戦極MCBATTLE主催、MC正社員が語る、コロナ禍のイベント業界。自粛要請で「人生が終わる」額の損害も<ダメリーマン成り上がり道 #37>

戦極MCBATTLE主催、MC正社員が語る、コロナ禍のイベント業界。自粛要請で「人生が終わる」額の損害も<ダメリーマン成り上がり道 #37>

sus756 / PIXTA(ピクスタ)

 経済面でも多くの人に大打撃を与えた、新型コロナウイルスの感染拡大。特にライブハウスやクラブの苦境を伝えるニュースは多かったが、クラブで開催されるMCバトルも開催が不可能になり、大きな損害を被った。「戦極MCBATTLE」を主催し、イベンターとしてMCバトル、ヒップ・ホップのシーンに関わってきたMC正社員に、コロナ禍でのバトルシーンを振り返ってもらった。

◆4月〜6月は1本もイベントを開催できず

 まず、MC正社員が主宰する「戦極MCBATTLE」のコロナ禍での開催状況を確認しておこう。

<コロナ感染拡大期(今年2月〜)の『戦極MCBATTLE』開催状況>

 ・2月1日 『U-22 MCBATTLE 3on3 SP 2020-キャラ立ち3本マイク-』Circus Tokyo

 ・2月15日 『戦極MCBATTLE 第21章 -TOP RANKAZ 2020-』Zepp DiverCity

 ・2月26日 『戦極学園 in 渋谷Subciety 2月度』渋谷Subciety

 ・3月5日【無観客で開催】『戦極春のファン感謝祭』CIRCUS Tokyo 

 ・3月25日 『戦極学園 in 渋谷Subciety 3月度』渋谷Subciety

 ・4月5日【中止】「戦極MCBATTLE 修羅への道福岡大闘技杯』 福岡Kieth Flack

 ・4月11日【中止】『戦極令和二年杯』club bar FAMILY 

 ・5月6日【中止】『U-22 MC BATTLE 2020 TOKYO CHAMPIONSHIP』Zepp DiverCity

 ・7月5日『戦極MCBATTLE U-22 MC BATTLE REVENGE SPECIAL 2020』CLUB CITTA'

 ・7月25日 『戦極Battle League 1 自粛からの復活編』CIRCUS Tokyo 

 ・8月10日 『戦極MC 西の16人選抜 2020』大阪 TRIANGLE

 ・8月15日 『戦極Battle League 2 -我々は抵抗する編- 』Circus Tokyo

 ・9月19日 『戦極甲子園』Circus Tokyo

 ・9月20日 戦極Battle League 3

 ・9月27日 9/27 U-22 MCBATTLE 秋の祭典 -vs OBs Dream match 2020-

 通常では毎月複数本のイベントを開催している『戦極MCBATTLE』。今年2月には3本のイベントを実施していたが、3月〜5月は予定していたイベントがほぼ全て中止。4月〜6月はイベントを1本も開催しなかった。

 「2月の初旬〜中頃は、戦極を含めてまだ多くのイベントが普通に開催されていました。2月15日にZepp DiverCityで開催した『戦極MCBATTLE 第21章 -TOP RANKAZ 2020-』などは、通常通りの規模で開催していましたし、内容的にもとてもいいイベントでした。

 それが2月末になると、Perfumeが東京ドーム公演の開催数時間前に中止を発表したりと(2月26日)、ライブやイベントがどんどん中止になっていったんです」

 2月26日には政府が「今後2週間は大規模イベントを自粛すること」を要請。同日にはPerfumeのライブのほか、EXILEの京セラドーム大阪公演も中止となっている。

◆メルカリで消毒液に大金を払う

 ただ、政府が行ったのはあくまで「自粛の要請」。イベントの開催は主催者の判断に委ねられている部分が多かった。格闘技イベント「K-1 WORLD GP」が、当初の予定通り3月22日にさいたまスーパーアリーナで開催されたことは、世の中でもニュースになった。

 「2月末〜3月頭は多くのイベントが中止になりましたが、3月の途中からはイベントを再開する動きがありました。戦極の場合は、緊急事態宣言が出る前の最後のイベントは3月25日の『戦極学園 in 渋谷Subciety 3月度』。当日もコロナ関連の新しい情報がどんどん飛び込んでくるし、開催時間まで『マジどうしよう』と悩み続けていましたが、会場に出演者もお客さんも向かっている状況でしたから、その日は開催するしかありませんでした」

 なお当時は消毒用のアルコールなども店舗では購入できず、「メルカリで1万円払って買ったりしていた」とのことだ。

◆キャパ1000人の会場に100〜200人しか入れない

 政府が緊急事態宣言を出したのは4月7日だが、「戦極MCBATTLE」は4月5日のイベントをいち早く中止。4月11日と5月6日のイベントについても、緊急事態宣言前に中止を発表し、購入者への払い戻しの対応などを行ってきた。

 「4月5日の福岡のイベントは、開催すべきかずっと悩んでいましたが、志村けんさんが亡くなったころに気持ちが変わりましたね(3月29日死去)。僕だけじゃなく、そこで世の中の空気も大きく変わった気がします。緊急事態宣言が出ていた4月7日〜5月25日のころは、僕の周囲では会場側なども含めて『もう今はできないよね』という感じでした」

 しかし、すべてのイベントが中止になっていたわけではないようだ。

 「SNSを見ている限りでは、緊急自体宣言中も開催していたイベントもありましたよ。普通に告知して普通に開催していたヒップホップのイベントもあったし、ほかのジャンルのイベントでも同様のケースはありました。どれもキャパ数十人程度の小さなハコのイベントでしたけどね。

 あと、2月〜4月頃にワンマンライブを予定していた人は、当初は2、3か月先に開催を延期にしていました。つまり『あと数か月したら収まるっしょ』みたいな空気だったんですけど、『全然収まらねえぞ……』ってなってきたのは7月頃になってからです」

 ライブハウスやクラブでは、感染防止のガイドラインを遵守したうえで営業再開をしているところが多いが、「現在でもキャパシティ1000人の会場でも90%のイベントが100人とか200人しか入れてイベントしてない」(MC正社員)という厳しい状況。大規模なイベントについては人数制限(5000人)の緩和が9月初旬になって検討されはじめているが、夏フェスなどの大規模イベントはほぼ99%中止となった。

◆人生が終わる「自粛要請」の是非

 なお「戦極MCBATTLE」は、5月にZepp DiverCityという大きな会場でのイベント(『U-22 MC BATTLE 2020 TOKYO CHAMPIONSHIP』)を予定していたが、緊急事態宣言中につき中止となっている。チケットは5800円〜で、会場のキャパシティは約2400人(スタンディング時)なので、損害の大きさは推して知るべしだ。

 「そのときは僕のビジネスパートナーがうまく立ち回ってくれたので、幸い大きな損害を被ることはありませんでした。ただほかのアーティストは、開催中止によってほぼ100%のハコ代を要求された人もいるみたいです」

 感染拡大真っ只中の3月22日、さいたまスーパーアリーナで開催されたK-1については、ネット上で非難の声も集まった一方、補償のない状態での自粛要請への違和感を指摘する人も多かった。MC正社員は1人のイベンターとして、K-1の開催をどう見ていたのか。

 「さいたまスーパーアリーナのイベントなんて、中止にすれば億単位の損害が出るわけですよ。補償ゼロで中止になれば、主催者や関係者に人生が終わる人が出る額です。K-1については、県知事からも自粛のお願いが出ていましたが、そういう損害額を知ったうえでイベント関係者に『開催をやめてください』と言っていたのか疑問です。イベントを仕事にしている人間としては、『補償もナシで「やめてください」なんてよく言えるな』と思いますよ」

 クラブやヒップ・ホップ関係者のコロナ禍での窮状や、感染防止対策を行ったうえでイベントを再開した「戦極MCBATTLE」の近況については、次回以降の記事でまた振り返っていく。

<構成/古澤誠一郎>

【MC正社員】

戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く

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