特典つきチケットや配信は救世主となるのか? コロナ禍の小規模イベントで収益化する術<ダメリーマン成り上がり道 #38>

特典つきチケットや配信は救世主となるのか? コロナ禍の小規模イベントで収益化する術<ダメリーマン成り上がり道 #38>

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 経済面でも多くの人に大打撃を与えた、新型コロナウイルスの感染拡大。特にライブハウスやクラブの苦境を伝えるニュースは多かったが、クラブで開催されるMCバトルも大会の開催が不可能になり、大きな損害を被った。「戦極MCBATTLE」主催・MC正社員の当連載では、前回の記事からコロナ禍でのバトルシーンの振り返りを実施。今回は緊急事態宣言明け以降のイベント再開について語ってもらう。

◆渋谷のハコでは億単位の損害も?

 まず、MC正社員が主宰する「戦極MCBATTLE」のここ半年のコロナ禍での開催状況を確認しておこう。

 コロナの時期の「戦極MCBATTLE」開催状況

 ・2月1日 『U-22 MCBATTLE 3on3 SP 2020-キャラ立ち3本マイク-』Circus Tokyo

 ・2月15日 『戦極MCBATTLE 第21章 -TOP RANKAZ 2020-』Zepp DiverCity

 ・2月26日 『戦極学園 in 渋谷Subciety 2月度』渋谷Subciety

 ・3月5日【無観客で開催】『戦極春のファン感謝祭』CIRCUS Tokyo 

 ・3月25日 『戦極学園 in 渋谷Subciety 3月度』渋谷Subciety

 ・4月5日【中止】「戦極MCBATTLE 修羅への道福岡大闘技杯』 福岡Kieth Flack

 ・4月11日【中止】『戦極令和二年杯』club bar FAMILY 

 ・5月6日【中止】『U-22 MC BATTLE 2020 TOKYO CHAMPIONSHIP』Zepp DiverCity

 ・7月5日『戦極MCBATTLE U-22 MC BATTLE REVENGE SPECIAL 2020』CLUB CITTA'

 ・7月25日 『戦極Battle League 1 自粛からの復活編』CIRCUS Tokyo 

 ・8月10日 『戦極MC 西の16人選抜 2020』大阪 TRIANGLE

 ・8月15日 『戦極Battle League 2 -我々は抵抗する編- 』Circus Tokyo

 ・9月19日 『戦極甲子園』Circus Tokyo

 ・9月20日 戦極Battle League 3

 ・9月27日 9/27 U-22 MCBATTLE 秋の祭典 -vs OBs Dream match 2020-

 政府が緊急事態宣言を出していたのは4月7日〜5月25日まで。その期間は「戦極MCBATTLE」を含めて国内の大半のイベントやライブが中止になっていた。当時のライブハウスやクラブの窮状はニュースで目にした人も多いだろう。

「ライブやイベントを開催するハコでは、コロナ後に廃業したところもありますし、今も全てのハコが危機的状況だと思います。4月、5月は売り上げゼロで家賃や人件費ばかりが出ていく状況でしたし、営業再開後も感染拡大防止のガイドラインに従うと、キャパシティの10分の1程度しかお客さんを入れられなかったりしますから。渋谷のハコのオーナーが億単位の損害が出てるって話も聞きましたね」

 そのような状況下で、「戦極MCBATTLE」はイベントの開催を7月から再開。第一弾は、7月5日の「戦極MCBATTLE U-22 MC BATTLE REVENGE SPECIAL 2020」(CLUB CITTA')だった。

「このイベントは、『真・ADRENALINE』『凱旋MCbattle』という2つの人気バトルイベントとのコラボで、3週連続生配信でMCバトルを開催するものでした。開催してよかったですけど、客席の人数が大幅に絞られて、ほとんど声も出せない状況でのバトルは、やっぱり普段とぜんぜん違う難しさがありました。客席の盛り上がりがないとMCバトルの面白さは削がれてしまいますから」

◆特典DVDで現地チケットにお得感を

 なお「戦極MCBATTLE U-22 MC BATTLE REVENGE SPECIAL 2020」では、下記4種のチケットを用意していた。この狙いは何だったのか。

 A.オンライン有料配信チケットのみ:1980円

 B.オンライン配信チケット+DVDお得セット:4980円

 C.現地チケット+DVD:9980円

 D.最前VIP席+DVD5本+レア限定商品:1万9980円

「キャパシティを絞ってイベントを開催するには、有料の配信を行うことや、現地のチケットの値上げが必要です。でも、ただ現地のチケットを値上げするだけでは、現地に来るメリットが薄くなってしまう。なのでDVDを組み合わせることにしました。

 あとイベントを有料で生配信をするなら、きちんとしたカメラを用意して、高いレベルの映像を見せるのが絶対条件。それができないと有料配信は大コケしますし、実際に失敗したイベントもたくさん見ていますから」

 戦極MCBATTLEが有料配信やDVDを組み合わせて活動再開できたのは、大会の撮影やDVDの作成・販売、You Tubeへの配信等のノウハウが元からあったためだ。近年の「戦極MCBATTLE」はYou Tubeへの配信と、そこでの広告収入が事業の柱のひとつ。「過去の遺産があったからこそ、『戦極MCBATTLE』はコロナの状況でも生き残れた」とMC正社員は振り返る。

「感染が拡大していた時期は、YouTubeに過去の大会の動画を毎日新規でアップしていたので、再生数は普段より伸びていたくらいでした。DVDの売れ行きや有料アプリ(月額360円)も幸いなことにそんなに減らなかったですね。

 あと、このコロナ禍では、有料配信を行なうイベントが増えて、そこにお金を払う人も増えました。イベントがごく普通に開催できる状況に戻っても、現地チケット+有料生配信の組み合わせは継続していく予定ですし、こうした世の中の変化をイベント運営に活かさない手はないと思います」

◆チケット代での収益化は困難

 逆に言えば、今後はライブ会場のチケット代金のみでは、イベントの収益化は難しい……ということだ。

「7月25日に開催した『戦極Battle League 1 自粛からの復活編』(CIRCUS Tokyo)なんかも、キャパシティ300人のところを30人に絞っての開催でしたから。人数が少なぶん、『会場にいる人で盛り上げていこう!』という一体感が生まれて、イベント自体はいいものにできましたけど、ハコ側、僕自身も厳しいですよ。

 入場者の人数を絞っているぶん、多少はイベンターの僕が支払うハコ代は安くしてもらっていますけど、ハコはそれで余計に苦しくなっている。この業界でいろんな人から話を聞くと、いちばん辛いのは会場側だと感じます」

◆会場で感染者が出たら生活が終わる

 また、ライブハウスやクラブでは、新型コロナウイルスへの感染対策として、「対人距離をできるだけ 2m を目安に最低 1m 確保」「出演者と観客の間の距離を、なるべく 2m 確保するよう要請してください。それができない場合は、出演者から飛沫が拡散しないための遮蔽物を設ける等、飛沫感染対策を行ってください」といったガイドラインの遵守が求められている。こうしたガイドラインについては、どう感じているのか。

「多くの人が言ってますけど、ライブハウスやクラブのことを理解していない人が作ったルールだと感じますよね。ステージと客席のあいだに透明な幕などを張ることが求められていますけど、それをしちゃったら物凄く見えづらくなりますから。

 あとアクリル板や飛沫防止シートをつけろという指針はあっても、その経費を払うのは全てハコ側。満足な保障がない状況で、その部分までクラブ側に負担を求めて経営が成り立つと思っているんですかね? 決められたルールは守ってやっていこうと思ってますけど、正直『ホントにムチャクチャな要求をするな』という怒りはありますよ」

<構成/古澤誠一郎>

【MC正社員】

戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く

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