摘発されるベトナム人技能実習生が働く風俗店。レイシズムとセクシズムが横行する惨状

摘発されるベトナム人技能実習生が働く風俗店。レイシズムとセクシズムが横行する惨状

Ryuji / PIXTA(ピクスタ)

◆ベトナム人風俗摘発の裏にある警察の思惑

 11月10日、警視庁は日暮里にある派遣型風俗店(デリヘル)を摘発した。報道によれば、技能実習ビザで入国したベトナム国籍の女性を働かせていたことが理由だという。

 裏風俗事情に詳しい風俗コンサルタントのP氏は語る。

「日暮里や鶯谷は、ベトナム人だけじゃなく、日本人・韓国人・タイ人・中国人などを雇っている『デリヘル』が集中しているエリアです。もちろん、ヘルスサービスのみの店もありますが、外国人が働く店の大半は俗にいう『基盤店』、本番行為前提の店です」

 実際、2019年にも日暮里と蒲田に店を構えるデリヘル「D」が摘発されている。ではなぜ今回、ベトナム人が働いている店が摘発の対象になったのだろうか?

「ここ最近の報道を見ていると、ベトナム人による豚や農産物の窃盗などが盛んに報じられているように、警察が特定外国人をターゲットに『一掃キャンペーン』を打っているんじゃないでしょうか。日暮里の店も、わざわざテレビ局も引き連れて摘発しているわけですし」

◆各地で増えつつあるベトナム人雇用の店

 実を言うと、日暮里に限らず、コロナ禍においてベトナム人女性を雇う風俗店が増えているという。

「ここ数年、中国の経済成長などもあって、いわゆる『中国エステ』と呼ばれる脱法マッサージ店は雇える女のコが急速に減少、店側も入管法違反となる不法就労助長をすると経営する中国人女性も、日本人と結婚していても強制送還になるため、そのリスクを負うのを嫌い、永住資格ある既婚女性を雇うケースが増えていました。そのため、客離れを招き一時期の勢いがなくなっていました。

 しかし、昨年くらいからビザなし短期滞在で来日するタイ人の若いコを斡旋するブローカーが増え、脱法マッサージ店の中でも本番ありの完全な『違法』店で働くタイ人女性が急速に増えていました。

 その流れで徐々に増えていたのが、脱走した技能実習生のベトナム人女性を狙うルートでした」

 技能実習生はすでに多くの報道がなされているように、来日時には多額の借金を背負ってくる上に、劣悪な環境で働かされたり、いじめなどの被害に遭う人も少なくない。そのため、以前から実習先からの脱走が問題となっていた。

「ブローカーはそこに目をつけたわけです。FacebookやLINE、Wechatなどでクローズドなグループを作って求人情報がやり取りされていまたようです。大半が中国エステ店やデリヘルを経営している日本人や中国人経営者の店で雇われます。タイ人よりも見た目が日本人に近く、若くてスレていない子が多いので、お客側にもウケは良かったようです」

◆コロナで一気に流入

「とはいえ、ベトナム人女性の場合、一部のタイ人女性のように本国でもゴーゴーバーなどで働いていた『プロ』出身の子なども少ないため、コロナ以前はそこまで爆発的に増えてはいませんでした。急増したきっかけはやっぱりコロナだったと思います」

 東京都西部の某市にある店で働くドンさん(仮名・20歳)は、風俗店で働き始めたきっかけについてこう語る。

「コロナの前は、普通に飲食店で働いていました。でもコロナで仕事が無くなって困っていたら、同じ学校のコからこういう仕事の話を聞いて、それでやることにしました」

 もちろん、「留学」とはいえ、ビザのための「留学」であることも少なくない。そのため、アルバイトも留学ビザで働ける上限を超えて就労していたのは事実だが、そんな生活の中でも日本語検定を取得して、いずれは真っ当な仕事を目指していたという。

◆ゴムなし強要、ストーカーなど客からの酷い扱いも

「彼女たちが可哀想なのは、こうした風俗店の認識が浅い子ほど、ゴムなし挿入などを客から強要されたりする子も少なくない数いて、すぐ辞めてしまうか、数ヶ月でどっぷり風俗嬢となってしまうか、どちらかでした」

 中にはストーカーまがいの行為にあうこともあったという。

「日暮里の店で働いていた私の友達は、仕事を始めて数日経った時に、お客さんに盗撮されてしまい、それ以降は怖くて何度も確認するようになったと言ってました。他の友達も、最初はいいお客さんだと思ってLINEを交換したら、だんだんプライベートのこととかしつこく聞くようになって、その内、お客さんとして来ていない日に、勝手にレンタルルームの前で待ち伏せしたりするようになって、怖がってやめてしまいました」(前出・ドンさん)

「実際、ビザの資格外活動とかバレると強制送還になるってのは客側も知っています。彼女たちに本気で惚れる人も少なくありませんが、立場が弱いことを知っていて、レイプまがいのことをする客や、失恋するとその腹いせに警察に密告するというケースも少なくないようです」

 もちろん、ビザの資格外活動は違反だ。そして、彼女たちを雇うことも入管法違反だけではなく、倫理的な問題点も少ない。

 だが、コロナ禍で仕事もなくなり放り出された彼女たちに、日本の行政がなんら真っ当な支援の手を差し伸べることがなく、頼るところがそこしかなかったのもまた事実だ。

 こうした事実から目を背けて、「外国人の犯罪」と言う側面を殊更に強調するような「逮捕・摘発PR」を続けているようでは、問題は何も解決しないどころか、人権無視とレイシズムとセクシズムが横行する日本の現状が世界に知れ渡るだけなのではないだろうか。

<取材・文/大平梵骨>

【大平梵骨】

フリーライター。成蹊大学法学部在学中に渡米。その後なし崩しに退学し、風俗情報誌の編集部に滑り込みキャリアスタート。興味分野は街場の風俗から陰謀論やオカルト、疑似科学から格闘技、運動生理学まで

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