「CDデビュー」の殺し文句でカモられる老人たち。シニアを狙う[カラオケ搾取]

「CDデビュー」の殺し文句でカモられる老人たち。シニアを狙う[カラオケ搾取]

写真/PIXTA

 著名な作詞家・作曲家らが夢の歌手デビューを後押しする――。CDの自主制作で数百万円を得る“スカウト商法”は数十年前から存在した。近年その手口は卑劣さを増し、無知な高齢者から老後資金を掠め取る輩が増えているという。その実態に迫った。

◆500万円支払いはザラ。巧妙な搾取の手口とは!?

 夢の歌手デビューができると誘い、作詞・作曲料やレッスン料などの名目でカネを巻き上げる「スカウト商法」。これまで若い女性や子供が狙われてきたが、そのターゲットは高齢者にまで広がっているという。

「演歌は廃れたといわれて久しく、紅白出場経験のある大物以外はなかなか稼げない現状。お金に困った、いわゆる“先生”と呼ばれる作詞家・作曲家のなかには、カラオケ喫茶やスナックで歌いに来た高齢者に、『CDデビューしないか?』と持ちかけて法外な請求をする人もいます。完全に搾取です」

 そう語るのは、歌手の岡恵子氏だ。週刊SPA!でも’16年掲載の特集「PCデポより悪質な『老人商法』の呆れた中身」で、自主制作で200万円を支払ったケースを紹介したが、現在はその搾取の金額は積み増しされているという。

「先生たちは作詞料・作曲料などで一曲100万〜200万円程度を持っていきます。彼らは“言い値”の商売です。そこにCD制作に必要なポスター制作、PV制作、レッスン代金を“上乗せ”して個人に請求している。500万円前後支払った、というケースもザラです」(岡氏)

◆「俺もスポットライトを浴びられる!」と契約…制作費は合計で約3000万円

 板橋区在住の中村茂さん(仮名・78歳)も被害者のひとり。その手口は実に巧妙だ。

「定年後の趣味で出場したカラオケ大会で、審査員のA氏にスカウトされたのが発端です。実際にA氏は過去に某紅白歌手のアルバムに1曲書いていて、ツーショット写真を見せながら『彼のようにメジャーになれますよ!』『すごい才能を感じます!』と口説いてきました。この人に任せたら俺もスポットライトを浴びられる!と契約してしまいました……」

 2曲入りのシングルCDリリースにかかったお金は合計500万円。ここまで、A氏の言葉をみじんも疑わなかったという。

「CDプレスは大手レコード会社だったので、『あの大手からデビューできる!』と興奮したのを覚えています。後から知ったのはお金を払えば誰でも発売できる“自主制作レーベル”だったんです……。また、PV制作も『NHKから映像提供をされている』とA氏に言われたのですが、これもNHKが運営するクリエーター向けに提供している“フリー素材”のサイトから得たものでした……」

 制作したCDは2000枚。まったく無名の中村さんのCDはどこも取り扱ってくれず、それでも先生の指示に従いカラオケ喫茶などに営業して“手売り”した。そこから1年後、アルバム制作の打診があったという。

「制作費は合計で約3000万円。高すぎるとは思ったのですが、『ヒットすれば印税やコンサートのギャランティで回収できる』と言われ、契約をしてしまいました。資金は老後資金として貯めていた退職金のほか、自宅も売却してどうにか捻出しました」

《中村茂さんがアルバム制作にかけた料金》

▼作詞料(10曲) 1000万円

▼作曲料(10曲) 1000万円

▼レッスン料 半年300万円

▼ポスター制作代 100万円

▼CDプレス代金 2000枚100万円

▼PV制作料 100万円

▼HP制作料 100万円

▼楽曲登録料 50万円

▼雑費など 250万円

(※料金はすべて搾取側が“上乗せ”したもの)

合計 3000万円

 しかし、当初の説明とは裏腹に、アルバムは遅々として制作されず。「作詞家の仕事が遅い」「もう少しレッスンを重ねてからレコーディングに入りましょう」などと理由をつけられ、逃げられ続けたという。

「A氏に詐欺では?と詰め寄ったら、『お前は破門だ!』と追い出されました。まさに“キレる老人”です。弁護士に相談したのですが、『契約をしている場合は難しい』と言われました。それでも訴えたいです……」

◆YouTube番組登録料で1万円の怪

 自主制作CDデビュー後も、先生の“お言葉”を信じて、高額の支払いを続ける人もいる。栃木県在住の秋田京子さん(仮名・68歳)の例だ。

「同じように自主制作デビューした歌手を集めた“お披露目会”が2〜3か月に一度あります。一枚3000円程度のチケットを30〜40枚分負担させられ、売り上げはすべて“先生”の元へ。また『今日来た客のなかから舞台で歌いたいヤツも集めろ。一曲5000円で』と命じて、歌唱後の観客を先生がスカウトしていくのが恒例。まあ、これも修業のひとつです」

 そして、かつて高齢者からの搾取として話題になった、PCデポと似たようなこともある。

「先生の友人が行う“YouTube番組”に出演できると聞き、私のほかにも高齢者の歌手が一堂に集められました。参加費は20分のトークに4曲歌って一人1万円。ただ番組は据え置きのスマートフォン1台で撮影されていて、これが1か月1〜2回は徴収されます。時代に乗り遅れないように私たちも必死です!」

 その番組を確認したが、チャンネル登録者数は10人……。再生回数は100回未満で、編集も特にされていなかった。秋田さんは他にも支払いがあると明かす。

「インターネットのラジオ番組を“枠買い”しています。朝7時頃の放送の15分番組で、支払いは一回MCするのに3万円。月換算で12万円ですね。たまに、別の人のゲスト出演でお呼ばれされたときは出演料として1万5000円を払うこともあります」

《デビュー後も続く搾取の構造》

▼インターネットラジオ番組配信 月12万円

▼YouTube登録料 月1万〜2万円

▼カラオケ雑誌に登場 一回3万円

▼楽曲継続登録料 年間2万円

▼チケットノルマ 月2万〜3万円

(※料金はすべて搾取側が“上乗せ”したもの)

月に合計 約20万円

◆「ブレイクしたらすぐに元は取れますからね」

 ちなみに某インターネットラジオ局では、番組の枠買いを3か月10万1000円で持てるとホームページに記載されていた。そこで秋田さんに理不尽な出演料を請求されている可能性を指摘すると、あろうことかこう否定したのだ。

「でも、周りの皆さんも同様に払っていて、本当に売れた人もいるんですよ。貯金を取り崩していますが、ブレイクしたらすぐに元は取れますからね」

 無知な高齢者を“洗脳”して搾取し続ける悪徳業者たち。読者諸兄の親の老後資金が狙われていないか、一度チェックしたほうがいいかもしれない。

【歌手・岡 恵子氏】

’11年「愛の行方」でデビュー。自身もかつて自主制作の搾取を経験。現在はガッツ石松氏が代表の「ガッツ・エンタープライズ」所属。

<取材・文/中山美里(オフィスキング) 加藤浩之(本誌)>

関連記事(外部サイト)