ヤル気を削ぐ上司、何を考えているかわからない部下。部署間の軋轢を生む原因とは

ヤル気を削ぐ上司、何を考えているかわからない部下。部署間の軋轢を生む原因とは

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 筆者のもとには「上司の話が腑に落ちない」「最近の部下は指示に従わない」「何を考えているのかわからず、扱いにくい」「部門同士で話が噛み合わない」……このような相談が跡を絶たない。

◆上司と部下の話が噛み合わない

 上司の側も部下が扱いづらいと思っており、部下の側も上司の言っていることがわからないと、双方向でコミュニケーションが進まない。上司と部下の関係だけではない。部門同士でも円滑な対話ができていない。

 こうした状況は、リモート時代になってさらに拍車がかかっている。面と向かって話せば、ここまでこじれることがないものを、対面での対話の機会が限られていて修復できていないし、修復に時間がかかるようになった。

 どうやらその原因は、相手のモチベーションファクター(意欲を高める要素)を考慮できていないことにあることがわかった。相手のモチベーションファクターを自分と同じだと思ったり、相手が自分のモチベーションファクターに合わせるべきだと考えていたり、そもそも、相手のモチベーションファクターを誤解していたり、無視していたりしているケースがじつに多い。

◆モチベーションファクターのタイプわけ

 私はモチベーションファクターを「牽引志向」と「調和志向」の2つにわけて捉えている。肉食系と草食系、狩猟型と農耕型というわけだ。1人で取り組むことを好む人は牽引志向が高い傾向がある。みんなで実施することが快適だと感じる人は調和志向が強いと言える。

 牽引志向はさらに3つにわかれ、チャレンジすること、アイデアを創出すること、ステイタスを築くことのいずれが一番モチベーションを高めるかで、「目標達成型」「自律裁量型」「地位権限型」にわかれる。

 調和志向はさらに3つにわかれ、チームワーク、リスク、バランスのいずれに一番モチベーションが刺激されるかで、「他者協調型」「安定保障型」「公私調和型」にわかれる。

 このように2つの志向、6つの要素にモチベーションファクターをわけているのは、日本のビジネスパーソンのモチベーションファクターは、だいたいこの2志向、6要素に均等にわかれるからだ。

◆相手に合った話法を繰り出せるか

 例えば、自分なりに創意工夫してオーナーシップをもって取り組みたいと考えている自律裁量型の部下に、リスクを心配する上司が「部下も同じように心配しているかもしれない、部下の心配を解消するのが上司の役目だ」と思い込んで、「あれはどうなった、これはどうなった、あれもチェックしよう、これもチェックする」とマイクロマネジメントをしてしまっては、部下のモチベーションが上がるどころか、抵抗感を与えてしまう。

 自律裁量の部下には、「やりたいように試してみろ」「試行錯誤してみろ」というフレーズが合致するし、もし仮に、それで上司の心配が収まらないのであれば、「タイミングは任せるから、気になったことが出てきたら、いつもでも共有してくれ」と言い添えればよい。

 これを、あれこれ心配している安定保障型の部下に、「試してみろ」「試行錯誤してみろ」と言ってしまうと、「上司は私の心配をわかってくれていない」「ケアしてくれていない」と、モチベーションを下げてしまう。

 このように、自分のモチベーションファクターではなく、相手のモチベーションファクターに合致した内容やフレーズで指示したり、フォローしたり、サポートすれば、コミュニケーションにおける無用の軋轢は、相当程度、解消できるのだ。

 私のプログラムの演習参加者は、2時間程度の演習で、相手のモチベーションファクターを見極め、相手のモチベーションファクターに合わせた、指示や助言の話法を繰り出せるようになる。特にリモート環境で効果があるので、試してみることをお勧めする。

◆マネジメントがうまくいかない理由とは

 質問:マネジメントしづらくなった状況の原因は何か

 「上司が部下をマネジメントしづらくなった」「シニアと若手でコミュニケーションがとりにくくなった」「経営者と従業員の間に断絶がある」「顧客苦情を収束しづらくなった」こういう問題に直面することが多くなったように思います。いったい何が原因なのでしょうか?

 回答:相手のモチベーションファクターを無視したり誤解したりしている

 これらの問題は、いずれも、相手のモチベーションファクターを無視していたり、誤解していたり、自分と同じだと思っていたり、相手が自分に合わせるべきだと思っていたりすることに原因があることがわかってきました。

 自分とは異なる、相手のモチベーションファクターに合致した、助言、指導、進捗管理、フォローなどをしていくと、格段に相互の関係が改善するのです。そのためにも、相手のモチベーションファクターを見極めるということが、とても大事になります。

 それができていないので、公私調和のモチベーションファクターの部下に、地位権限のモチベーションファクターの上司が、「昇格できるから徹夜して土日返上でがんばろう」とお門違いな激励をしてしまったり、自律裁量の意識が芽生えた部下に、安定保障型の上司がマイクロマネジメントしてしまったりする勘違いのマネジメントが跡を絶たないのです。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第212回】

<取材・文/山口博>

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

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