奨学金満額借りて、卒業と同時に「900万円の借金」を背負った20代女性。今後20年に及ぶ返済生活と大きな不安

奨学金満額借りて、卒業と同時に「900万円の借金」を背負った20代女性。今後20年に及ぶ返済生活と大きな不安

画像はイメージ(adobe stock)

 日本学生支援機構によると、48.9%もの学生が利用しているとされる奨学金(数値は16年、同機構「学生生活調査」より)。

 我が国で奨学金とは借金と同義で、借りるだけ返済額も大きくなりますが、様々な事情で満額利用する人も。今年春、慶応大学を卒業した小鷹弥生さん(仮名)もそんなひとりです。

 東北で生まれ育ち、現在は東京で働く彼女。大学卒業から半年が経ち、返済が始まる前のタイミングで、その心境を聞きました。

◆卒業と同時に900万弱の借金

ーー最初にいくら奨学金を借りたか教えてください。

小鷹:第1種(無利子)が307万2000円で、第2種(有利子)が576万円。なので合計して883万2000円……およそ900万円弱ですね。私の場合は両方とも4年間、満額借りてるんです。正確に言うと第1種が6万4000円、第2種が12万円で、ふたつ合わせて毎月18万4000円です。

ーー月々の返済金額はいくらでしょう?

小鷹:第1種が1万2800円、第2種が2万4177円なので3万6977円……およそ4万円弱ですね。240回払いなので20年ですね、ちょうど。ちなみに返済は来月から始まります(取材は9月)。

ーー小鷹さんは東北出身とのことですが東京の大学を選んだ理由は?

小鷹:もともと東京の大学に行きたい、上京したいという気持ちが強かったんです。なので、行きたい学部があったというワケではなく、高1くらいまでは国立に行こうか迷っていました。親にも「国公立に行きなさい」と言われてましたしね。

 でも、「7教科を中途半端に勉強するよりは、3教科に絞ってもっと上の大学に行きたい」という気持ちから慶応を目指すことにしたんです。まあでも、なんとなく国立より私立のほうが『憧れのキャンパスライフ』ってイメージがあったのも正直ありますね。

ーー家庭環境的に奨学金は必須だったんでしょうか?

小鷹:そうですね。親と話した結果、「東京の大学に出るなら生活費は出せない」「学費も半分だけしか出せない」と言われました。より具体的な数字を出すと、年間約130万円の学費のうち、親が70万円を出してくれていたという感じです。

◆バイトに勤しんだ大学時代

 その後、満額の奨学金を借りて慶応大学に現役で入学した小鷹さん。奨学金を満額借りつつ学生生活を送ることになる。

ーー在学中のバイト事情は?

小鷹:当然してました。大学がある期間は週3程度で、最初のほうは朝6時から8時までカフェでバイトして、その後に授業に出て、みたいな。夏休みになるとほぼ毎日。朝の9時から夜の24時くらいまで働いていました。朝の9時から夕方まではサービス業で働いて、18時から24時までは飲食業みたいな感じですね。

 でも、そんなにしんどいなと思った記憶はないんです。ちゃんと寝る時間はあったし、不眠不休で働いてゼミの課題に追われて…というほどではなかった。

ーー生活は苦しかったですか?

小鷹:いえ、苦しいと思ったことはないんですよ。食べたいものを食べて、欲しいものがあったら買ってましたし。なので世間がイメージするような苦学生という感じではなかったです。そこは奨学金のおかげですよね……。

 ただ、長期休暇に友達同士で旅行に行くとかはなかったです。夏休みにまとめて働いて稼ぎたかったというのもあるし、誘惑が多い季節だから、バイトを入れることで散財を防いでいました。長期休みでなくても、友達の遊びに参加しないことも多かったです。

◆20年の返済生活を前に不安いっぱい

ーーその後、なんとか今の会社に就職。10月から毎月3万7000円を20年払う日々が始まりますが、正直どうですか?

小鷹:とても大きな金額だと感じます。毎月数万円とは言え、20年続くと考えるといい車を買ったようなものですからね。でも、奨学金を借りなければ進学もできなかったし、しょうがないなと思います。乗ることができないベンツでも買ったと思って生きていくしかない。

ーー今となっては「もう少し借りる金額を少なくしておけば」とは思いませんか?

小鷹:それは思いますよ、やっぱり。私が満額を借りることにしたのは「できるだけ多めに借りておこう」と思ったことが理由なんですが、今思えば間違いだったんじゃないかって。実際18万4000円もなくてもバイトすれば生活できるじゃないですか。

ーーそうかもしれません。

小鷹:でも、高校時代にはそれがイメージできなかった。

 それに、普通は、社会経験のない22歳の若者が、何百万円も借金することってできないと思うんですよ。でも、奨学金ってそういうことじゃないですか。貸しちゃう側への不満じゃないですけど、「そんな簡単に高額の借金を背負わせちゃうのってどうなんだろう」って。返済生活をリアルに想像できる高校生なんていませんよね? もちろん、お金を借りないと学校に通えなかったので感謝はしてるんですけど……複雑ですよね。

ーー貸す側にも問題があるのではないかとのことですが、親御さんにもう少し出してもらうことはできなかったんでしょうか?

小鷹:んーどうだろう……今思うと、金銭的な余裕が全くないという感じではなかったと思うんですよ。でも、お金のことに関しては「私からはあまり言いたくないな」って気持ちがあって。というのも家族がお金のことで喧嘩しているのをよく見ていたんですね。当時は「なんで私が割を食わないといけないんだ」って思ってて、だからこそ家族に頼りたくない気持ちが強かった。そういうのに向き合うストレスが、まだ高校生だった私にはとても大きかったんです。

ーーなるほど。

小鷹:受験生時代に一回だけ「塾に行かせてほしい」って言ったこともあったんです。その時、かなり勇気を出して言ったのにアッサリと「お金ないから無理」って言われて、そこで一度心が折れているのもあります。私みたいな人って結構いるんじゃないかと思いますね。

ーー返済生活が始まりますが、今の心境は?

小鷹:正直将来のことは考えていないです。就活時に貯金が尽きてしまった関係で、そもそもお金もないから考える余裕がないというのもあります。

 でも、逆に引かれたら引かれたでなんとか対応できる気がするんですよね。支出も自然と減ると思うので。毎月4万弱なので、決して少ない金額ではないですが。いずれにせよ、とても不安なのは間違いないです。

◆「給付ではなく貸与」は日本特有

 「奨学金を借りて返す」という感覚が一般化している現在の日本ですが、海外では奨学金と言えば基本的に返済不要のものを指します。それに対して、返済が必要なものをローンと呼び、明確に区別されています。金利がつく第2種奨学金は、海外では実質的に学資ローンなのです。

 海外に比べ、「教育は自分のためになるのだから、自分たちで費用も賄うべき」と考える人が多いとされる日本ですが、社会全体を底上げするのもまた教育でしょう。そこに税金を投入することは、本来おかしいことでもなんでもないはずです。

 小鷹さんも大学時代、自ら調べて日本の奨学金事情の特有さを知ったとそう。社会人になった今、彼女はこう述べます。

小鷹:日本は教育に投資しようという気持ちがまったく感じられないですよね。そして、それが結果的に多様な生き方を妨げている気もします。返済するためにはいい会社に入る必要があるし、会社員を続けるのがいい。もし起業したいとか思っても、なかなかリスクを取れなくなると思うんです。私はもともとやりたかった仕事につけたのでそこは良かったんですけど、今後の日本を考えると、もっと若者にお金を遣ってあげてほしいと感じます。と同時に、借りようとしている高校生は本当によく考えてほしいです。

 将来に大きな不安を抱えつつも、今のところは「なんとかなる」という心境の小鷹さん。はたしてどんな返済生活になるのか。半年後くらいにまたインタビューさせてもらう予定です。

<取材・文/岡本拓>

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