裏垢で不倫を繰り返す30代女性。ワンナイトラブをやめられない理由とは。

裏垢で不倫を繰り返す30代女性。ワンナイトラブをやめられない理由とは。

持田あかりさん(仮名)

 持田あかりさん(仮名・32歳)は、WEB系企業でプランナーとして働く既婚女性だ。結婚したのは29歳の時で、女性としては適齢期のうちに結婚しており、仕事も充実しているという。しかしそんな彼女も、性にまつわる「ねじれ」に悩まされており、自分ではどうしようもないのだと語る。

◆友人にも母親にも容姿を蔑まれ……

 「幼い頃からお世辞にも可愛くはなく、痩せていたこともありませんでした。田舎で育ったため、思春期のうちは男子から容姿についていじられることも多く、自己肯定感の低さにずっと悩まされてきました。

 家族関係も良好とは言い難く、いわゆる”毒親”だった母との暮らしも、私の肯定感を地の底まで落としました。幼い頃から母にも容姿をなじられ『ブスなんだから、勉強くらいちゃんとやれ』と言われて、いつも机にかじりついていました。無関心な父と、過干渉なのに可愛がってはくれない母。そんな両親から一刻も早く逃げたくて、大学は東京の有名公立大学を選びました。

 両親と離れて暮らせるようになっても、思春期にこびりついた自己肯定感の低さが変わることはありませんでしたが、就職では人生で始めて”努力が実った”という感覚があり、大手IT企業に入社することができました。しかし、実際に営業として社会人を迎えてからも、容姿が理由で正当に評価されていない、と感じる機会が多々あって、25歳の時に、新卒で入った会社を退職してしまいました」

 思春期のトラウマというのは、後の人格形成にも大きく影響を及ぼす場合がある。持田さんは学校だけでなく、家庭で実の母親にまで自分の容姿のことを評価されなかったことから、そもそも「容姿で評価されること」に少し過敏になっているようだった。

 しかし、その語り口は非常に合理的でわかりやすい。頭が良く話しぶりも堂々としていて、自己肯定感が低いという第一印象は受けなかった。

◆裏垢で獲得した自己肯定感

 「営業としてフロントに立つことが怖くなって、WEB業界に転職し、プランナーとして働くことにしました。当時26歳でしたが、彼氏は大学時代に一人しかいたことがなく、社会人になってからは出会いもなかったため、恋愛とは無縁の日々を送っていました。

 そんな時に、なんとなく始めてみたのがSNSの裏垢でした。最初は日常の悩みや、恨みつらみをつぶやくだけのアカウントだったのですが、ちょうどその頃”裏垢女子”も流行しはじめていたため、私も裏垢女子としてSNSを更新するようになりました。裏垢女子とは、SNSで際どい写真をアップしたり、エロいことをつぶやいたり、セフレを募集したりしている人たちのことです。

 自分もなんとなく、胸元や足の写真を撮ってアップしたりするようになりました。昔からぽっちゃりしているので、胸だけはGカップあったこともあって、写真をアップすると男性から褒められるようになって……異性から褒められるという経験がそれまで全くなかったので、私はどんどん裏垢にハマっていきました」

 SNSで裏垢女子として活動する人たちの多くは、顔出しはせず自分の身体の写真だけをアップする。身体の写真をアップすれば顔も知らない男性が喜んで評価してくれる。彼女たちは男性の「オカズ」になり、女性として求められていることで自分の自己肯定感を満たしているのだ。

 結局、男性はその女性を評価しているのではなく「女体」に群れているだけではあるのだが、持田さんはそれを分かった上で、それでも裏垢での評価は自分に必要なことだった、と語る。

◆自信を付けて結婚にこぎつける

 「そのうち、裏垢でセフレを作るようにもなりました。最初は会って幻滅されたらどうしよう、と思っていたけど、セックスだけが目的の男の人はみんな優しかった。何人もの男性と裏垢でワンナイトラブをしましたが、そのうち身体を求められることにも慣れて、いつの間にか以前よりも、人前で堂々と振る舞えるようになっていたんです。

 自分に自信が持ててからは、どうしても若いうちに結婚がしたい、と考えて27歳からマッチングアプリ婚活を始めました。年収が低くなかったこともあったとは思いますが、半年ほどで婚約者を見つけることができて、29歳の時にはその人と結婚しました。その頃は両親ともほぼ絶縁状態になっていたので、二人だけで慎ましい結婚式をしました。嬉しかった。こんな私を認めてくれて、必要としてくれる人がいるだけで、もうこれ以上の幸せはないと心の底から思いました」

 自己肯定感が低い人にとって、結婚という永遠の約束は、これ以上ないほどに本人の承認欲求を満たすものなのだろう。容姿に自信がなかった自分がここまで変わることができるなら、性的アピールで男性の気を惹くのも悪くなかったのかもしれない、と思ったのもつかの間。持田さんの幸せはあまり長く続かなかったという。

◆セックスレスに耐え切れず繰り返す不倫

 「しかし、結婚して一年ほど経つと、すぐに旦那とはセックスレスになってしまいました。10個歳上でもうすぐ40歳を迎える彼は、私ほど性欲が強くなく、30歳を迎える頃には、私たちの間に性行為はほとんどなくなってしまいました。

 性行為で自信をつけてしまった私にとって、身体を求められないことはとてもつらいことでした。自分に魅力がなくなってしまったからなのでは、やっぱり私が太っているからなのでは、と自問自答を繰り返しては、また自分を責める日々。耐えかねた私は、また裏垢で知らない男性と不倫するようになってしまいました」

 日本の夫婦の多くは、年齢とともに性行為から遠のいていく。女性が性行為で満たせる自己肯定感は、多くの場合仮初のものだ。加齢で体型が変わってしまったり、昔ほど求められなくなった時に、すぐにまた自己受容できなくなってしまう。

「性行為がなくても、旦那は優しい。でも、私に勃起してくれない旦那が、どうしても許せない。ダメだと分かっていても、不倫をやめることができません。私は仮初の自信の代わりに、性に対する倫理感を失ってしまった。ワンナイトラブに愛はないとわかっていても、やめられないんです」

 彼女は取材中も堂々と話していた。自信がない人特有のおどおどした雰囲気はなく、人の目を見て話すことができる。彼女が性行為で得た自信や肯定感は、たしかに彼女の中にあるのかもしれない。しかし、その内実の伴わない自信が、彼女の中に「性のねじれ」を生んでしまった。

 彼女が彼女自身を承認してあげない限り、彼女は異性からの「身体の承認」なしに、その自信を保つことができない。その原体験は、思春期に容姿に対する不当な評価を得たことから来ているのだろう。トラウマは、その人の人格形成に大きく関わる。結婚して、永遠に自分を認め、受け止めてくれる人と出会っても、彼女は幼い頃から抱える心の闇に、今も縛り付けられているのだ。

<取材・文/ミクニシオリ>

【ミクニシオリ】

1992年生まれ・フリーライター。週刊誌などにアングラな性情報、最新出会い事情など寄稿。逆ナンや港区合コンの現場にも乗り込み、恋愛経験を活かしてtwitterで恋愛相談にも回答。カルチャーにも素養がある生粋のサブカル女子。Twitter:ライタ〜ミクニシオリ

関連記事(外部サイト)