「このままでは死んでしまう……」コロナでさらに困窮する、在留資格のない外国人のための相談会実施

「このままでは死んでしまう……」コロナでさらに困窮する、在留資格のない外国人のための相談会実施

相談のためのテントが10以上も並んでいいる

◆在留資格のない外国人に対して、初のワン・ストップ相談会

 11月1日午前10時。埼玉県のJR川口駅前のキュポ・ラ広場で、生活に困窮している外国人を支援するための相談会が実施された。特に、在留資格のない、あるいは失ったり付与されなかったりした外国人を対象にしたものだ。

 筆者が現場に着いたのは12時ころだったが、驚いた。相談のためのテント・ブースが10以上も並び、広場全体が相談会場となっていたからだ。外国人の数はざっと数えて100人以上いる。

 筆者はてっきり、テントが1つか2つだけのこぢんまりとした医療相談や生活相談を想像していた。今回の相談会は、そういった医療相談、生活相談、法律相談、現金や物資など、必要な支援がその場所で一度に済む「ワン・ストップ」相談会だったのだ。

 在留資格のない外国人に対してのワン・ストップ相談会は全国的にもこれが初めてとのこと。相談会の運営主体は「クルド人の生存権を守る実行委員会」で、発起人のひとりである市民団体「クルドを知る会」の松澤秀延さんによると、これだけ大規模な相談会にかけた準備期間は「1か月もなかった」という。松澤さんがここ最近抱いていた憤りと焦りが早急な実現へと導いたのだ。

◆相談者に共通しているのは「お金がない」ということ

 埼玉県川口市や蕨市には、トルコ国籍のクルド人が約2000人住むといわれている。クルド人の文化を日本に伝える一般社団法人「日本クルド文化協会」によると、そのうちの3割以上が「仮放免」状態に置かれている。

「仮放免」とは、在留資格のない外国人が「母国に送還される準備が整うまで、就労禁止をルールに日本に滞在できる措置」のことだ。就労禁止だけでも生存権を脅かすものだが、健康保険にも加入できないため、自由診療となるため10割から20割以上という高額な費用を払わねばならない。結局、病院に行かずに症状を悪化させる人は少なくない。

 それでも、川口市や蕨市にはクルド人コミュニティがあることで、仕事がある人は収入のない家族を支える文化もある。

 また、「クルドを知る会」は2007年の設立以来、在日クルド人と日本人の相互理解の促進に努めてきた。彼らの窮状を知るにつれ、その活動は彼らの生活相談や生活支援、入管の収容施設に収容されているクルド人の面会活動などの支援活動にも広げてきた。特に、生活困窮者には食料品や民間の支援金を配布する支援活動も実施している。

 こうした共助と民間支援で、クルド人たちはなんとか生活ができていた。

 ところが、今年に入ってからのコロナ禍で彼らの仕事(主に解体業や建設業)が激減する。さらに、仮放免者には10万円の特別給付金は支給されない。そしてもうすぐ冬がやってくるが、コロナが再燃してますます仕事が減っている。

 このままでは彼らは死んでしまう。その恐れから「クルドを知る会」は関係団体と話し合いを重ね、急きょ今回の相談会の実現にこぎつけたのだ。参加団体は、クルド難民弁護団、反貧困ネットワーク、NPO法人ほっとプラス、埼玉県民主医療機関連合会、移住者と連携する全国ネットワーク貧困対策PT、ふーどばんく埼玉など14団体だ。

 

 川口市でのイベントということもあり、来訪者はクルド人が多かった。来訪者はまず受付テントで自身の境遇を説明し、その内容によって各ブースに割り振られていた。

 だが相談内容がどうあれ、相談者に共通しているのは「お金がない」ということだ。ある男性の財布には数百円しかなかった。相談表にも所持金が数千円、ゼロ、さらには借金30万円などの数字が記載されていた。家賃滞納1か月や3か月という人もざらで、大家やまた貸ししている知人から立ち退き要請を受けている人もいた。

 会場には、120世帯の約300人が来場。なかにはお金がないため、何kmも歩いて来場した人もいた。多くの人が明日食べるものの心配をしていた。

◆仕事がない、家賃が払えない、このままでは生きていけない

 筆者がその会場で目にした事例をいくつか紹介する(会場内での撮影・録音・当事者への取材は禁止されていたので、見聞きした内容に限る)。

@昨年末に来日したクルド人夫婦。難民申請をしているが仮放免なので仕事にもつけず、定額給付金の10万円も受け取っていない。知人の支援でなんとか生きているが、7万円の家賃を3か月滞納しているので立ち退きが迫っている。スマホはあるが電話番号がないため、連絡するにはWifiのある場所LINEかFacebookを利用するしかない。

A今年3月に来日したクルド人家族(夫婦と3歳の息子)。難民申請はしたが、現在「特定活動3か月」という在留資格で暮らしている。特定活動には「6か月」もあるが、その場合は就労可能で健康保険にも加入できて住民票も取得できる。だが「3か月」では、そのすべてがない。在留資格があるとはいっても、生活の厳しさは仮放免とほとんど変わらない。

 住民票もないため、10万円の特定給付金も受け取っていない。一家の所持金は5000円。5万円の家賃を1か月滞納しているため、先日、大家から督促状が来た。妻は「子どものミルクやオムツも買えません」と訴えていた。

B50代のクルド人男性。来日は古いが、茨城県牛久市にある入管の収容施設「東日本入国管理センター」に2016年から4年間収容され、今年出てきたばかりだ。長期の収容を強いられた外国人はほとんどが心身のバランスを崩すが、その例外にもれず、高血圧と白血球増加の治療のために通院している。

 だが仮放免者には健康保険証がないため、1回の治療で2万円前後を払っている。「特定活動6か月」の在留資格を持つ娘が働いているが、その治療費や親戚からの借金30万円の返済のため貯金はない。

C今年来日したばかりの40代のクルド人男性。川口市や蕨市でコミュニティを作っているクルド人とは同じトルコでも出身地が違うため、知人が一人もいない。難病の子どもの治療費を稼ぐために単身来日した。

 だが、与えられた在留資格は「特定活動3か月」。来日直後から始まったコロナ禍による不況とも合わせ働くことができない。このままでは息子の治療どころか自分も生きていけない。現在は、知人からアパートを又借りしているが、家賃を2か月滞納しているため立ち退きを迫られている。せめてシェルターに行きたい。

◆相談会を拡大させるためには、さらに費用が必要

 これらの相談に対して、相談員はすぐに「あなたは医療ブースに行ってください」、「あなたは法律相談ブースへ」と指示を出していた。

 たとえば医療が必要な相談者は、埼玉県民主医療機関連合会(民医連)のブースに赴き、医療従事者や福祉ワーカーに病状を説明する。ただし医療従事者は、医療施設以外での診察や治療は法律上認められていない。そのためスタッフは来訪者の病状や生活環境を把握すると、信頼できる無料・定額診療施設などの医療施設への紹介状を書いていた。

 スタッフの一人は「大切なのは、ここでつながった彼らをこの先も支援することです。B型肝炎の人もいたのに、来日以来病院に行けていないという現実はあまりにも過酷です」と語る。

 特に長い列ができたのは生活支援ブースだ。相談員のひとりである「反貧困ネットワーク」のスタッフは、その相談内容に応じて、「わかりました。では一緒に生活保護の申請に行きましょう」と約束し、所持金がほとんどない人にはその場で数万円の緊急給付をし、リンゴやバナナなどの食糧支援も行っていた。また別のブースでは、子供や大人のオムツや冬服の古着なども配布していた。

 当日の会場では、在日年数が長く日本語を話せる複数のクルド人も通訳として活躍していた。その一人が、気づくと相談の列に並んでいた。

「じつは、オレもお金がなくて……」

 その通訳を知る、解体業を営むクルド人も「コロナが始まってから仕事が減ってしまって、仲間に仕事を紹介できない。それどころか、私自身の収入も以前の半分もないよ」と悲嘆していた。

 朝10時から始まった相談会は16時に終了となった。松澤さんに話を伺うと「ワン・ストップ相談会はまたやります」と明言した。

「今回は主にクルド人が対象だったけど、今は、ベトナム人も中国人も困っている。留学生はアルバイトもできなくなり、酷使される技能実習生もいる。今後は彼らを支援する団体とも連携し、もっと広く支援をしていきます。今日は出発点です」

 日本政府が在留資格のない外国人の生活を軽視するのは悲しいことではあるが、今回は、この相談会に100人とも言われる市民がスタッフとして関わった。これは明るい材料だ。

 このワン・ストップ相談会を拡大させるために、必要となるのは資金だ。たとえば、「反貧困ネットワーク」では、コロナ禍で生活が困窮した日本人や外国人を支えるための「緊急ささえあい基金」への寄付を随時呼びかけている。

 筆者が読者に望むのは、遠い国にいる難民に手を差し伸べることに加えて、足元にいる難民(申請者)にも目を向けてくれることだ。

<文・写真/樫田秀樹>

【樫田秀樹】

かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。

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