サッカー長友選手が呼びかけた「ひとり親をみんなで支えよう」。ライター講座が2日で満席に

サッカー長友選手が呼びかけた「ひとり親をみんなで支えよう」。ライター講座が2日で満席に

画像はイメージ(adobe stock)

◆「ひとり親向けライター育成講座」が2日で満席に

 約半数が貧困と言われるひとり親世帯。新型コロナウイルスによる収入減や失業によって、生活がより苦しくなってしまうケースがある。

 ひとり親の就業を支援する公的なサポートはあるものの、利用率は1割ほどと低い。様々な給付金が用意されているが、現物支給に止まり、継続した就業機会創出に寄与しているとは言いがたい。

 そんな中、オンライン・在宅で学びながら、ひとり親がスキルアップできる機会を設ける取り組みが、今年9月15日〜10月14日まで行われた。

 プロジェクト名は、「ひとり親向けライター育成プログラム」。オンラインで1ヶ月の講座を受講し、WEBライターとして仕事ができるようになってもらうことが目的だ。18歳未満の児童を養育しているひとり親やひとり親に準ずると運営側が判断した人が受講できる。

 同プログラムは認定NPO法人フローレンスとクラウドソーシング大手のクラウドワークスが協働で進める。クラウドワークスがカリキュラムの進行を担当し、フローレンスが企画・事務局を担う。

 受講人数は60名限定だが、募集開始後2日ほどで満席となる人気ぶりだった。

◆「親子で1日1食」厳しい経済状態

 「ひとり親向けライター育成プログラム」は、自らもひとり親世帯で育ったサッカー日本代表の長友佑都選手が始めたクラウドファンディング企画「#ひとり親をみんなで支えよう」の一環として実施。クラウドファンディングで集まったお金を原資としている。

 ここでひとり親が置かれる状況を見てみよう。2019年度の「国民生活基礎調査」によると、ひとり親世帯の平均年収は約231万円。これは子育て中の一般世帯(約686万円)の約3分の1の額に当たる。ひとり親がいかに厳しい経済状態で暮らしているかがうかがえる。

 こうした不安定な経済基盤を新型コロナが襲った。認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむが今年6月に行った全国のひとり親家庭を対象にしたアンケートによると、コロナ不況の影響で収入がゼロになった人は15%いた。回答者からは、「親子で1日一食」「子どもがおなかが減らなくなった」「古着で布おむつをつくっている」といった回答が寄せられた。

 フローレンスが今年5月に発表した調査でも、約8割が「新型コロナによって支出が増えた」と回答している。支出増の幅で最も多いのは「20〜40%」だが、これは月20万円で暮らしている人の場合、支出が4〜8万円増えていることになる。

 フローレンスの担当者・岩井純一さんは同プロジェクトを打ち出した理由について、「コロナ不況は長期化することが予想されます。ひとり親への支援として現物支給は大切ですが、それだけではなく自分の力で仕事と収入を得られるようなスキルアップのサポートも行いたいと思いました」と話す。

◆動画でライティングを学び、課題を提出

 クラウドワークスには、「自分らしい働き方の実現を支援する完全オンラインの学校」をコンセプトにしたクラウドカレッジという学びの場がある。

 ここでは、共に学ぶ仲間に相談ができる「コミュニティ」、仲間と一緒に力をつけられる期間限定の「トレーニング」、動画を見て知識を身につける「スキルアップ」の場が用意されている。

 「ひとり親向けライター育成プログラム」は、クラウドカレッジにある「WEBライター育成プログラム」をベースにした特別講座。通常は1万8000円(税別)するが、無償で受講できる。

「『ひとり親向けライター育成プログラム』は、9月15日〜10月14日までの1ヶ月間の期間限定講座です。『心に響く文章を書くにはどうすればいいか』などの6つのテーマの動画を見てライティングを学び、テーマごとに課題を提出していただきます。最終的には、WEBライター検定2級を受検し、資格取得を目指していただきます」(岩井さん)

 WEBライター検定とは、クラウドワークスが独自に設けたラインティングスキルの検定のこと。1〜3級まであり、2級では「構成案に基づいて、読み手の心を動かす文章を作成できる実務能力を証明できる」ことが合格ラインだ。通常、検定料は1万円(税別)するが、「ひとり親向けライター育成プログラム」のカリキュラムに含まれているため、無料で受けられる。

 プログラムの特徴の一つが、オンラインコミュニケーションツール「Slack」による参加者コミュニティーの構築だ。

「一緒に学んでいる仲間がいるという感覚を持ち、励まし合って受講いただける参加者限定のコミュニティがあります。課題の進行状況や、不安に感じていることをコミュニティー内で共有いただくことで、受講者同士の繋がりを持っていただけるのも、本プログラムの良さかと思います」

 9月15日にはオンラインで、プログラムの概要や今後の進め方についての受講者への説明や受講者同士の交流を目的とした「キックオフミーティング」が開催された。

 事務局担当者として参加した岩井さんは、「初回のためミーティング開始時には不安そうな表情を浮かべた方が多かったですが、時間が経つにつれて緊張が緩み、和やかな雰囲気でした。これからの1ヶ月を前向きに、楽しみに捉えてくれていました」とミーティングの様子を話す。

 岩井さんによれば、受講者からは「収入が大幅に下がったので、在宅やオンラインを活用してできる仕事を探していました。このようなプログラムは本当にありがたいです」「この学びのチャンスを生かします」「これから勉強するのが楽しみです」といった前向きな感想が相次いでいるという。

 キックオフミーティングに続き、「オンライン相談会」や「クラウドワーカー基礎講座」といったイベントが企画されており、受講者の不安や疑問に寄り添う工夫が随所に見られる。これにより、受講者はコミュニティー内で仲間と切磋琢磨しながら、安心して課題に取り組める。

◆「ひとり親の悩みを共有、励ましあいながら、学習ができて良かったです」

 1ヶ月のプログラムを終えた参加者の女性は、感想を次のように話してくれた。

「私は、子育てとの兼ね合いもあることから、自宅で仕事をしています。ライティングの仕事の経験はありませんでしたが、仕事の幅を広げたいと思いから受講を決意しました。

 プログラムで出される全ての課題は自宅でできたため、移動の必要がなく、助かりましたね。学習が進むにつれて課題の内容が難しくなり、学習時間も長くなりましたが、子どもを寝かしつけた後に課題に取り組む時間を作りました」

 女性がプログラム中で特に良いと感じたのは、参加者限定のSlackで繋がる仲間の存在だった。

「毎日日報を書くことになっているので、そこで進捗や感想を報告しつつ、他の参加者と励まし合いました。こうした関係が築けたことで、頑張ることができました。ひとり親だからこそ感じる気持ちに寄り添い、共感できることも多かったです」

 学習の機会と繋がりの創出は、本プロジェクトの大きな魅力だ。女性は「まだ試験結果はわかりませんが、今回受講できて本当に良かったです。学んだことを生かし、ライティングの仕事に挑戦しようと思っています。このような機会をいただけて、関係者の皆さんに本当に感謝しています」と今後への前向きな気持ちを示した。

岩井さんは受講者の理想の姿について、「プログラム受講終了後は、クラウドソーシング等を活用してご自身で仕事を受注し、ぜひ収入アップに繋げていただきたいです」と語った。

 フローレンスでは、長友選手のプロジェクト「#ひとり親をみんなで支えよう」と連携し、今後新たなひとり親支援策を打ち出すとしている。

<取材・文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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