詐欺業者が跋扈![持続化給付金]申請代行を直撃

詐欺業者が跋扈![持続化給付金]申請代行を直撃

サラリーマンながら、副業で持続化給付金の申請代行に手を出した藤木さん。一人で1000万円以上の副収入を得ることに成功した

 収入が半減した人を支援するための持続化給付金が全国で悪用されている。不正摘発の多さから“自首”する人まで続出しているが、いかにして彼らは不正に手を染めたのか? 指南役と言える申請代行業者を直撃した。

◆1億円バラ撒きキャンペーンを悪用して給付金を詐取する輩

 持続化給付金制度が今なお悪用されまくっている。昨年の収入を偽り、不正に100万円をゲットする輩が跋扈しているのだ。7月に山梨県の学生が詐欺容疑で逮捕されて以降、摘発された人数は延べ70人超。こうした報道を受けて今、6000人を超える不正受給者が「返金」を申し入れる事態にまで発展している。数十人の返金手続きに携わった税理士が現状を語る。

「ほとんどが『いつ逮捕されるかわからないので一刻も早く返したい』と駆け込んできた20代のサラリーマン。親にバレて、連れてこられた人もいました。手口はどれも一緒で、メルカリなどで得た昨年の収入を水増しした雑な確定申告書を税務署に提出して、その申告書をもとに持続化給付金をもらうというもの。この申告内容を正すには、結構な手間がかかるんです。水増しした経緯を詳述した書類を作成して税務署に提出し、判をもらった書類を弁護士に渡して初めて返金手続きが可能になる。費用は約30万円、返納するのに2か月かかります」

◆「持続化給付金」不正摘発の数々

7月22日

山梨 詐欺容疑で埼玉在住の男子大学生を山梨県警が逮捕

9月

京都 20代と30代の男2人を逮捕。被害総額は4億円超

沖縄 税理士2人が1800件の虚偽申請に関与し5億円超の報酬

沖縄 『沖縄タイムズ』社の40代社員が不正受給で逮捕

千葉 男子大学生が逮捕。同県で初めての摘発

愛知 愛知大野球部所属でドラフト候補だった男ら2人を逮捕

東京 男3人を逮捕。1億円以上を不正受給

10月

広島 詐欺の指南役など4人を逮捕。被害総額は1000万円超

福島 暴力団幹部を含めた男2人を逮捕。同県では初

兵庫 170件の不正受給の申請を代行した2人を逮捕

京都 指南役に加えて同志社大学の学生ら計5人を再逮捕

山梨 不正受給の手口を指南した疑いで20代の男女5人を逮捕

滋賀 知的障害者の男性が不正受給させられていたことが発覚

東京 詐欺の疑いで少年2人を含む男6人を逮捕

広島 100人分、計1億円の虚偽申請を行った男女4人を逮捕

東京 元暴力団員ら2人を不正受給の疑いで逮捕

群馬 自称コンサルタントの男を逮捕。同県初の摘発

熊本 詐欺容疑で男6人を逮捕。九州初の摘発

11月

京都 共謀して不正受給を繰り返した学生ら3人を逮捕

神奈川 不動産役員ら4人を逮捕。被害は6000万円以上

鹿児島 千葉の学生を逮捕し関与した鹿児島の学生を取り調べ

◆申請代行で1000万円以上の副収入を得た男を直撃

 不正受給者を連れて税務署を訪れると、「大の大人が2時間近く説教されて、泣きじゃくる人もいる」という。そんな彼らをそそのかして甘い蜜を吸ってきたのが申請代行業者だ。サラリーマンの傍ら約100件の申請代行を行い、1000万円以上の副収入を得たという藤木さん(仮名・30代)が話す。

「自分の主な客はホストやキャッチ、キャバ嬢、パパ活女子など夜の仕事をしている人たち。自分でキャバに行って捕まえた“客”もいるけど、半分以上は知人の紹介。間に複数の紹介者を挟むほどマージンを抜かれるので、自分が得る報酬は10万〜30万円程度です」

 不正受給には加担していないと話すが、その手口はきわどい。基本的に申請希望者とは会わず、電話越しのやり取りのみ。口頭で知らされた昨年の収入で確定申告を行い、受領印をもらった申告書類をデータ送信した後、本人に申請手続きを行わせるという。

「すべての業務を代行してしまうと不正が疑われやすい。実際、同じIPアドレスから複数の申請が行われていることがわかると調査されるリスクがあるので、多くの代行業者がVPN(仮想専用線)を利用して申請代行業務を行っていましたが、9月以降VPN経由での申請フォームへのアクセスが遮断されました。最後の申請作業は電話で指示を出しながら本人にやらせるほうが確実なんです」

 この申請代行ビジネスには収入以外のメリットもあるという。

「出会い喫茶に行って一発ヤったあとに『給付金もらった?』と話をすれば5人に1人は食いついてくる。パパ活収入を申告し忘れていた昨年の収入として計上すれば、パパ活女子も持続化給付金の受給対象になるので。オンナとヤれてカネももらえるなんて最高です」

 当然、申請者が昨年の収入を偽っていたら不正受給の片棒を担いだ格好になるが、「やり取りは自動的にメッセージが消える『Signal』を使っているので不正の証拠となるものはない」という。最悪疑われても、「申請者にダマされた」と言い逃れする算段とか。

◆3か月で1億円を稼いで海外逃亡した代行業者も

 完全に不正を認識しながら申請代行を行う業者もある。5〜7月の3か月で1億円以上を荒稼ぎしてタイに逃亡した市川さん(仮名・30代)が、その全貌を明かす。

「『#副業』などのハッシュタグをつけて、『10万円追加給付』とSNSに書き込めばいくらでも情弱が集まる。あとはテレグラムに誘導して、免許証のコピーと預金通帳の写しを送ってもらって、申請を代行するだけ。昨年の収入確認? そんなのしませんよ。年収130万円と書き込んである確定申告書類の名前と住所を書き換えるだけで十分。税務署の受領印のある申告書の写しと免許証、銀行口座の入金記録、適当な台帳さえあれば給付金の申請ができるんですから。それで100万円が下りたら、90万円を“税理士”と偽った私の口座に振り込んでもらうわけです。もともと『10万円の追加給付』を謳って集めたカモなんで、90万円の手数料を取られることに疑問を持たない人がほとんど」

 異常な報酬の高さだが、市川さんは7月にきっかり手を引いた。

「税務署のチェックが厳しくなったんです。以前はすぐに受領印を押してもらえたのに、『収入の記載だけで経費の記載がないがいいのか?』などと確認する税務署が増えた。話すほど顔を覚えられ、身バレのリスクが高まる。7月後半には不正受給で初の摘発事例が出たので、やめました」

◆給付金の大半はすでに闇の中?

 なお、集金に使った銀行口座はホームレスにお金を渡して作らせた他人名義の口座だ。念には念を入れ、資金の大半を相対取引でビットコインに替えた後、国外逃亡したという。だが、さらに驚愕の手口で荒稼ぎした仲間もいたとか。

「『1億円バラ撒き』キャンペーンってはやったじゃないですか? これをマネして、応募者全員に『当選したので運転免許証のコピーと預金口座の写しを送って』とDMすると、かなりの割合で返信がある。その個人情報をもとに勝手に持続化給付金を申請するんです。申請が通ったら100万円が応募者の口座に入金されて喜ぶでしょ。そうしたら、『手違いで当選させてしまったので、80万円だけでも“返金”してほしい』とメッセージする。“当選者”は持続化給付金が振り込まれたという事実にも気づかない情弱だから、『20万円もらえるだけでラッキー』と80万円を振り込んでくれるらしい。それで5000万円近く稼いでベトナムに飛んだヤツがいます」

 今「返金」を希望している多くの不正受給者は悪質な申請代行業者のカモにされ、満額の返済能力を失っている。給付金の大半はすでに闇に消えたと考えられる。

◆家賃支援やIT補助等バブルに沸く補助金ビジネス

 不正受給が社会問題と化している持続化給付金制度。これが「詐欺師を一網打尽にする好機となった」と評価するのは、情報商材などで数十億単位の資産を築き、補助金ビジネスの裏側をウオッチしてきた「医カス」氏だ。

「スキルや専門知識がなくても、情弱をダマして大金を巻き上げられたのが持続化給付金の申請代行ビジネス。誰でも簡単に始めることができたので、中途半端な詐欺師からカネに目がくらんだ素人まで、多くの人がそのビジネスに手を染めました。おのずと多くの情弱がカモにされましたが、実際の被害者は国であり、詐取されたのは国民の税金です。特定の人が損失を被ることなく、にわか詐欺師を一掃できたのは今後にとってプラスと言っていいでしょう」

 医カス氏は「幅を利かせてきたインフルエンサーも申請代行業者にカモを斡旋してきたので、戦々恐々としている」と話す。実際、給付金に言及するSNS上の怪しげなアカウントは次々と閉鎖されている。だが、今回表面化した不正受給の実態は氷山の一角にすぎないという。

「素人を相手にする以上、情報を売られるリスクはついて回ります。手軽だからとツイッターのDMやLINEなど、足のつきやすいツールを使った業者が摘発されているにすぎません。慣れた業者は匿名性の高いアプリのみを利用し、摘発が始まった7月以降は使ったPCなどを処分して高飛びの準備を進めていました。

 一方で、以前から補助金ビジネスを手がけてきた業者は、休眠会社やペーパーカンパニーの経営者と組んで、中小企業向けの持続化給付金や家賃支援給付金の申請でいまだに荒稼ぎしています。国が指定した業者を通じたIT投資の半額を補助してくれるIT導入補助金制度も使い倒している。二束三文のソフトでも300万円の値をつけて売れば導入企業には150万円の補助金が入るので、資金繰りに困っている中小企業に営業をかけ、国指定の業者と結託すればいくらでも補助金を引っ張ることができるんです。

 特に今年はコロナ禍とあって一部の補助率が最大4分の3に引き上げられたので、絶好の稼ぎ時。国内の大半の企業が業績不振にあえいでいますが、補助金ビジネスを手がける業者はかつてないほどの“補助金バブル”に沸いているのです」

 企業と結託した、より高額な補助金の不正受給は手口が巧妙で表面化しにくいとか。補助金ビジネスの闇は深い……。

【医カス氏】

自動売買ソフトを独自開発して最高月収12億円を記録した元情報商材屋。その経験を生かして詐欺的商材の裏側などについてSNS上で発信。

<取材・文/吉岡 俊 池垣 完>

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