ついに始まった人気パチスロ「神々の凱旋」撤去。ファン、店舗、業界全体の交錯する想い

ついに始まった人気パチスロ「神々の凱旋」撤去。ファン、店舗、業界全体の交錯する想い

photo by 栄華

◆始まった「神々」の撤去

 全国のパチンコ店から「ミリオンゴッド〜神々の凱旋」(以下、「凱旋」)が消える。

 登場から6年、ファンから圧倒的な支持を受けてきた「凱旋」の魅力は何と言っても他の遊技機の追随を許さない出玉の爆発力。一撃2万枚(40万円相当)の実戦データもあり、パチスロファンにとっては真にハイリスクハイリターンを形にしたような夢多き遊技機の代表格でもある。

 しかしギャンブル等依存症対策の一環により、2018年2月に遊技機の射幸性(≒ギャンブル性)の抑制を目的とした遊技機規則等の改正が行われ、それ以前に設置されていたいわゆる「旧規則機」の撤去が決まった。すべての旧規則機は都道府県公安委員会が定めた設置期限を迎えた段階で、有無を言わず撤去されなくてはならなくなった。またこの規則改正とは別に、パチンコ業界独自のギャンブル等依存問題対策として、2万枚以上の出玉実績のある遊技機を「高射幸性遊技機」と規定し、全国のパチンコ店は段階的な撤去を推進していた。

 このような施策が実施され、数々の旧規則機・高射幸性遊技機が撤去されていくなか、遂に「凱旋」が撤去の期限を迎える事になったのだ。撤去の期限は都道府県により異なるものの、11月1日の石川県から始まり、11月の中下旬にかけて定められている。(※大阪府のみ12月下旬から1月中旬にかけて撤去予定)

 Twitter等のSNSではパチスロファンによる、別れを惜しむ「凱旋卒業式」投稿が多く見られるようになったが、この「凱旋」の撤去を巡っては、パチンコ業界にとっても様々な事情が交錯しているようで−

◆「凱旋」なき後のパチンコ店経営

 「凱旋」はこの6年間、パチンコ店の粗利を支え続けた営業の主軸であった。一説によれば、「凱旋」の台毎の日粗利は平均して5000円〜6000円と言われている。この粗利を6年間稼ぎ続けてくれた遊技機が撤去される。規則等の改正により新たに設置が出来るパチスロ機は「6号機」と呼ばれるもので、既に市場に多く投入されている6号機の平均台粗利は1日2000円〜2500円程度である。稼働(人気)に比例して伸びる売上は勿論のこと、営業上は売上よりも大事な粗利が5〜6割程度削られるのだ。

 ましてコロナ禍によりパチンコ店の集客や稼働は著しく低下している。「凱旋」の撤去は、パチンコ店にとって泣きっ面に蜂。

 「現行機で『凱旋』に勝る遊技機は無い。『凱旋』が撤去されれば、パチスロの業績は大きく下がることは火を見るより明らか。年末のリニューアルのタイミングで、(パチスロ島から)比較的好調なパチンコ島への転換も考えています」というのは都内のパチンコ店店長の言葉。

「凱旋」との別れを惜しんでいるのはファンだけでは無い。いやファンよりもパチンコ店の方がその別れの辛さを奥歯で噛み締めている。

◆「2つのルール」で揺れる業界にとっての「凱旋」撤去

「凱旋」を巡っては、店舗レベルではない、パチンコ業界全体の視野においても少なからず他の遊技機にはない事情がある。

 先述した通り「凱旋」の撤去には、2つの「ルール」が並行して適用されている。

 一つは遊技機等規則の改正−要は法律変更による撤去。もう一つは高射幸性遊技機の優先・段階的撤去の取り決めという自主規制。似て非なるこの二つのルールが「凱旋」撤去に関わる問題を複雑にしている。

 何が複雑なのか。

 実はコロナ禍による社会生活の変化を受け、本年5月、国家公安委員会規則が改正され、旧規則機の設置期限が1年間延長されたのだ。その背景にはメーカーによる新台供給の停滞、遊技機入替による人の接触機会の低減等があげられるが、5月の規則改正だけを見れば、「凱旋」の設置期限も2020年11月から2021年11月に延長されたことになる。

 しかしパチンコ業界内の関連団体で構成される「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」では、国家公安員会規則が改正されたにも関わらず、高射幸性遊技機である「凱旋」は本来の設置期限満了をもって撤去するよう推し進めている。万が一、「凱旋」を撤去しないパチンコ店があれば、業界独自のペナルティを課すことも辞さない強硬な姿勢を見せている。

◆「6号機」の規制緩和の議論を見据えた「自主規制」

 幾つかの業界関連誌を読めば、「凱旋」の撤去に関してダブルスタンダードが適用される事情がおぼろげながら見えてくるのだが、要は「凱旋」を始めとした高射幸性遊技機の撤去は、ギャンブル等依存症対策を推進する警察行政も望んでいることであり、警察庁としては、他の遊技機の撤去期限はコロナ禍を考慮し設置期限を延長するが、こと高射幸性遊技機に関してはあくまで業界内の自主規制をもって撤去を強く推進してほしいという考えがあるのだ。

 パチンコ業界にとっても、高射幸性遊技機の全撤去が完了して初めて現行機である「6号機」の仕様に関する規制緩和を議論のテーブルに乗せることが出来ると考えている。短期的な視点で考えれば「凱旋」の撤去は痛手ではあるが、中長期的な視点では業界浮上のきっかけになるという思惑が見え隠れする。

「ミリオンゴッド〜神々の凱旋」という名のパチスロ機。

 パチンコ業界を代表する名機の撤去の陰では、ファンのみならず、パチンコ業界に関わる様々な人たちの想いが交錯している。

<文/安達夕 写真/栄華>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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