「休憩なしで13時間勤務、有給なんてもらったことない」のに「神バイト」? 無知につけこまれ搾取される大学生アルバイト

「休憩なしで13時間勤務、有給なんてもらったことない」のに「神バイト」? 無知につけこまれ搾取される大学生アルバイト

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 学費の支払い、生活費の支払い、友人との交際費…お金を稼ぐために、大学生活にとってアルバイトはほぼ不可欠の存在と言っても良い。実際に独立行政法人日本学生支援機構の平成30年度学生生活調査結果によれば、全国の大学生の86.1%がアルバイトをしている。しかしながら、社会経験の少ない大学生アルバイトたちが、違法状態で都合良く使われるケースが後を絶たないという。

「立教大学法学部消費者法ゼミ(細川幸一兼任講師)のゼミ生有志が、学生アルバイトの労働条件通知書、残業時間の賃金支払い、有給休暇取得の3点について実態を調査した」という記事が10月22日東洋経済オンラインに掲載され、違法状態で使われる大学生アルバイトの姿が明らかになった。そこで大学生アルバイトの実態を調査するため、実際にこの春までアルバイトをしていたという2人に話を聞いた。

◆「勤怠は15分おき、着替えてからタイムカードを押すように」

 まず、話を聞いたのは都内の映画館で働いていたという堺真美さん(仮名・23歳)。大学2年生から大学4年生まで都内の映画館でアルバイトをしていたと話す。

「単館系の映画館でアルバイトをしていました。出勤時と退勤時にタイムカードを押すのですが、給与に反映されるのは15分単位でした。例えば9時50分に出勤したらお給料が出るのは10時00分から。16時59分に退勤したらお給料が出るのは16時45分まで、という感じです」

 また、入社する際に「出勤の5分前までには着替えを済ませてタイムカードを押すように」と言われたという。そのときに違和感を覚えなかったのだろうか。

「着替えの時間がお給料に含まれないのは、普通だと思っていました。それまで働いていた飲食店でもその時間は勤務に含まれていなかったので。塾でアルバイトをしている友達が『授業の準備時間の分はお給料がもらえない』と嘆いているのを聞いていたので、むしろ自分のアルバイト先はちゃんとしているんだなとすら思っていました」

◆原則は「1分単位」で支払わなければならない

 労働基準法第24条(賃金全額支払い)によれば、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない(以下省略)」とされている。

 しかしながら、行政通達により1カ月の時間外労働時間を計算するときに1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは事務簡便を目的として認められている。例えば、1カ月に働いた時間の合計が50時間20分であった場合、端数の20分を切り捨ててもよい。とはいえ、あくまで端数を切り捨てることは推奨されているわけではなく、「1分単位」で支払うのが原則だ。

 堺さんに上記の事実を伝えると、少し考え込む様子を見せた。

「絶対に30分以上のお給料を切り捨てられていたと思います。でも私1人が『不当だ』と訴えたところで、どうにかなるものなんですかね?むしろ煙たがられてアルバイト先での人間関係が良くなくなったらと思うと、私には言えないと思います」

 立教大学法学部消費者法ゼミの調査でも、賃金支払いの単位時間は15分が35%という結果が出ている。決して少なくはない数字だ。また、1分単位で給料が支払われていない割合は60%にものぼる。これほど多くの大学生が不当に搾取されているということだ。

◆「休憩なしで13時間勤務、有給なんてもらったことない」

 次に話を聞いたのは、都内のラーメン店で約2年半アルバイトをしていたという斉藤涼太さん(仮名・23歳)。

「忙しいときは休憩時間なしで10時〜23時まで働いていました。タイムカードの出勤時刻が30分単位だったので、10時01分になったら10時30分からしか給料はもらえませんでしたね。2年半働きましたが、有給をもらえたことはないです」

 それほど劣悪な労働環境で、不満を感じたことはなかったのだろうか。そう尋ねると、驚きの答えが返ってきた。

「いや、まかないがタダだったので“神バイト”ですよ」

 話を聞くと、斉藤さんが働いていた店のアルバイトは全員大学生だったという。一人暮らしの学生に「まかない」という甘い蜜を吸わせて不当に働かせる…ここまで来るともはや洗脳に近いのではないかという気すらしてくる。

◆意外と知られていない「比例付与」

 労働基準法39条には、「雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定められている。これは基本的に週所定労働時間が30時間以上、または週所定労働日数が5日以上のアルバイトに適用されるものだ。

 しかしながら、週に30時間以上、または週5日以上働いていないアルバイトに有給休暇は与えられないのかというとそうではない。「週所定労働時間が30時間未満で、なおかつ週所定労働日数が4日以下のアルバイトやパートに適用される」、「比例付与」というものがあるのだ。例えば週に3日アルバイトをした場合、全所定労働日数の8割働けば半年後には5日の有給休暇が与えられる。

 立教大学法学部消費者法ゼミの調査でも、6カ月以上勤務する学生124人に取得経験の有無を聞くと、「ない」が74%、「ある」が26%という結果になった。また、同調査で賃金の支払いについての学生の意識を聞いたところ、1分単位でないにもかかわらず「特に何も思わない」という回答が過半数を超えていた。これでは大学生はずっと「搾取される」立場になってしまう。

 本来であれば雇用主側が適切にアルバイトを働かせるよう変わっていくべきだ。しかしながらこういった実情がまかり通っている現在、雇用主側が変わることを期待できないということもまた事実だ。悲しいかな、搾取されないためには私たちが「知り」、そして「行動する」しかないのだ。

<取材・文/火野雪穂>

【火野雪穂】

97年生まれのフリーライター。学生時代から学生向けメディアの記事作成などを行う。今春大学を卒業したばかりだが、いきなりのコロナ禍で当惑。

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