アフターピル薬局販売へ。服用経験者の声は? 間に合わず妊娠・中絶した女性も。

アフターピル薬局販売へ。服用経験者の声は? 間に合わず妊娠・中絶した女性も。

画像はイメージ(adobe stock)

◆薬局での販売を認める方針を打ち出した菅政権

 薬局での販売を求める声が根強くあった緊急避妊薬(アフターピル)。2017年には薬局販売が一度は見送られたものの、今年10月8日、政府は処方箋なしで購入できるよう検討する方針を打ち出した。

 報道を受け、インターネットやワイドショーでは、アフターピルの薬局販売をめぐって様々な意見が出ている。しかし実際に服用したことがある女性たちはどう考えているのか。

◆服用が間に合わなくて妊娠、中絶することに

 複数の人と合意のもとで性愛関係を築く「ポリアモリー」として活動するきのコさんは自信の経験から「早く薬局販売してほしい」と話す。

「アフターピルは急に必要になるものなので、薬局で入手できるようにするのがいいと思います。病院で処方箋をもらわなければならないと間に合わなくなる恐れもあるんじゃないでしょうか。

 実際、私は緊急避妊薬をすぐに買えず、妊娠して中絶したことがあります。アメリカに留学していたとき、恋人と喧嘩になり、セックスを強いられたことがあるんです。そのとき避妊をしてもらえなかったので、アフターピルを飲もうと思ったのですが……感謝祭と重なって薬局が開いておらず妊娠してしまいました。そのときは仕方なく中絶することを選びました。避妊は一刻を争うことなので、薬局での販売が望ましいと思います」

 緊急避妊薬は、避妊に失敗してから数日以内に服用する必要がある。仕事を休めず病院に行けない、年末年始で病院が開いていないといった場合、服用が間に合わずに望まない妊娠をしてしまうこともある。薬局ですぐに購入できるようになれば、こうしたトラブルを防ぐことができるだろう。

 しかしアフターピルの薬局での販売に異論を示す人も少なくない。反対意見に対してきのコさんは「アフターピルの入手が簡単になると、男性が避妊を怠るようになるという人がいます。ただ、こういう人は既にいますし、こうした人たちのためだけに入手のハードルを上げておくのは本末転倒だと思います」と話す。

「そもそも緊急避妊薬の使用や人工妊娠中絶は『悪いこと』という前提があるように感じます。アフターピルが話題になっても、そうした価値観について十分に議論されていないと思うんです。いずれも倫理上悪いことではなく、女性の権利だということが共有されればいいと思います」

◆半休を取って病院に行くのは大変

 コンサルタントとして働く20代の女性は、アフターピルを服用したときのことをこう振り返る。

「予期せず、コンドームを使わないということが起きてしまいました。不安になり、翌日に病院に行ってアフターピルをもらいました。その時は、わざわざ半休を取って病院に行きましたね。働いていると、休みを取ったり、昼休みを使って病院に行ったりしなければならず不便だと思います。そのときは、アフターピルをもらうまでとても不安で落ち着かない気持ちでした。薬局で夜や出社前に購入できれば不安も減ると思います」

 働く女性たちにとって病院の受診はハードルが高い。都内であれば、遅い時間でも緊急避妊薬を購入できる病院がいくつかある。しかしそうした病院にアクセスできなければ、望まない妊娠の可能性が高まってしまう。

 また女性は、アフターピルの価格についても気になるという。現在、日本ではエラとノルレボという二種類の薬が利用可能だが、エラは9000円〜1万数千円程度、ノルレボでも8000円〜1万円程度する。

「アフターピルは値段が高いので、薬価が下がるといいと思います。私は少しでも安い方がいいなと思ったのでノルレボを服用したのですが、副作用で強い吐き気が出てしまいました。こういうとき薬剤師さんに相談できる体制が整っているといいなと思います。また、アフターピルだけでなく、低用量ピルも薬局で販売にするという選択肢はないのでしょうか」

◆「婦人科医は診療報酬を失いたくないのでは」

 物流業界で事務員として働く30代の女性も薬局販売への異論に首をかしげる。

「なぜ薬局での購入に反対する人がいるのかよく分かりません。婦人科医たちは、診療報酬を失いたくないから反対しているのではないかと思ってしまいます。反対意見は全て筋が通らないものばかりです。

 私は、相手に懇願されてつい避妊をせずにセックスしてしまい、後から不安になってアフターピルをもらいに行ったことがあります。都心の夜遅くまでやっている病院を知っていたので数日以内に服用することができました。しかし医師の診察を受ける必要は感じませんでした。薬局で薬剤師さんから説明を受けられれば充分ではないでしょうか」

 アフターピルの薬局販売について報道されるようになってから、「女性への性教育が必要だ」という声が聞こえるようになった。しかし今回の取材で、自ら進んで避妊せずにセックスした女性はいなかった。むしろ避妊を蔑ろにする男性が多く、若い男性への性教育が必要と言えそうだ。

「妊娠すると女性は生活が大きく変わってしまいます。在学中に妊娠して退学してしまったり、仕事との両立に苦しんでキャリアを追求できなかったり……。だからこそいつ妊娠するのか、子供を持つのかどうか、女性がきちんと選択できるべきです。そのための手段として低用量ピルやアフターピルがあるのに、偏見や医療制度のせいで利用できないというのはおかしいと思います」

<取材・文/HBO編集部>

関連記事(外部サイト)