無許諾音楽アプリ利用者減少も、元利用者が語る「やめた理由」に垣間見える楽観視できない要素

無許諾音楽アプリ利用者減少も、元利用者が語る「やめた理由」に垣間見える楽観視できない要素

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 16日、LINE MUSIC株式会社(所在地:東京都新宿区、代表取締役社長:舛田 淳)がLINEリサーチを活用した「無許諾音楽アプリ」に関するアンケート調査の結果を発表した。無許諾音楽アプリはMusic FMをはじめとして一躍世に広まった。同調査では、そうした無許可アプリのユーザーは減少傾向にあるとしているが、いまだに無自覚に使っている人もいて、もはや社会問題と言っても良いほどである。

 今回筆者は無許諾音楽アプリについて、アンケートの数字からは見えてこない利用者の実情を知るため「以前無許諾音楽アプリを利用していた」という人々の話を聞いてみた。

◆「使っていた理由も、使うのを辞めた理由も別にない」

 現在22歳の中村祐太(仮名)さんは、「高校生〜大学1年生にかけて無許諾音楽アプリを利用していた」と話す。

「無許諾音楽アプリを使っていた理由は特段ないです。利用しやすく、無料だったので何も考えずに使っていました」

 現在はApple Musicを利用しているという中村さんだが、なぜ無許諾音楽アプリの利用を辞めたのだろうか。

「使うのを辞めた理由も別にないんですよね。強いて言うならApple Musicの方が使い勝手が良かったからかな。自分は音楽にそれほど関心があるわけではなくて、ヒットしたものや友人に勧められたものを聞くことが多い。だから扱っている曲が多くて検索エンジン等のシステムが整っていれば別になんでも、という感じです」

 「音楽に対する関心が薄い」と話す中村さん。「もし普段聴いているアーティストが無許諾音楽アプリの利用を反対していると知ったらどうするか?」という質問には、「正直どうとも思わない」と答えた。

 LINE MUSIC株式会社のアンケート結果を見ると、無許諾音楽アプリ最頻利用者の半分は10代と20代が占めている。無許諾音楽アプリ最頻利用者に使っている理由を聞くと、「十分満足できるサービスだから」「便利なサービスだから」という回答が多い。そこから筆者が考えるに、多くの10代〜20代は「音楽にお金を払う」という意識が薄いのではなかろうか。

 筆者は現在23歳だが、中学2年生のときはじめて手にしたのはガラケーではなくスマホであったし、中学生のときは主にYouTubeやニコニコ動画で音楽を聴いていた記憶がある。中学生のときにミリオンを売り上げるのはAKB48しかおらず、教室内でCDの貸し借りが行われていた記憶もほとんどない。現在の10代〜20代が育ってきた「音楽にお金を払う」という意識の薄い土壌が「無許諾音楽アプリは便利だから使う」という結果を招いているのではないだろうか。

◆音楽は「消費の対象でしかない」

 次にインタビューしたのは現在22歳の鈴木佳奈さん(仮名)。彼女もまた、高校生〜大学2年生のときに無許諾音楽アプリを利用していたという。

「サブスクにはないアーティストの曲がたくさん入っていたから使っていました。数年前はサブスク解禁していないアーティストも結構いて、聞けない曲が多かったので」

 では、ストリーミングサービスで楽曲を配信するアーティストが多くなったために無許諾音楽アプリの利用を辞めたということだろうか?

「いや、そういうことでもないです。最近の無許諾音楽アプリって使い勝手が悪いんですよね。Music FMとかはYouTube上にない曲も聴けたけど、最近の無許諾音楽アプリはYouTube上にあがっている動画の曲しか聴けないものが多いんですよ。前のスマホにはMusic FMが入っていたんですけど、機種変更したときに新しいスマホにも入れようと思ってApp Storeで探したら見つからなくて」

 返ってきたのはなんとも恐ろしい答えだった。では無許諾音楽アプリが以前のままのようなシステムであれば使い続けていたのだろうか?

「多分。まだサブスクで聴けないアーティストもいますし。今はサブスク解禁していなくてもiTunes Storeにあるアーティストは一曲ずつ買って聞いていますが、正直不便です」

 具体的なアーティスト名を訪ねてみると、いくつかのアイドルグループの答えが返ってきた。鈴木さんはコンサートへ足を運ぶこともあるそうだ。もしもそんなお気に入りのアーティストが無許諾音楽アプリの利用を反対していると知ったら、どうするのだろうか? 彼女は数秒沈黙したあと、口を開いた。

「多分どうとも思わないですね」

 応援しているアーティストにお金が入らなければ、活動が難しくなることも容易に考えられる。その点についてはどう考えているのだろうか。

「別にどうでもいいです。曲は聞きたいけど、熱狂的に応援しているとかじゃないので。『推しにお金を落として、その分頑張ってもらう』みたいな風潮も正直よくわかんないですね。結局他人だし、別に活動に期待とかしていないので。消費の対象でしかないというか」

 鈴木さんは「無料だろうが有料だろうが、使いやすいものを使うだけ」と話す。決してお金を使うことを拒んでいるわけではなく、「単純に無許諾音楽アプリの方が使いやすかった」というのが本音のようだ。現在彼女はApple Musicを利用しているそう。使い心地を聞いてみると、「概ね満足しています。聴けないアーティストがいるのは不便だけど、まあ仕方ないですよね」と答えた。

◆「音楽業界の人は他人、だからどうでもいい」の危うさ

 今回インタビューした二人に共通するのは、「無料だろうが有料だろうが、使いやすいものを使う」という点だ。彼ら・彼女らにとって有料か無料か、アーティストにお金が入るかということはそれほど問題ではなく、「自分が使いやすいかどうか」が重要なのだ。

 しかし、当たり前の話だが大前提として無許諾音楽アプリは著作権を侵害しており、違法である。聴く側も無許諾音楽アプリから曲をダウンロードした場合は、刑罰として「2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)」が科される。さらにCDが売れず、コロナ禍でライブやコンサートを開催できないアーティストに対して、ストリーミングサービスが活動の下支え的な役割を果たしている場合も少なくない。適切なお金が支払われないことによって音楽業界が縮小していけば、私たちが普段慣れ親しんでいる文化が消えていく可能性すらあるのだ。

 アンケート内の「お気に入りのアーティストが、あなたが使っている音楽アプリに反対の意思を示したら?」という質問には、約3人に1人が無許諾音楽アプリの「利用をやめると思う」と回答している。裏を返せば、約3人に2人は「今後も使うと思う」と回答しているわけだ。

 LINE MUSICはアンケート結果を踏まえた結論として「今後はアーティストとも協力して啓蒙を続けていくことで、正しい理解の浸透および無許諾音楽アプリの一掃に期待がもてる」としているが、筆者は正直前出の約3人に2人には、いくら啓蒙活動をしたところでどうにもならないのではないかと思う。「文化が消えてから気がつく」という最悪のパターンにならないことを願うばかりだ。

<取材・文/火野雪穂>

【火野雪穂】

97年生まれのフリーライター。学生時代から学生向けメディアの記事作成などを行う。今春大学を卒業したばかりだが、いきなりのコロナ禍で当惑。

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