猛威を振るう投資詐欺、「ポンジ・スキーム」の悪辣手法

猛威を振るう投資詐欺、「ポンジ・スキーム」の悪辣手法

写真はイメージです

「90日で40%の配当が出せる」――今から100年前の米国でチャールズ・ポンジという人物が編み出したポンジ・スキームなる投資詐欺が今、猛威を振るっている。実態のない投資話になぜ人は騙されるのか!?

◆ポンジ・スキームの悪辣手法

 個人投資家を標的にした投資詐欺が大流行している。

「象徴的な事例として挙げられるのが、10月に出金ができなくなり全国で被害事例が相次いでいるPGA(プランスゴールド)というスキーム。被害規模は400億円に上るといわれ、学生から老人までまんべんなく引っかかっている印象です。仮想通貨を経由してお金をネット上のウオレット(財布)に入金すると配当がつくというシステムで、知人を勧誘すると紹介ボーナスが付与されるマルチ商法的な仕組みもあって、爆発的に広まりました。手口自体は典型的なポンジ・スキームで目新しくないのに、こうも引っかかる人が多いのかと驚いています」

 そう語るのは、投資詐欺に詳しいジャーナリストの奥窪優木氏。確かに配布されている資料は陳腐であり、“仕掛け人”とされるインフルエンサーたちが日々投稿する画像も現金や高級時計のオンパレードで、いかにもな内容だ。

◆最初の成功体験で脱出不可能に

 それでも騙されてしまうのには、人間の心理を巧みにつく情報操作がある。預貯金すべてに加え、消費者金融で借りてきた合計200万円近くを投資し、回収不能に陥ってしまった不動産営業マンのKさん(28)が経緯を明かす。

「最初に話がきたのは今年の3月。会社の同僚から回ってきたんですが、そもそもが『この案件はポンジ。でも、今年の11月までは飛ばないと上層部から直接聞いている。万一やばくなったら先に教えてもらえるから、出金してしまえばよい』という触れ込みでした。同僚は確かに“上層部”と会っているようだし、ポンジでも飛ぶ前に引き揚げちゃえば大丈夫かも、と思ってしまったんです。試しに30万円相当のビットコインを入れたところ、初月は10%ほどの配当がつきました。その翌月も、翌々月も15%以上の配当がつき、あっという間に50万円を超えたんです。試しに出金したら、あっさり引き出すことができて。これはイケると思ってしまった」

 この成功体験が後に破滅をもたらすことになる。この構図はKさんに限った話ではなく、ポンジ・スキームで実にありがちな罠だ。

◆事前情報より早く飛んだプロジェクトで財産が溶けた

 コロナ禍で思うように稼げなかったKさんは、元手が増えたことでPGAの魔力に取り憑かれてしまった。うなだれながら語る。

「同僚から聞いているタイムリミットは、変わらず11月だという話でした。残業代が全面カットされて苦境に立たされていたので、プロジェクトが飛ぶまでに稼ぎ切りたいと思った僕は、預貯金すべてと消費者金融で借りられるだけ借りて突っ込んでしまったんです。それが9月頭の話でした」

 追加入金をしたこのタイミングから、事態は急坂を転がり落ちるように悪化していく。悪夢の始まりは、9月末にかかってきた勧誘元の同僚からの電話だった。

「出金できなくなっている、何かおかしい。そう伝える同僚の声は震えていました。サイトを見ると『中国の大型連休によるもので、問題はない』と説明がありました。モヤモヤしたまま過ごしましたが、10月に入っても一向に改善されず、ついには10月20日にサイトが閉じてしまった。ここでようやく『先に飛ばれたんだ』と気づいたのです。PGAの実質トップとされているインフルエンサーは怒り狂った投資家に自宅を急襲されたなどと投稿しており、事件に黒幕がいると示唆していますが、到底信じられない。かといって今の自分にとれる手段はないので、途方に暮れています」

 以上がKさんが体験したポンジ・スキームの被害事例だが、仮想通貨やウオレット型の案件など“今っぽいもの”だけがはやっているわけではない。「インサイダー情報があるから株を買おう」と持ちかけて先にカネを預かる手口や、金やダイヤモンドなどの鉱山の投資を促すもの、「元外資系証券の敏腕トレーダーが代わりにトレードをしてくれる」と謳うものも存在する。預けたカネが返ってくることは、まずない。

◆「詐欺罪で逮捕・起訴まで持っていくことは相当困難」

 ポンジ・スキームをはじめ、詐欺事件の実態に精通するコラムニストのZ李氏が内情を明かす。

「毎日のように投資詐欺の被害相談が寄せられますが、天皇と仲良いアピールをする馬鹿に引っかかったり、借用書を巻かずにお金を預けてしまったりと、なんでそんな行動を取るのか理解に苦しむ被害者が本当に多い。そもそも、投資詐欺は加害者側に圧倒的に有利な仕組みになっており、被害に気づいても明確な犯意を立証できない限り、詐欺罪で逮捕・起訴まで持っていくことは相当困難です。何十人から何億円と騙し取ったやつですら、警察に突き出しても出資法違反、つまり罰金刑だけで釈放されてしまう現実がある。

 投資でもなんでもそうですが、お金は投げる側が圧倒的に弱いことをまず理解すべきです。だいたい楽して儲かる話がそう簡単に入るわけがない。そんな話に乗るくらいなら、天皇賞で史上初のGTで8勝を挙げたアーモンドアイとか、ボクシングの井上尚弥にスポーツベッティングで賭けたほうがはるかにマシ。人づてに聞こえてくる投資話なんて、ハナから耳を貸さないほうがいい」

 苦労して貯めた財産も、たった一つの判断ミスで水泡に帰す。君子危うきに近寄らず――を徹底すべきだ。

◆週刊SPA!記者もコロリ。詐欺師の巧みな話術とは?

 いたるところで被害事例が見られるポンジ・スキームだが、SPA!編集部も例外ではなかった。

「月利8%で元本保証、為替で運用してくれるという話に引っかかり、300万円を持ち逃げされました。このことは妻にもまだ言えずにいます……」

 力なくそう語るのは、SPA!記者のS。日頃から取材でも詐欺事案を扱っている彼をも手玉に取るほど、詐欺師のプレゼンは人間心理につけ込むものだった。

「詐欺師とは飲み屋で知り合ったのですが、金払いがよく外車も複数台保有していました。当時は個人投資家と聞いていたので本当にトレードがうまいと思ってしまったんです。あるときお茶をしていると、彼はおもむろにノートパソコンを開きトレードを始めた。横で見ているとものの15分くらいで800万円の利益を上げていたんです。タネを明かせばこの詐欺師は“トレードで勝っている動画”を再生していただけで、実際はトレードなんてしていなかったのですが、まんまと信じてしまった」

 敏腕トレーダーを装った詐欺師はSを勘違いさせたうえで、こう囁いた。

「親身な雰囲気で『普段はしないんだけど、君とはウマが合う。運用してあげてもいいよ』と言われました。『娘さんの教育資金もいるだろう』とか本当に僕のことを考えてくれている体でくるんです。元本保証、月利8%で半年間のロック、預り証も出すという条件を出されて……実はこのとき、編集部の同僚に相談していて、『絶対やめろ』と言われたんです。でも僕はすでに舞い上がっていて、止まることができなかった」

 配当が支払われたのは最初の1か月のみ。姿を消した詐欺師の顔をSが再び目にしたのは、別件で逮捕されたニュースだった。

◆世間を騒がせたポンジ・スキーム実例集

▼テキシア

ダイヤモンド投資による運用を名目に、毎月3%の配当金を支払うと謳い、’13年から4年間にわたり1万3000人から460億円の出資金を集めた。「いつでも可能」と約束していた出金が滞ったことで被害届が相次ぎ、’19年に摘発。元宮司の代表ら10人が逮捕された。

▼D9クラブ

ブラジル発の世界的ポンジ。日本では’16年末頃から「日利1%」と喧伝。お台場のヒルトンで行われたイベントでは布川敏和が司会を務めた。その直後に「ハッキングされて資金が盗難された」として出金を拒絶。国内の被害総額は700億円ともいわれている。

▼HANA倶楽部

社債や株式への投資による運用を謳い、金融庁に未登録のまま出資を募集。会報誌には現役首相夫人だった安倍昭恵を登場させるなどし、’18年に破綻するまでの5年余りで女性を中心に1万人から300億円を集めた。破綻時には18万円ほどの資金しか残っていなかった。

▼エル・アンド・ジー

’01年頃から流行。ショッピングモールでの商品購入に使用可能な疑似通貨である「円天」を購入すれば、年利100%の配当が行われると謳い、約5万人から1000億円を超える資金を集めた。’07年に出資法違反で摘発され、会長は逮捕。懲役18年の実刑判決となった。

【奥窪優木氏】

’80年、愛媛県生まれ。上智大学卒業後、中国に渡り現地取材を行う。’08年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などへの寄稿を中心に活動。

【Z李氏】

地下経済、アングラ事情に精通するコラムニスト。座右の銘は「給我一個機会,譲我在再一次証明自己」。Twitterは@Kiss0fthedrag0n

<取材・文/片波 誠 奥窪優木>

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