微表情の知識を知っていれば、営業の成功率が上がる理由

微表情の知識を知っていれば、営業の成功率が上がる理由

アン・デオール / PIXTA(ピクスタ)

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。本日は、表情分析の専門資格を持つT・Hさん(37歳・男性)からビジネスの現場での表情観察・分析スキル活用法について伺ったお話を紹介したいと思います。

 福島県郡山市にお住まいのT・Hさん(37歳・男性)。金融・保険業に15年以上携わり、営業、クレーム対応、監査、部下指導全般など様々な職種を経験されてきた現役のビジネスパーソンです。

 趣味として、メンタリズムやマジックを行う中で、観察の重要性に気づき、表情分析に出会ったとのことです。趣味が高じて表情分析の専門資格であるFACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)を取得されました。ここ数年、T・Hさんは、部下指導をされることが多く、指導や教育の場面で表情観察・分析スキルを活用されることが多いそうです。

 以下、T・Hさんの体験談です。

◆客の気持ちが変わり、契約成立に至った体験

 私は教育係として営業実績の上がらない営業パーソンに同行して教えることが多々あります。ある日、一人の部下がお客様に対し一生懸命商品の説明をしていました。お客様も頷きながら話を聞いていましたが最後の最後で契約に至らないというケースがありました。

 私は、部下が営業をしている様子を横で一切口を出さず、観察していました。その時、私はお客様の眉に注目していました。時折、お客様の眉は下がり眉間にしわを寄せながら頷いていました。これは熟考を意味する表情です。お客様は商品のメリットを十分に理解されていなかったのだと考えられます。この様子に気づいた私が営業に割って入ってメリットの説明をさせて頂いても良かったのですが、それでは教育効果がありません。成功するには、失敗という悔しい経験が必須です。

 一旦帰社した後、部下に話をしました。

私:何がダメだったと思う?

部下:わかりません

 本人は全く気づいていませんでした。そこで私は、「言葉をもっと簡単にしてゆっくりしゃべること、そして要所要所で確認をとること。この二つを意識して下さい」とアドバイスをしました。

◆表情の変化から、客の真意を理解

 後日、同じお客様のところに伺いました。「前回話を聞いたからもういい」と言われましたが、「説明不足のところがありましたので」と言うと、再度話を聞いてもらえることになりました。

 今度は事前に練習した通りに、部下は簡単な言葉でゆっくりと話していきました。すると前回とは違ってお客様の眉間にしわはなくなり、眉が上がるようになりました。眉が上がる表情は理解したり、興味を持ってくれているときに生じます。すると、お客様が

 お客様:そういった意味だったのか。じゃあ、それにしようかな。

 と言って下さり、契約に至ることが出来たのです。

 お客様の表情を気にすることによって、お客様が商品に興味を持っているのか、内容を理解しているのかを知ることができます。

 理解していなければ眉が下がったところで、「どこか質問がありますか」「わからないところありますか」など先を急がず話を聞くことで、理解して頂けたり、はじめから興味を持っていない様子であれば違う商品を進めることができます。表情を観ることで相手を理解することができます。ビジネスは相手を理解することが最も重要な要素の一つなのです。

◆知り過ぎはOK、伝え過ぎはNGの理由

 二つ目の話は、保険の営業担当となった同僚とお客様のもとへ訪問した日の出来事です。その同僚は、これまで事務の仕事を担当していましたが、担当が営業に代わったため、教育係として私が同行することになったのです。

 事務の仕事はキッチリ行っている方だったので営業も大丈夫かなと思っていました。案の定、新規訪問のお客様のため、事前の準備もしっかり。お客様の加入されている保険状況などを把握したうえで、どのような商品がお客様に合っているかを推測し、おすすめプランを作成していました。実際、お客様と会ってからもしっかり説明が出来ていました。

 しかし、契約が取れなかったのです。もちろんいろいろな理由が考えられます。例えば商品が合わなかったとか、もともと必要なかったなどが考えられるでしょう。しかし、私はそういったことが理由ではないと感じました。

 そう感じたポイントはどこかというと、最初に会って挨拶をした後にお客様に微表情が現れたのです。

 同僚:こんにちは。お世話になっております。○○様は現在このような保険に加入していますよね。今新しい商品が出まして……。

 と同僚が、現在お客様が加入している内容を話し始めたときでした。一瞬眉が中央に寄りながら下がり、唇が上下からプレスされたのです。これは怒りの微表情です。なぜ怒りが現れたのでしょう?

 「なんで勝手に自分のことをいろいろ調べて来てるんだ。商品を売りつけられるんではないか」

 私は、お客様がこう考えたのではないかと推測しました。

◆微表情の知識があったからこそ、客の不快感を察知できた

 お客様について事前に調べることは悪いことではありませんが、いい気がしないお客様もいます。そして、そこで商品を進められても「それを売りたくて来たんだろ!」となってしまうお客様もいるのです。ここで壁ができてしまうといくらお客様のことを考えて提案した商品でも加入してくれなくなってしまいます。

 そこで、次のお客様のところにいく前に商品の提案を目的に行くのではなく、相談を聞きに行くような感じで行ってみてはどうかとアドバイスしました。

 「このような保険に入られていますよね」ではなく「今入られている保険はどのようなものですか」「最近それらの保険で不便を感じたりすることはないですか」このように尋ねることで、お客様自らが話し始めてくれ、ニーズを聞き出すことができます。そしてお客様が自ら語ってくれたニーズに合ったものを提供すれば加入してくれる可能性も上がります。

 お客様の微表情を読み取り、同僚営業パーソンのどこに問題があったのかを知ることができ、的確にアドバイスをすることができました。営業する方も微表情を検知し対応していくことができれば実績につながると思いますし、アドバイスする方も微表情を読み取り理解することで適切なアドバイスができるようになると思います。

 最後にT・Hさんに今後の抱負を語って頂きました。

 「今後とも、ビジネスの中で表情分析のスキルを活用していくことに変わりはありませんが、自分でセミナーを開きたいですね。実は、すでに2回ほどセミナーを開いてみたんです。そしたら、『表情に込められた意外な真実』や『相手の本当の想い』というものを知ることが出来たと参加者の皆さんが喜んでくれたんです。だから、表情分析を活用した自分のビジネス経験をたくさんの方に伝え、良い人生を送るお手伝いが出来ればと思っています」

<文/清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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