韓国でも人気爆発。韓国の『鬼滅の刃』ファンによるアツ過ぎる考察の数々

韓国でも人気爆発。韓国の『鬼滅の刃』ファンによるアツ過ぎる考察の数々

韓国の百科事典サイト「ナムウィキ」の鬼滅の刃カテゴリ

◆韓国でも人気沸騰中の『鬼滅の刃』

 「鬼滅の刃」の快進撃が続く中、韓国でも12月に映画上映が決定し、韓国のファンたちが狂喜乱舞している。

 韓国ではかつて、主人公・竈門炭次郎が着用しているイヤリングのデザインが旭日旗に酷似している点、舞台設定が大正時代であるのに日本刀を武器とすることから「右翼漫画」であるとして物議を醸したが、そのようなことはもはや大きく問題視されていない。

 実際に韓国のSNS上のコメントでは、

「鬼滅を見るたびに胸がアツくなると同時に悪口も言いたくなる クソ日本クソ、謝罪しろ」

「実際、まだ鬼滅は…はい、好きです。でも旭日旗のせいでやめました。でも鬼滅を絶とうとしても絶てませんでした」

など、日本への複雑な感情と、作品の抗い難い魅力のはざまで混乱する様が見て取れる。

 それどころか、日本のファンに負けず劣らず作品に対して真摯に向き合っており、韓国の百科事典サイト「ナムウィキ」では作品について膨大な分量での分析と考察が掲載されている。

 特に作品設定の穴に関しては日本でも指摘されたが、ナムウィキでは「そこまで真面目に突っ込まなくても……」と思わざるを得ない熱量で作品の矛盾点が指摘されており、そのカテゴリの数は46にものぼる。

 

 一部抜粋してみよう。

◆時代考証の穴と他のジャンプ作品との酷似

(以下、ネタバレ要素を含みます。十分にご注意ください)

・時代考証(大正時代)が正しくない

「これを韓国に当てはめるならば、朴正煕時代(60〜70年代)に両班が主導する武装集団が刀を持ってソウル市内をなんのおとがめもなく練り歩き、道端では80〜90年代の流行の服装をし、鉄工所ではなく朝鮮時代式の露天精錬所で剣を叩き、今だにキーセン部屋が流行しているというレベル」

「廃刀令が発令されたのに帯刀はおかしい。近代日本は西南戦争の余波で不法武装団体に敏感だったからだ。厳然たる戦犯国である日本帝国の悪名があまりに高いため軍隊と警察を排除したことは不必要な論争を避ける態度にも見て取れるが、それならばそのまま近代以前に設定すれば良いことだ」

・使用武器への疑問

 作中では、日光をため込んだ鉄で打った「日輪刀」でのみ鬼を倒すことができるという設定だ。それに対しては以下のようにツッコまれている。

「(※日輪刀の素材で作ったモーニングスターのような武器を使用)する悲鳴嶋行冥が鎖とオノを振り回すのを見ると全集中の呼吸が剣術にのみ適用されるわけではない。しかし鬼殺隊は千篇一律的に剣、剣、剣だ。(中略)呼吸の才がなくても銃を使えば弱い鬼程度なら倒せる。産屋敷家が銃器を量産する程度は容易いはずだ。(中略)このようなことを試みずに血刀や痣にのみ頼るのは逼真性に乏しい演出だ」

「いや、それを言ったら終わりなのでは」と言わざるを得ないが、ディープなオタクであればあるほど作品の矛盾点について熱弁したがる心理は理解できなくもない。

 また、日本でも「ジョジョの奇妙な冒険」に設定や台詞、展開が酷似しているという「疑惑」が取り沙汰されたが、韓国でも同様だった。

「名台詞にはジョジョから借用したものが非常に多い。特に後半は展開からそっくりそのままジョジョのオマージュである。重要キーワード、設定、台詞、ニュアンスが全て被っており、著作権剽窃の指摘を免れることはできない」

 20年来の日本の漫画ファンである韓国人男性A氏も、このように話す。

「こんなに似ているのに訴訟沙汰にならないのは、同じ雑誌だからでしょうか? ジョジョ好きだった私からすると腑に落ちませんが、それほど日本の漫画家の才能が連綿と受け継がれているということなのでしょうね」

◆「刀の形が韓国起源」という指摘も……

(引き続き、ネタバレ要素を含みます。十分ご注意ください)

 また作中、竈門炭十郎(炭次郎の父)が鬼撃破のための重要な技の原型となる「ヒノカミ神楽」を踊る場面がある。それについてもこのように言及されている。

 「原作では枝が8個ついた剣を使用していたが、アニメでは7つの枝がある七支刀に変更されていた。問題はこの七支刀が下賜品なのか朝貢品なのかという点だ。そして日本に渡ったとしても韓国の文化的背景がある剣といえる」

 こうした、“韓国式”解釈は一転、キャラクター考察においては愛情に満ち溢れるものとなっている。だが、一部キャラクターについては愛が暴走したのか(?)辛辣な記述もある。

 そのうちの一人が炭次郎を鬼殺隊へと導く「冨岡義勇」だ。 

 鬼殺隊の中で最強を誇る9人の隊士を「柱」と呼び、その中の「水柱」である冨岡は凄絶な過去の体験と、入隊経緯が特殊であることの後ろめたさから感情と言語表現を極端に抑制しており、そのせいで周囲としばしば衝突する。要するに「コミュ障」のキャラクターである。

 こうした点から韓国のネット上では愛情を込めて「少し抜けてる無口な人」を表す「キブンイ」というあだ名で親しまれ人気が高い。

 ほかにも、「本人は大多数の人間とうまくやれていると思っているが、師匠である鱗滝、炭次郎などの例外を除いた全ての人間と仲が悪い」

「よほど気がつくか、炭次郎のようなかいがいしさがなければ彼とは付き合えない」などとも言及されている。

◆やや行き過ぎたイジリは愛情の裏返しか

 さらに、作品の矛盾点を指摘するカテゴリではその言動の不可解さを「知的障害レベル」とまで言及され、「障害者キャラクター」に分類されてしまっており、ややイジリが過ぎている感じも否めない。

 このようにナムウィキだけを見ると、ツッコミや無機質な評価が多いように錯覚するが、実際には韓国のファンのほとんどが掛け値なしの愛情と賞賛を送っている。

 また影の一番人気キャラクターと言っても過言ではない「サイコロステーキ先輩」は日本の呼称を踏襲して「キューブステーキ(※サイコロステーキの意)先輩」と呼ばれ、ファンによる韓国語吹き替えまで制作されるなど日本同様の盛り上がりを見せている。

 大手書籍販売サイトのレビューでも「とても面白いです」「泣ける」などというコメントが多数並び、おおむね肯定的に評価されていることは事実だ。

 映画が公開されれば、こうした熱が一層盛り上がるに違いない。

<文/安宿緑>

【安宿緑】

ライター、編集、翻訳者。朝鮮半島問題の他、日本の文化人類学、カルチャー、心理学系を取り扱う。米国心理学修士、韓国心理学会正会員。心理学的ニュース分析プロジェクト「Newsophia」(現在準備中)に参加。近著に「韓国の若者」(中央公論新社)。

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