤリチン」となった元非モテ男性が、今幸せでない理由

江田直人さん(仮名)

 多くの男性は、漠然と「モテたい」と思っているだろう。より多くの女性に好かれ、できれば好きに女を抱きたい、と。

 なぜ、人は「モテたい」と願うのか。より多くの女性と身体を重ねることは、真に幸せの一つの形と言えるのだろうか。その生き証人となる人物がいる。

◆「非モテだった自分」への反発で、出会い系に目覚めた青春時代

 社会人になってからマッチングアプリに目覚め、現在では延べ500人以上とデートをし、経験人数も300人を越えているという江田直人さん(仮名・27歳)。彼はなぜ、それほどまでに「女遊び」に時間を投下することになったのだろうか。

「高校までは静岡の田舎で過ごしました。最初は、閉塞感の強い田舎への反発のようなものだったと思います。田舎でモテヒエラルキーの頂点に立っていたのは、スポーツのできる筋肉バカか、ヤンキー気質のチンピラタイプです。地味で真面目だった僕は高校生になっても全くモテず、性への強い関心から、17歳の時mixiで出会った初対面の女性で童貞を捨てました。

 ただただ、ヤりたくて仕方なかったんです。その後もSNSで同年代の女性を呼び出してはセックスしたけれど、普通の女のコは僕になんて振り向いてくれなくて、寂しそうなバンギャばかり狙って声をかけました。高校生ですでに性に対する倫理感は狂ってしまったけれど、非モテマインドはズルズル引きずっていました。それが今僕が、経験人数を増やしすぎてしまっていることの原体験だったと思います」

◆東京に出れない閉塞感とモテない腹いせのミソジニー

 田舎は都会と比べると遊び場も少なく、東京の高校生よりも田舎の高校生の方が経験が早いというのはよく聞く話だ。しかしそこまでこじらせてしまうものだろうか。

「家庭環境の複雑さのようなものもあったかもしれません。家は厳しく、大学も田舎の国公立を目指しました。華やかな都会に憧れを持ちつつも、それを許されない環境への反発もあったと思います。結局田舎の大学でも非モテをこじらせ、SNSもや出会い系アプリを使って、経験人数を増やし続けました。

 あの頃は、いわゆるミソジニーに近かったと思います。自分がモテないことの腹いせみたいに、性行為を主体的に行うことで女性を見下していました。自分の魅力に誰も気づいてくれないことが苦しかった」

 SNSで出会う、性格も知らない初対面の女性を抱いても、本当の意味で誰かに愛されることにはならない。早い段階でそれに気づきながらも、性欲と女性嫌悪に身を任せてしまっていたという。

「社会人になり、やっと東京で働くことができるようになった時、僕の性欲はさらに爆発しました。田舎の頃は車で最高5〜6時間もかけてセックスしに行っていたのが、東京では電車で数十分で済む。その頃にはマッチングアプリも徐々に浸透してきていて『あんなに大変だったセックスが簡単にできる!』と一気に経験人数を増やしていってしまいました」

◆女遊びの先に、幸せは…なかった

 上京して5年、300人もの女性と性交渉を持つに至った江田さん。「好きに女を抱ける」というのは男性なら一度は夢見ることかもしれないが……それでも、彼はまだ幸せを感じることができない、と苦笑いした。

「マッチングアプリで多くの女性に出会って、女性から好かれるコツや、ヤれる空気の作り方は上手くなりました。でも……ネット出会いの楽しさの上限はもう知ってしまったし、それでは満足できなかったんです。ネットで際限なく出会っているうちはずっと『もっといいコがいるんじゃないか』と上ばかり見てしまう。けれど、自分で手に届くギリギリ限界の女性はもう抱いてしまっていて、しかもそいういう女性たちをたくさん逃してしまっていた、と気づいた今ではもうあとの祭りです。

 今になって振り返ってみるといいコだったコ、可愛かったコ。ネットで次から次へと出会っているうちは本命にしようと思えなかったけれど、自分のレベルでは自分が本当にかわいいと思うコとは付き合えないことも分かった。頭打ちを知ってしまったんです」

 経験人数が300人を越えて、江田さんは今「ヤリチンな自分に疲れてしまった」と語る。傍目に見ても、300人もの女性を抱いてもまだ刺激を求めてしまう様子は、例えばドラッグ中毒に近いような状態に見える。刺激を追い求める暮らしは、体力も時間も金も消耗する。

「もうこれ以上やっても、同じことの繰り返しなんです。『めっちゃ美人だな』と思うコを、その日落として一発抱く。この瞬間が一番気持ちいいけど、ただそれだけ。今は、もう落ち着きたい、次のステップに行って結婚したいなとも思っているんですが……女遊びを辞めるのにも禁煙と同じように禁断症状のようなものがあって、少しづつ頻度を減らしていくしかないな、という感じです。

 なので今は、仕事を頑張ってみています。年収は少しづつ上がっていて今800万円ほどですが、年収が上がっても、抱ける女のレベルも付き合えそうな女性のレベルも、正直あまり変わらないなという実感です」

◆人をどうやって好きになるか分からなくなった

 結婚できる相手を見つけたくても、長年の女遊びによる理想の高さが邪魔をし、なかなか女性を好きになることができなくなってしまったという。女性に対してどう振る舞えばモテるかは分かっていて、自分が女性を楽しませることはできても、自分が楽しいと思える人はいない。「竿モテ」の蟻地獄のような場所に、江田さんはハマってしまっていた。

「今は漠然と、不特定多数にモテたいとは思わないようになりました。コロナの自粛期間のせいもあったかもしれませんね。一人の時間が増えて、寂しくて適当な女性を召喚したりしていたけれど、やっぱり心の余白は適当な女じゃ埋まらなかった。

 有り余る時間の中で自分の人生と向き合ってみた時に、自分より大切と思える人に出会いたいなと思ったんです。したい仕事をして、お金も困らない程度あって、フリーだから好きに女遊びをして……一人の生活は満ち足りているのに、それでも物足りない感覚があって。それは大切な人がいないからかも、と思うんです。

 週末ごとに女性と会っていると、女性のダメな部分もたくさん知るんですよ。ドタキャンなんてザラだし、思わせぶりされて振られることもあるけど、感覚が麻痺していて『まあこんなもんか』と思ってしまう。どんどん人に期待しなくなっていくうちに、人をどうやって好きになるかも分からなくなってしまった」

 有り余る女を抱けたとしても、結局自分が満足できなければ幸せとは言えない。セックスばかりを幾夜こなしても、彼は結局自分の魅力を女性に発見してもらえていないのだ。

 その寂しさが、彼の思春期の「非モテマインド」を引きずらせてしまっているようだった。女で遊んでいるようで、自分で上手くコントロールできていない人生。これが「モテ」に捕らわれた男の末路なのである。

<取材・文/ミクニシオリ>

【ミクニシオリ】

1992年生まれ・フリーライター。週刊誌などにアングラな性情報、最新出会い事情など寄稿。逆ナンや港区合コンの現場にも乗り込み、恋愛経験を活かしてtwitterで恋愛相談にも回答。カルチャーにも素養がある生粋のサブカル女子。Twitter:ライタ〜ミクニシオリ

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