コロナ禍のディズニーリゾートで起きていること。パレードの出演者たちが涙の訴え。

コロナ禍のディズニーリゾートで起きていること。パレードの出演者たちが涙の訴え。

コロナ禍で休園を余儀なくされた東京ディズニーランド。(時事通信社)

◆コロナ禍のディズニーリゾート

 ディズニーランドといえば誰もが憧れる「夢の国」ですが、残念ながら労働問題と無縁ではいられません。2017年には、“着ぐるみ”を着てショーやパレードに出演していた女性が、左腕の激痛を訴えて労災認定されています。

 また、コロナウイルスの感染拡大を受け、同園は今年2月末から約4か月間休園していました。そのあおりを受けて、同園を運営するオリエンタルランドの社員約4000人は、冬のボーナスを7割も削減されています。

 さらに、コロナ禍でショーやパレードの多くが休止になっていることから、出演者らは苦しい選択を迫られています。ショーの出演者として働く岸本さやかさん(仮名)と岸本さんが相談した「なのはなユニオン」の鴨桃代委員長に話を聞きました。

◆退職を迫られる出演者

――4ヶ月の休園中、キャストの方の雇用はどうなっていたんですか。

岸本:仕事はなく、給与補償は平均賃金の6割だと言われました。ショーに出演するキャストはほぼ全員が、時給で働いていて、6割だと月収が5〜6万円にしかならないんですよ。なので、ユニオンと一緒に会社に対して2度の要請行動を行った結果、8割の補償になりました。それでも月収は10万円にもなりません。

――かなり生活は苦しくなりますね。

岸本:会社から「絶対にコロナに感染しないように」「いつでも働けるようにしておいて」という連絡が来ていたので、他の仕事をしたくてもできませんでした。キャストの中には、どうしても生活費が足りず、日払いのアルバイトで補填している人もいたようです。

――再開後、キャストに対する「退職強要」ともとれる要請があったとのことですが。

岸本:会社からキャストに対して、3つの選択肢が提示されました。一つ目は、9月末で退職すれば80万円の支援金がもらえるというもの。二つ目は、3月31日の契約終了まで続けられるけれど、ダンサーは月に40時間までしか働けず、その後の契約は更新してもらえず、支援金もナシ。キャラクター出演者は月50〜100時間までしか働けず、契約を更新してもらえるかどうかは不明で、支援金もナシ。そしてもう一つは、いったん退職して、新たに「一般」キャストとして採用されることになるので、時給930円の試用期間からスタートとなります。

――一般のキャストというのはどういった仕事をするのでしょうか?

鴨:エンターテイメントの部署ではなく、ガイドやアトラクションの説明をしたり、駐車場の整理をしたり、ゲストと相対する仕事です。オリエンタルランドは業務によって契約内容を変えているので、一度退職してから、再雇用という形になるようです。

――ダンサーやキャラクター出演者の皆さんはこうした選択肢を突き付けられて、どのように感じていますか?

岸本:ここで働いている人には、「ディズニーの出演者」になるために努力を続け、オーディションを突破してきた人たちも少なくありません。私たちにとって、提示された選択肢はいずれも「ディズニーランドのショーに出演する」という夢を絶たれてしまうことになります。

◆夢の国における労働問題は以前から

――同社の雇用の問題は、今回に限ったことではないそうですね。

鴨:理不尽な理由で、雇い止めを通告されたキャストがいます。例えばAさんは、「顔が怖い」という理由で雇い止めを通告されました。チームリーダーが休みの日に、若いBさんがその代わりを務めることになったのですが、Bさんが不安そうだったので、Aさんは「大丈夫かな」と思って、Bさんを見ながら働いていたそうです。するとBさんが「Aさんの顔が怖い」と上司に訴え、Aさんは呼び出されて、注意を受けました。

 さらに翌朝、Bさんに会った際にAさんが謝ると、Aさんはまた上司から呼び出され「本人が怖がっているんだから、謝りたかったら上司を通してくれ」と。その度に「指導確認書」というのを書かされました。それが3枚溜まったので年末に辞めてくださいと。

 また、ある男性キャストは、園内で風船を売っていた時に、お金をカウントする機械が壊れてしまいました。客が並んでいたので仕方なく手計算でその場をしのぎ、会社に報告すると、「マニュアルに沿っていない」という理由で雇い止めを通告されました。こちらの男性も、顔が怖いと言われた女性も、組合が雇い止めの理由がないと交渉を行って、雇い止めは撤回になりました。

――岸本さんは、指導確認書を書かされたことは?

岸本:私がやったことじゃないのに書かされそうになったので、断固拒否をしましたね。「これを書いたら、辞めさせられちゃう」と思って。指導確認書って、本当に理不尽ですからね。ゲストの方がご自身でカメラを落としたのに、キャストが指導確認書を書かされたりとか。あと、子供が着ぐるみに向かって走ってきて転んじゃったのも、キャラクター出演者のせいにされ、指導確認書を書かされていました。

――他にはどういった問題がありましたか?

鴨:6時間勤務の退勤直前に、残業してくださいと言われることが多かったようです。たとえば朝9時から働き、15時の退勤直前に残業依頼がくる。この間は休憩なしなので、少し休みたいので、「休憩を取ってからやりたい」と申告すると「では、残業やらなくていいです」と言われるそうです。これは違法です。6時間以上働く場合は、残業を命ずる時でも、45分以上の休憩を入れないといけないので。明らかな違法状態だったので交渉で、すぐに会社は認め、改善しました。

◆夢を壊さないために語れない

――そんな状態でも、なぜ声をあげられないのでしょう?

岸本:守秘義務があって、それにがんじがらめにされちゃっています。入社の時に誓約書を書くんですが、それで「仕事の話を人にしてはいけない」とみんな思っています。私は家族にも友達にも仕事の話をしておらず、家族は、私が何の仕事をしているか10年以上知りませんでした。

――誓約書に法的実効性はあるのでしょうか?

鴨:業務内容に関しては守秘義務にあたるかもしれませんが、労働条件について話すことは守秘義務違反ではありません。OLCで働く人は、自分の労働条件を話すことも守秘義務違反だと思わされている。

――洗脳されているような状態ですね。

岸本:「夢を守る」ために守秘義務が厳しくなっています。声をあげると、今働いているキャラクター出演者の中には「夢を壊した」と感じる人がいるようです。私たち出演者は、「キャラクターであって人ではない」という考え方なので、怪我をしてもパワハラを受けても、言えないんですよね。

――キャラクターの中に、人は入っていないというファンタジーを守らないといけないんですね。

岸本:実際には、キャラクターの中には人がいて、皆と同じ労働者なんですけど、それを言うことがあまりにもタブー視されすぎているんですよ。内部だけじゃなくてゲストもそういった感覚なので、声を上げると同僚からもゲストからも「夢を壊された!」って攻撃を受けることも多いですね。なので、内部で起こっていることが出せなくなってしまっています。

鴨:ゲストも働く人も、ディズニーランドに夢を求めています。夢の国を維持するために、リアルな現実は夢の国にふさわしくないとされて、働く人への不当な扱いが表に出にくい。だからこそ組合は「業務荷重がない、パワハラがない、本当の夢の国にしよう!」と舞浜で声を上げ続けています。夢の国に相応しい労働条件、キャストへの扱いが実現することを願ってやみません。

<取材/HBO編集部>

<構成/Mr.tsubaking>

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