すかいらーくグループ、系列レストランでの「除菌ミスト噴霧」を再開。一部店舗では「水です」と客へ説明

すかいらーくグループ、系列レストランでの「除菌ミスト噴霧」を再開。一部店舗では「水です」と客へ説明

「空間除菌中」のラベルシールが剥がされた加湿器から噴霧される除菌ミスト(左:今年11月、右:今年7月)

◆再開された「すかいらーく」の“空間除菌”

 今年8月、本メディアで報じたすかいらーく系店舗における除菌液“アピノンエアー”の噴霧問題(参照:すかいらーく系レストランでミスト噴霧される謎の除菌液は大丈夫なのか? その正体を追ってみた、すかいらーく系レストランでミスト噴霧される謎の除菌液。運営会社によって主張が食い違う「成分」)。その後、加湿器を各店舗から撤去したすかいらーくグループが11月2日から「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」など全国のブランドレストランにおいて、超音波加湿器による除菌液のミスト噴霧を再開していることが判った。しかし今回、加湿器から「空間除菌中」などのラベルシールが剥がされており、何の表示もないまま再噴霧されている。さらに、店舗への問い合わせに対して除菌液の噴霧自体を隠すような指示が出された疑惑も浮上。実際に各ファミリーレストランを取材するとミストの成分について食い違いを見せた。

◆再噴霧を糊塗か?剥がされたラベルシール

 2000年12月期の最終赤字見込みが146億円となり、来年末までに不採算店舗など約200店の系列レストランの閉店計画を今月発表したすかいらーくホールディングス(HD)。

 本メディアが今年8月に同レストランチェーンにおける除菌液の空間噴霧問題を報じた前掲の2記事との関連は不明だが、すかいらーく各レストランは報道後にミスト噴霧を取りやめていた。しかし、11月に入り超音波式加湿器による除菌液噴霧を再開した。しかし、その一方で今回、再噴霧を隠蔽しているとも取れる情報を得た。ある店舗の従業員はアピノンエアーの再噴霧に際し、除菌液のミスト噴霧を糊塗するような指示を受けたと証言する。

「店舗への問い合わせは『加湿しています」と回答してくださいと言われていますが、『成分は?』と聞かれて『ただの水です』と嘘のようなことも答えられません」

 筆者が複数のすかいらーくレストランを現地調査したところ、加湿器本体から「空間除菌中」「次亜塩素酸不使用」「天然由来の成分」といったラベルシールが剥がされており、噴霧している液体についてレストラン従業員に聞くと「アピノン」「前と同じ」「水です」と2種の異なる回答だった。しかも、ある店舗ではラベルシールを剥がすよう指示があったという。もはや、誰のためにそして何のために噴霧しているのかも判然としない状況だ。

◆各レストランを現地調査

 以下は筆者が実際に各系列レストランを訪ねて、加湿器から何が噴霧されているのか、そしてラベルシールはなぜ剥がされたのかを調査した際の従業員とのやり取りだ。

【A店】 (スープバー横に設置された加湿器には「希釈率10倍」とのラベルシールのみ貼付け)

――あの加湿器からは何が噴霧されているのですか?水ですか?

「あ、そうです」

――以前は「次亜塩素酸不使用」などと貼ってありましたよね?

「お水ですね」

――「10倍希釈」と貼ってあるのは?

「あ、剥がし忘れていて」「入っているのはお水になってます、今」「今はお水ですね」

――加湿のために?

「はい」

【B店】 (入口から客席に向かう通路脇に設置された加湿器にはラベルシール無し)

――加湿器には以前「次亜塩素酸不使用」などと貼ってあったが、噴霧しているものが変わったのですか?

「前のアピノンというあれですよ」

――除菌剤?

「そうです、変わらないです」

――前は(ラベルシールを)貼ってましたよね?

「ありました、前のは」

――あれは貼ってないですね

「これは従業員控室の」

従業員控室に設置してあったものと置き替えたという。

――一回無くなりましたよね

「無くなりました」

――また冬の時期に出したと?

「そうだと思います」

【C店】(レジ奥に置かれた加湿器にはラベルシール無し)

――あの加湿器、前はラベルシールが貼ってましたよね?

「はい、同じです」

――なぜ剥がしたのですか

「シール跡が汚くて。見た目が汚らしくて」

――中身は前と同じですか

「中身は一緒です」

――除菌液?

「そうですね」

――一時期、撤去してましたよね?

「夏は加湿になっちゃうと湿度の関係で」

――この11月からは?

「また乾燥してきますので」

【D店】(各種バーの近くに設置された加湿器にはラベルシールを剥がした跡)

――加湿器から噴霧しているのは何ですか?ただの水ですか?

「水だと思います」

――7月に来た時には「空間除菌中」と貼ってあったが今は違うのですか?

「店長がやっているのでちょっと判らないです」

――いつからやりだしたんですか?

「今月の始めからです」

【E店】(レジ横に設置された加湿器にはラベルシール無し)

――これは何を噴霧しているのですか?

「水分と空気清浄機に入れる用の薬品というか薬用のものがありまして。それの配合物を散布しております」

――ただの水ではないのですか?

「ただの水だけじゃないんです」

――以前はラベルシールが貼ってありましたよね?

「前に出していた時には貼ってあったんですけど、『取るように』という指示があって取っちゃたんです」「前回と同じ配合物が入っております」

 一部店舗では加湿器の中身を「水です」と答えており、事前に入手した情報と一致する。一方、各店舗で共通しているのはラベルシールが剥がされていたことだ。

◆お客様相談室に問い合わせると……

 各運営会社のお客様相談室に問い合わせた。

 すかいらーくお客様相談室は、加湿器の“中身”について「春先のものと同じ空間除菌の作用のあるものを購入しての噴霧ということになっております」と回答、ラベルシールが剥がされていることについては特段の意味はないとした。

「何か意味合いがあるかというと無いと思うのですが、おそらく春先に使用していた後に洗浄をしているので、そこで綺麗にしてしまった時に剥がしてしまって、そのままつけていない状態での設置となっているのだと思います」

 一旦撤去した加湿器を今月から再度設置していることについては「夏場はクーラーしてしまうと結露やカビとか違う懸念のことが起きてしまって」「11月から乾燥対策で」とその理由を挙げ、“空間除菌”への批判等によって撤去していたわけではないと強調した。

 ニラックスとトマトアンドアソシエイツ同相談室の担当者は、それぞれすかいらーくグループで同じ体制だと答えている。

「グループ一緒で11月2日から再開させていただいてます」(ニラックス)

「おなじグループなので同じ日付で再開させていただいた。ちょうど再開をする切り替えの時期。(加湿器の一時撤去は)グループで一旦下げるということだったので足並みを揃えるということで同じ理由」(トマトアンドアソシエイツ)

◆除菌液の有用性(有効性と安全性)の問題ではなく、企業倫理の問題

 現在、各レストラン営業中の店舗内で除菌液がミスト噴霧されていることを利用客が知る術はない。店頭及びすかいらーくグループ公式サイトにも一切その旨が明示されておらず、以前のように加湿器に何もラベルシールが貼られていない現状では、噴霧されているものが「ただの水」ではないことを知りようがないからだ。

 コロナ禍の社会においてユーザーが利用するレストランを選択する際、その店がどのような感染症対策を採っているかが判断材料の一つになる。最低限必要な情報を明示しないまま、利用客に“無断”で除菌ミストを浴びせている現状は、看過できるものではない。

“除菌液”アピノンエアーの有用性(有効性と安全性)や“空間除菌”自体の問題についてはメーカーの見解を含めて前述の既報記事で検証しているが、今回も問われているのはすかいらーく側の姿勢だ。

◆すかいらーくHDに質問事項を送信

 すかいらーくグループを統括するすかいらーくホールディングス(HD)の広報室に質問をメール送信した。質問事項は以下の10項目。

1.夏場にアピノンエアーによるミスト噴霧を行っていた加湿器を一旦撤去された理由及び11月2日から再度設置された理由を教えてください

2.現在、すかいらーく各店舗で加湿器から噴霧されているのは水ですか?それとも以前と同じくアピノンエアーですか

3.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、以前と違い、加湿器本体表面に何も表示していない理由は何でしょうか

4.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、店舗等で提示しておられる新型コロナウイルス対策としての取り組みの中に加湿器による空間除菌の項目をしていないのはなぜですか

5.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、実際に薬剤を噴霧していることを利用客に明示していない理由を教えてください

6.店舗に対し、「利用客からの問い合わせには『加湿しています』『噴霧しているのは水です』と答えてください」等の旨の通達をされた事実はありますか

7.ある店舗ではラベルシールが剥がされていることについて「貼ってあったが、取るように指示があって」と答えています。すかいらーくグループとして各店舗に加湿器からラベルシールを剥がすよう指示はされましたか? 指示をされた場合、なぜそのような指示を出されたのか教えてください

8.新型コロナウイルス禍においては、レストラン利用客にとって店舗がどのような感染症対策を取っているかが利用店舗選択に際し重要な要素となっています。ラベルシールが貼られていない加湿器から何が噴霧されているのか、利用客に明示・説明されていない現状についてどのように捉えてらっしゃいますか

9.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、現状としてHP・店頭・店内等で掲示されておられる新型コロナウイルス対策の項目にアピノンエアーによる空間除菌の再開は明記されていませんが、今後、明記される予定はありますか

10.現在ミスト噴霧されているのがアピノンエアーの場合、利用客にその旨を伝えていない現状について、どのように思われますか。企業の社会的責任の観点からお答えください

◆「GoToEatプレミアム付食事券」キャンペーンの一方で説明責任は

 期限までにすかいらーくHDから回答はなかった。回答が得られなかったことから、アピノンエアーの空間噴霧再開が何を目的としているのか、そしてラベルシール剥がしや除菌液噴霧を秘匿するかのような従業員への指示が出された経緯や事実関係も依然として不明なままだ。

アピノンエアーの有用性が担保されているとすかいらーく側が判断しているのであれば、店頭及び公式サイトでその旨を明示した上でミスト噴霧を行うべきである。利用客はその情報を見た上で、店舗を利用するか否かを判断できるからだ。

 折しも「GoToEatキャンペーン プレミアム付食事券」が全ブランドで使用可能となり、開始日程を調整中の山梨県の店舗を除く46都道府県での利用が開始されているすかいらーくグループ(山形県は11月26日、青森県は12月1日から開始)。

 新型コロナウイルスの感染が再拡大し第3波の到来が指摘される中、“食”を扱う企業として真摯な説明が求められる。

〈参照:すかいらーくグループ公式サイト|Go To Eatキャンペーン お食事券〉

<取材・文・写真/鈴木エイト(ジャーナリスト)>

【鈴木エイト】

すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表〜主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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