日本だけが取り残される「不正選挙デマ」。右にも左にもいる、デマに乗る人達

日本だけが取り残される「不正選挙デマ」。右にも左にもいる、デマに乗る人達

フィラデルフィアの開票所前まで行ってトランプ支持者の話を聞く我那覇真子氏。この行動力は大したものではある。そして、「トランプの反撃が始まる!」などの彼女のツイートには多くの賛同が寄せられていた

◆なぜか日本で「トランプ支持」を叫ぶ人々

 前回、本国アメリカで猛威を奮い、ある出来事をきっかけに急速に萎み始めた不正選挙デマについて、最前線から見てきた現実をリポートした。

 本国アメリカではすでに終息したにも関わらず、不思議なことに日本からはまだまだイキのいいものが届く。(11月25日や29日にも数寄屋橋トランプがんばれ!と冠したデモがあった)4年間フェイクニュースに抗うことをメインテーマとしてきた私としては、これらの存在を点ではなく線で捉える。するとわかってくるのがこの不正選挙デマに加担している人の多くが、その直前はPCR検査不要論を展開した層であり、常日頃、沖縄の基地建設反対運動に対して悪質なデマを広めてきた人々であった。

 しかしHANADAや虎ノ門ニュースなどのネトウヨ勢に、なぜか今回はリベラル、スピリチュアル系の人々が加わっていることも判明している。Qアノンとれいわ新選組支持者の相性が良いことは以前から注目していたが、これほどとは、、、ましてや今回の不正選挙陰謀論は、沖縄の基地反対運動に参加する人々にまで浸透していることもわかってきた。

 以下、日本の不正選挙論者を系統立てて解説してみよう。

◆1、ネトウヨ系

 HANADAやWILL、虎ノ門ニュースなどに登場するビジネス保守言論人たちをヒエラルキーの頂点に、安倍政権バンザイを繰り返し、自民党マネーの庇護のもと嫌中嫌韓反野党で生計を立てプレゼンスを維持してきた人々だ。中間層には再生数稼ぎのために加担するYouTuberもいる。末端を支えるのは、中国脅威論をベースに、「愛国」者を自称することで国家と自己のアイデンティティを同化し、確立し損ねた自己と承認欲求を埋める存在たちだ。

 この層はもとからトップダウンで誤情報を鵜呑みにし、他者を攻撃してきた。逮捕されたトランプ側近のバノン氏が日本を訪れた際「安倍氏はトランプ大統領誕生以前からトランプであった」との言葉を残している事からも分かる通り、日本の中にファシズムを体現する勢力と言える。情報を自分で選別する能力がなく、自己の確立に失敗し自己決定権を放棄し、強力な存在に依存するという点でもトランプ支持者とはとても相性が良い。彼らが信じる「トランプは演説で毎回安倍晋三の名前を出した」「拉致被害者家族に会った米大統領はトランプだけ」というのももちろんデマである。

 ただ、ネトウヨ保守言論人の中にも、この先のビジネスを見据えたのだろうか、いち早く不正選挙論から身を引いたものたちがいる。菅義偉首相がバイデン勝利を祝うツイートをしたことも大きいが、そんな彼らや菅首相にも、不正選挙論者たちは牙を剥き、内紛が起こっている。さらに沖縄でデマをまく沖縄デマ三銃士として有名な我那覇真子氏はわざわざ渡米し、まんまと不正選挙論に毒されている。彼女は沖縄の米軍基地強化論者なわけだから、このままいくと不正選挙で大統領になったバイデンに指揮権のある米軍を沖縄におかなければならないという矛盾に直面することになるだろう。一体どんな言い訳をするのか、注目である。

◆2、カルト信者系

 自己確立に失敗し、強力な存在に依存することで承認欲求を満たす点で1のネトウヨ系とも似通った層であるが、それがより強固な信仰の域にまで達している。これには日本の多くのカルト宗教が中国の脅威を利用して、信者の獲得をしているという背景の理解が必要だ。また今回、日米で飛び交う不正選挙デマの発信源の多くが宗教系や在米中国系メディアである考えると、そこには郭文貴とスティーブ・バノンの不透明な協力関係も浮かび上がってくる。中国から米国へ亡命し中国民主化運動の英雄のような顔をしながら、トランプのネット戦略を一手に担ったバノンと協力関係にある郭文貴だが、選挙後の消息は掴めていない。

◆3、反軍産複合体リベラル系

 私はこの存在に最も頭を悩ませている。沖縄の基地反対運動の中にもトランプ支持の声がある。確かに4年前、「ヒラリーになるよりはトランプであればまさかの基地撤退がある」と考えた人々がいるのは知っていたし、その気持ちは理解できた。しかし、この4年間のあまりに人権を省みなかった彼の仕事ぶりを考えると今はもうそんな「まさか」に期待している場合ではない。それでもいわゆるリベラル派の中にトランプ支持が浸透する大きな理由は「トランプは戦争をしていない」というイメージからだ。

 Qアノン発のこのイメージ戦略に日本のリベラルはもまんまと踊らされてしまっている。「戦争」という概念の解釈を巡っての議論が分かれるところだが、トランプの4年間は「戦争」はしていないが「攻撃」はしている。まるで日本の防衛大臣の答弁のような玉虫色のものだが、イランやシリアへの空爆には(局地的なものとの見方もあるが)合意してきた。

 この件についてアメリカ人に聞いてみると、「トランプは新しい戦争をしてないってだけだよ。まして国内は内戦の危機まで行っているし、コロナ対策をせずに25万人の死者を出した。これは戦争どころではないよ」とのことだ。

 さらには先日、選挙での敗北が濃厚になってから、トランプはイランへの攻撃を画策し、国防総省に止められるというニュースもあった(参照:BBC)。

「トランプが戦争をしない」=「平和主義者」だというイメージは米国ではすでに地に落ちたものだ。

 また、民主党政治家と軍産複合体をセットで語る論調も怪しいものだ。共和党も戦争をしてきた訳だし、トランプとロシアとの関係の密接さも気になる。今のアメリカを見ていると、旧来の軍産複合体利権から離れて動いていく民主党政治家たちの台頭は明らかである。

◆4、スピリチュアル系

 いわゆるスピリチュアル系にも不正選挙論は浸透している。ラッパー、Kダブシャイン氏は、あまりにトランプ支持に熱を入れQアノンや新宗教系メディアを引用するようになり、Qダブシャインとしてアメリカにも広まっている。

 ミュージシャンやスピ系の陰謀論はとにかく荒唐無稽なものが多い。

 オバマのパートナーの「ミシェル夫人は男だった」とか「バイデンの耳の形が変わったので2人いる」というもの。果ては「バイデンは『カバール』(人身売買で世界を牛耳る存在)であり、その当選を祝った菅義偉も玉城デニーも大袈裟太郎もカバールである!」とか……。「トランプから日本人ひとりに6億円が振りこまれる」というものもあった……。

 スピ系ミュージシャン系にこれらの荒唐無稽なデマが浸透するのは、彼らが一般的な社会経験を経ずに、一芸に秀でた才能でポジションを得た存在だからではないかと、僕自身もラッパーとして分析する。社会経験の乏しさから、社会の構造への認知が歪んでおり、そこにQ的な陰謀論が入り込むのだろう。社会というのは名もなき人々の各所各所での信頼や実績、その営みの積み重ねの上に成り立つのだ。そういう意識が彼らには欠如しているように見える。

◆5、香港民主派

 これは番外編になるが香港の民主派、プロテスターの中にもデマや印象操作によるトランプ支持は根深い。中国からの圧倒的な弾圧の救い主はトランプしかいないという印象付けが強く行われている節がある。

 オバマの民主党が中国を野放しにしたとか、トランプは裏で香港を支援しているとか、確認の取れないものばかりで、これには僕自身も苦慮したが、香港人で現在は警察の手を逃れ欧州にいるある人物とやり取りし、トランプの背景にバノンと郭文貴がいることを伝えると理解した様子だった。「郭文貴は誰も信じない、怪しすぎます」それが彼の見解だった。これには僕も安心した。

 さらに言えば、6月に僕がシアトルで殴られた際に、広島の原爆投下を引き合いに出し日本人への人種差別発言までしてネットで嘲笑ったのがトランプ支持者のネオナチたちだった。

 そんな彼らを支持基盤にもつトランプが、香港人の人権に本気で尽力するとは到底思えない。自国民の人権さえ蹂躙している人物なのだ。アジア人の人権に目を向けるだろうか?

 人権というシンプルな観点で見ればわかるはずだ。今、複雑に絡み合った世界情勢を紐解くには、人権が最も有効なものさしになる。この観点に立ち返れば、政治家を見誤る危険は回避できるはずだ。

 さらに対中国という構造で考えても、トランプは脆弱である。彼は多国間協定を破棄し、常に一国での外交にこだわった。この外交政策が香港への中国の弾圧を許すきっかけになったと私は考えている。

◆日本のジャーナリズムの敗北

 いわゆるBBFおじさん現象、不正選挙デマについて焦点を当てた結果、彼らに重要な共通項があることがわかってくる。それは事実と願望の区別がついていないという点だ。

 しかし、どうして選挙権もない他国の選挙にここまで執心できるのだろうか?

 私は選挙後に「バイデンは共産主義者であり、中国の手先だ」と断定しているツイッターアカウントを追跡した。驚くことに彼らはその後、ムーミン谷に紅葉を見に行ったり、のほほんとした日常に戻っている。本当にバイデンが中国の手先だとしたら、あなたはのほほんと紅葉を見れますか? 僕には理解できない。途方もない無責任さなのである。

 日本において、こんなに無責任で事実と願望の区別がつかない人々が大量に発生していること、これは日本のジャーナリズムの敗北だと私は考えている。BLMが中国に乗っ取られたというデマも、プロテストと略奪が別であるという事実も、日本のジャーナリズムはきちんと検証してこなかった。彼らはフェイクニュースの根本を絶つことから逃げ、事実を伝える責任を果たして来なかったのだ。

 そう、すでに日本のジャーナリズムは再生数稼ぎのYoutuberに敗北しており、それが今回、米国の事案であったことで可視化されたにすぎない。

 トランプがホワイトハウスから去っても、職を解かれた彼のTwitterが凍結されたとしても、この問題は放置されるままだ。まずこの敗北を真摯に受け止めることができなければ、日本のジャーナリズムに復興の道は無いのだ。今回のことがその大きなきっかけになることを願いながら、NYの寒空を独りぼんやりと見上げている。

<取材・文・撮影:大袈裟太郎/猪股東吾>

【大袈裟太郎】

おおげさたろう●1982年生まれ。本名、猪股東吾。リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り「フェイクニュース」の時代にあらがう。2020年6月よりBLM取材のため渡米。

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