日本に到来した新型コロナ「第3波」。無責任な政府対応とピンボケ報道が招くシナリオ

日本に到来した新型コロナ「第3波」。無責任な政府対応とピンボケ報道が招くシナリオ

Ryuji / PIXTA(ピクスタ)

◆遂に到来した「秋の波」新型コロナウィルス第3波エピデミック

 2020年合衆国大統領選を目前に控えた11月1日早朝未明、ふと気がついて本邦のCOVID-19新規感染者数の統計を見た筆者は、驚くべき変化を見付けました。

 このとき筆者は、本邦における「秋の波」(第3波)を、暫定的に起点10/9で*10/24頃から既に指数関数的増加に移行していると見做しました。筆者の体は一つしかないとはいえ、気がつくのが一週間おくれたのは痛恨事でした。

〈* 次回以降で述べるが筆者は現在、合衆国などによる本邦についての報告を読むことにより、実際には9月末が第3波の起点である可能性が高いと考えている〉

 とても不思議なことですが、北半球では珍しい夏の第2波エピデミックを起した合衆国と本邦は、合衆国の2〜3週間後を規模1/100〜1/25で本邦が正確に追うという現象が起きています。合衆国における秋の波=第3波は9/10-13を起点として発生していますので、10月初旬からの本邦における日毎新規感染者数の推移=エピデミックカーブ(エピカーブ)は、強い警戒を要するものでした。

 合衆国と本邦が北半球における夏の大規模な第2波を起こしたのは、公衆衛生・防疫行政における大失敗の結果です。また合衆国に比して本邦のエピカーブが非常に低いものとなっているのは、カンボジア、中国、モンゴル以東の東部アジア・大洋州における謎々効果(Factor Xと呼ぶ人もいる)によるものです。この謎々効果は、アフリカ大陸でも見られます。

◆現在はどうなっているのか

 第3波は、10月上旬からゆっくりと拡大し、下旬になって指数関数的増加が強く疑われる急増を示しました。それでは現在どうなっているのでしょうか。謎々効果で守られている東部アジア・大洋州諸国で比較してみましょう。

 本邦は既に、エピカーブが明確に指数関数的増加を示しており、暫定的ではありますが、倍加時間(新規感染者数が2倍になるまでの時間)が7日程度と見積もられます。この数字は、大変に深刻なものです。

 結果としてエピカーブそのものの増加率がまだ若く急激である一方で、既に夏の第2波エピデミックにおける増加最終段階であった8月上旬の新規感染者数を示しています。これは、以前から指摘してきたベースラインの上昇によるものです。筆者は、第一の目安を10ppm(百万人あたり10人の感染者数で1200人/日)に置いていましたが、あっさり突破されました。

 筆者は次の目安を豪州が8月冬のエピデミック*で示した20ppm(2500人/日)としていますが、現在の倍加時間から、今週後半には突破すると考えられます。

〈*豪州は、南半球なので8月は冬〉

 実は、これまで世界の模範とされてきた韓国でも、8/15におこなわれた右派宗教団体、サラン第一教会によるバイオテロールと言って良い5万人ゲリラ集会*によるエピデミックの制圧がうまくいっておらず、秋の波=第3波エピデミックの指数関数的増加への移行を辛うじて阻止している状況です。

〈*文大統領が「公権力を見せるべき」と警告した日、サラン第一教会を家宅捜索 2020/08/22 中央日報〉

 しかし検査を抑制してきたノーガードの本邦と、世界の模範である韓国を比べると、本邦はもはや制御不能に陥っているのに対して、韓国はまだ制圧できる可能性があります。韓国は、今が正念場と言えます。

 次に、謎々効果で守られている東部アジア・大洋州諸国の中で5大コロナ駄目国家の比較をします。8月以降に謎のエピデミックを起したマレーシアとミャンマーを加え、フィリピン、インドネシアという常連メンバー、そして日本です。

 日本は、コロナ駄目国家と言ってもインドネシアの1/3程度であり、張り出し駄目国家と言うべきでしたが、第3波の指数関数的増加によってインドネシア、フィリピン、ミャンマーを今週中にぶち抜く可能性があります。

 倍加時間が7日を維持した場合*、11月末にはマレーシアも追い抜き、堂々、東部アジア・大洋州諸国コロナ駄目国家の横綱となります。理由は簡単で、本邦は高緯度の為に寒冷化、乾燥化するのに対し、フィリピン、ミャンマー、マレーシア、インドネシアは亜熱帯から熱帯の為、季節性のコロナウィルス・エピデミックは起し難いことが知られています。

〈* 倍加時間は、一定程度時間が経過すると長くなって行く。そうしてエピカーブは飽和し、減衰へと向かう。それが半月後か、1ヶ月後か、2ヶ月後かはわからない〉

 本邦は、現状で介入(対策)が行われない場合、月末に40ppm=5千人/日の新規感染者が発生することとなり、12月初めには80ppm=1万人/日の新規感染者が生じることとなります。この頃になると、本邦の世界的にも特異的に貧弱な行政PCR検査は、医師会PCR検査を加えてもウィルスに圧倒されることとなり、行政は患者数の実態を把握できなくなります。こうなる前に現在の自由診療によるPCR検査を行政検査化しなければ、本邦はウィルスに完敗することとなります。これは世界でも珍しい、本邦に特徴的なことと言えます。安倍自公政権下における8年における健康保険医療の骨抜き・利権化と国策によるエセ科学・エセ医療デマゴギーであるPCR検査抑制論などの結末と言えます。

 いずれにせよ本邦は、既に未知の領域に入り込みつつあることを我々は自覚せねばなりません。

 それでは次に、新型コロナウイルス・パンデミックの本場である米欧と比較してみましょう。

◆「謎々効果」がない欧米は桁違いだが……

 欧州、北米では、我々が享受している謎々効果が無い為に、ケタ違いに強烈なエピデミック(地域全体ではパンデミック)が生じています。

 本邦と同じくパンデミック対策に失敗した合衆国は、9月下旬から第3波に見舞われていますが、リーダーシップの不在=トランプ大統領の無関心と無為無策によって連邦政府の動きは鈍く、州政府による対策となっています。

 医療がパンクしてしまい、医療関係者は、自分自身が感染していても無症状ならば働き続けているノースダコタ州、テキサス州のように医療がパンク寸前の州*、カリフォルニア・オレゴン・ワシントン州三州連合のように医療のパンクを防ごうと連携して機動的な対策を行っている州、これまでの対策の結果としてエピデミックを何とか制御下に抑えているニューヨーク州などの東部諸州など州や地域によって大きく違いがあります。

〈*執筆時点で、テキサス州エル・パソ郡では、遂に重症者の治療放棄がはじまっており、郡病院の建物周囲を遺体安置用の冷凍コンテナが取り囲んでいる〉

 共通していえるのは、共和党系の多くの州を除き、各州政府は、本邦と異なりこれまでに整備してきた大規模なPCR検査体制によって現状把握と公衆衛生の維持を行い、マスク着用の奨励と義務化、社会的行動制限の段階的発動を行うことで、市民と社会を守ろうとしていることです。行政が市民に責任を押し付けずに仕事をしており、これがトランプ大統領や日本政府と根本的に異なるところです。

 欧州では、夏の第2波は防いだのですが、バカンスを原因としたエピデミックが8月にはじまり、それが秋の波へと連続することで9月には大規模なエピデミックが発生しています。但し英国は、欧州本土に比してバカンスが小規模であったとのことで、遅れて9月に季節性のエピデミックが生じています。

 英国政府は、9月から段階的に社会的行動制限を開始しており、イングランドなどでは11月から1ヶ月間のロックダウンを開始しています。ドイツやフランスも11月に入り1ヶ月間のロックダウンに入りました。

 春のパンデミックで30〜60日間のロックダウンに苦しんだ欧州各国は、できればロックダウン回避、せめて30日程度にという目的を持って公的介入=社会的行動制限の改良を試みてきています。フランスと英国で顕著ですが、フランスはロックダウン入りから10日程度でエピカーブが下降に転じており、英国は、10月の時点でエピカーブの上昇率を抑えることに成功しています。

 ワクチンが無い状況での新型感染症対策は、各国手探りですが、これまでの経験を活かして、年内には目星をつける為の努力がなされています。

 これまでトランプ政権の真似をしてか、政府が対策に極めて消極的かつ無関心であった本邦は、アリとキリギリスの寓話におけるキリギリスの悲哀が身にしみることになりそうです。少なくとも現状ではクリスマス中止が避けられそうにありませんが、今から大規模な介入を行えば、お正月は、社会的距離厳守の上で迎えられそうです。

 なお本邦は、倍加時間が現状のままで、公的介入が行われないと言う最悪のシナリオでは、12月第1週に100ppm、第2週に200ppm、月末には800ppm(10万人/日)の日毎新規感染者と、フランスの最悪値に達することとなります。もちろん日本人特有の強烈な私的介入=「自粛」によって実際には100〜200ppm(1万〜2万5千人/日)程度で上げ止まる可能性は十分にありますが、その程度であっても備えの貧弱な本邦では、医療は機能を失うこととなります。

 現在菅政権は、12月末に総選挙を行う意志を持っているという話がありますが、その場合12月以降、政府がまともに意思決定と行動ができなくなりますので、最悪シナリオをとる可能性があります。いずれにせよ総選挙を10月中に実施しなかった時点で政局沙汰は時期を完全に逸しており、社会のシャットダウンを段階的に行うと言うたいへんに難しい事業を行いながら総選挙を行うことは日本政府には能力不足で不可能です。州政府の自治が強く、緊急対応能力が強力な合衆国の真似を本邦がするなど、おこがましい思い上がりです。

 ウィルスには、人間の都合など関係ありません。

◆死者はどの程度?

 COVID-19による大規模エピデミックが生じた場合、どの程度のひとが死ぬかは、これまでの経験によってだいたいわかっています。統計において、死者数は、新規感染者数に3週間遅れの遅行指数であり、致命率はCFR(Case Fatality Rate)*として既に統計化しています。

〈*致命率(CFR)は、分子が診断付累計死亡者数で、分母が診断付累計感染者数である〉

 本邦の場合、現在約2000人/日程度の新規感染者が発生していますが、3週間後(12月第1週)その2%の40人が毎日死ぬことが予想されます。

 指数関数的増加を止めなければならない理由はこれで、倍加時間が7日で継続すると、12月第2週には100人/日程度の死亡数となり、投票日とされる12/27には、医療のパンクによるCFRの増大と合わせて千人程度の人が毎日苦しみながら死んで行くことになります。このような状態で、本邦での選挙が成立するとは、筆者には考えがたいです。

 ここまで、恐るべき未来を示しましたが、もちろん、公的な介入=社会的行動制限が行われれば、10日から14日程度で効果は現れますし、その効果はばつぐんなものになります。また、様々な介入により倍加時間を長くすることによって時間稼ぎをすることも出来ます。

 問題は、本邦の特異現象として、ジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーの蔓延により、検査も接触追跡もきわめて低い能力のままであること、トランプ大統領と同じく、政府に対策をする気が無いこと、専門家が平然と嘘をつくことなどがあり、指数関数的増加を見せている季節性エピデミックを効果的に制圧できる可能性が低いことがあります。

 最早こればどうしようもないなと言うのが筆者の偽らざる考えです。

◆世界は日本をどう見ているか

 本邦では、パンデミック第3波の定義など無いと言う、福島核災害において政府と東京電力が強弁した「メルトダウンの定義がない」*という嘘と全く同じ嘘を官房長官が公言するなど、一刻も早く着手せねばならない「秋の波」対策について政府はやる気がありません。そもそも第3波を認めようともしません**。

〈*メルトダウンの公表に関するこれまでの検証状況について2016/03/23新潟県〉

〈**第3波定義せず、加藤官房長官 コロナ感染拡大巡り2020/11/12東京新聞〉

 一方で、CNNは、現地時間11/12 3:30(EST)の報道番組New DAYにおいて、日本でCOVID-19エピデミック第3波が発生したことを明確に報じました*。本邦でも第3波は報道で言及されていますが**、緊迫感が非常に弱く、簡潔ながらも事態の重要性を的確に指摘しているCNNに比してきわめて質が低いです。

〈*Japan Warns of Third Wave as COVID-19 Cases Spike CNN News ROOM 2020/11/12 4:13 EST

Transcripts1,2、Videos1,2〉

〈**コロナ「第3波」、家庭内感染多く 職場・会食を経由2020/11/14日本経済新聞〉

 日常CNN, BBC, アルジャジーラのどれかを視聴している筆者にとって、既に第3波エピデミックが指数関数的増加を示していると言う重大局面において日本政府の動きは、トランプ大統領よりも無責任であり、国内メディアの報道は、ピンボケです。

 一方で本邦以外の人類は、COVID-19との闘い方をこの10ヶ月間でかなり学習しており、経済的犠牲の少ない対処法を模索しています。これから本連載では、海外情報を中心に本邦で今何が起きているのか、何をすれば良いのかについて論じて行きます。

◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ30:迫り来る地獄1

<文/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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