在外邦人、異国でのコロナ感染。「小さい子どもがいる家庭は特に大変」

在外邦人、異国でのコロナ感染。「小さい子どもがいる家庭は特に大変」

3歳と1歳の子どもがいるMさん。幸い残りの家族は陰性だったが、小さい子どもたちとの自主隔離は苦労することも多かったという

 日本でも、連日各地で感染者数が増加し続けている新型コロナウイルス。欧州では秋の訪れとともに感染が拡大し、各国で厳しいロックダウンが敷かれている。

◆国際結婚でポーランド在住の邦人、コロナ感染

 異国の地でコロナショックに見舞われ、自身も感染してしまう……。そんな悪夢のようなシナリオは世界各地で現実となっている。数年前から東欧・ポーランドで暮らし、国際結婚を経て日系企業で勤めているMさん(31歳・男性)もその一人だ。辛いコロナの症状や自主隔離中の生活、検査までの流れなどを証言してもらった。

「時系列で説明すると、数週間前の日曜日の夜ぐらいから風邪っぽい症状が出始めたんです。翌日、月曜日の朝に検温したところ、37度ぐらいの熱がありました。勤めている会社では、毎日出社するときに入口で検温をしているので、その日は休むことにしました。初日はスゴく体が怠くて、熱も最高38.6度まで上がりました」

 コロナが猛威を振るっている時期だけに、真っ先に感じたのは自分が感染してしまったかもしれないという不安だ。しかし、それを確かめるだけでも、いくつか障害があった。

「ここポーランドでは国民皆保険があって、自分のかかりつけの医者を登録する仕組みになっています。まずは電話で予約をしなければいけないのですが、その日は予約がいっぱいで診察してもらうことはできませんでした。コロナの検査を頼むにも、登録している医者の指示書がないと受けてもらえないんです。自腹で保険適用外の病院に電話をして解熱剤をもらったのですが、検査は登録している医者からの指示書がないと行えないので、月曜日は無駄足に終わってしまいました」

 その時点では味覚や嗅覚なども働いていたが、「ただの風邪」のような症状では検査を受けられないかもしれない……。Mさんは妻と2人の子どもたちと暮らしているため、一刻も早く検査を行いたかったそうだが、登録をしているかかりつけの医者に診察してもらったのは、症状が出始めてから3日目の火曜日だった。

「そこで、ようやく検査を行うための番号が記載された指示書をもらい、ドライブスルーのような形の検査を受けに行くことができました」

◆検査結果もスムーズにオンラインで確認できる

 向かったのは、スポーツアリーナの駐車場に設置された検査場。指示書を集計するテントと、医師が待機するプレハブがあり、Mさんは車に乗ったまま検査を行った。

「まずはテントのほうから、ネックウォーマーを口に巻いた軍人が指示書の番号や個人情報などを確認しに来ました。思っていたよりも軽装で少し拍子抜けしましたね。その後、プレハブのほうから、こちらは全身防護服でフル装備の女性が検査キットを持ってやってきました。ご存知の方も多いと思いますが、検査の内容は鼻に綿棒を入れるもので、インフルエンザの検査に似ていました」

 こうしてようやく検査を済ませたわけだが、ここからの手順はスムーズだったという。銀行のオンライン決済などに使用しているログイン情報を用いて、医療ページにアクセスすることができるため、検査結果は随時ネット上で確認できたのだとか。

「48時間以内に結果が出るとのことでしたが、翌日水曜日には早くも陽性だと医療用ページで通告されました。周りにも感染者が多く出ていたので、それほどショックはありませんでしたが、これから自主隔離に入るのかと思うと、やはり辛かったですね」

 いっぽう、残りの家族は妻も子どもたちも無症状。しかし、それでは検査を受けることすらできないので、「風邪のような症状が出ている」とかかりつけの医者に連絡し、なんとかテストを行うことに。結果は陰性だったが、皮肉にも自主隔離の期間は陰性のほうが長かったという。

「陽性だった場合は10日間なのですが、陰性の場合でも濃厚接触者は遅れて症状が出る場合があるので、さらにもう一週間自主隔離しなければいけないんです。陽性判定が出て、すぐにかかりつけの医者と保健局から連絡がきて、同居している家族の個人情報や、症状が出てから誰と会ったかといった追跡調査が行われました」

 こうしてMさん一家は自主隔離の生活を始めることとなった。

◆熱はすぐに下がったが味覚が消えた

 唯一、感染していたMさん、前述のように日曜日・月曜日とまずは熱が上がったが、検査結果の出た水曜日からは体の怠さも和らいできたという。しかし、木曜日からは自身がコロナに感染していることを嫌でも実感することとなった。

「味覚と嗅覚を感じなくなってきたんです。体調はよくなってきたのに、そういった症状が出て不思議な気分でしたね。ただの風邪だと鼻水がダラダラ流れますが、コロナの場合は鼻腔の上のほうがスゴく詰まっているような感じでした。呼吸はできるんですが、その症状が長くて、翌週の火曜日ぐらいまでは鼻が詰まって味もに匂いも感じませんでした……。その後、水木金曜日とだいぶ回復し、ようやく自主隔離が終了しました。隔離期間終了後は電話でかかりつけの医者から連絡がきて、土曜日からは外に出ていいですよ、と。ただ、陰性だった家族は引き続き、もう一週間隔離しなければいけませんでした」

 コロナが爆発的に広がる前は、勤め先にもたびたび厚生労働省から連絡が入り、消毒や濃厚接触者の追跡が行われていたそう。しかし、一日で数千人、万単位の感染者が出ている現在は、電話でのヒアリングで自己申告になっているという。

「隔離期間中、はじめは毎日パトカーが巡回しに来ていました。『家にいますか?』と連絡がくるので、窓から手を振って自主隔離していることを見せて。ただ、毎日ちゃんと自宅待機していたからか、それは最初の一週間だけでしたね。毎日しっかり家にいることをアピールしていたからかもしれません。もちろん、外出などをして確認が取れなかった場合は、罰金が課せられます」

◆異国の地での「隔離」

 また、隔離期間中は次のような生活をしていたという。

「大人だけであれば、むしろ仕事が捗ることもあるかもしれませんが、小さい子どもたちと暮らしていると、精神衛生上キツいですね。子どもがいなければ、ホームオフィスをしているのと変わらないので。ただ、現場に出ないといけない業種の方は、お客さんへの対応など、ストレスが溜まると思います。うちは庭があるのでまだマシでしたが、狭い家だと刑務所状態になりますからね……。他人とシェアハウスをしている人や、学生などはいろいろ大変なんじゃないでしょうか」

 このご時世、必要なものはネット上でなんでも手に入るが、コロナの影響が関係しているのか、そちらも難点があったそう。

「食糧や生活必需品はネットでなんとかなるだろうと思っていたのですが、納期がスゴく遅かったり、注文したものの半分しか届かなかったりして、結局は知り合いなどに頼んで、家の前に置いてもらうことにしました。子どもがいるとオムツなどすぐなくなるので、Uberのような形でスーパーの買い物代行を頼めたら、便利だと思いましたね。必要最低限のものは備蓄しておいたほうがよかったなと思いましたが、特に大きな買いだめはいらないと思います」

 こうしてなんとかコロナの感染を乗り切ったMさん。感染が拡大している日本の状況はどのように見てるのだろう。

「ハッキリ言って、感染を防ぐのは難しいですよね。かからないためのリスクについては、マスクを着けて人の多いところを避けるぐらいしか、努力はできないと思います。体力がないと重症化しやすいので、地道に普段から運動をしたり、食事や規則正しい生活を心がけて、いつ感染してもおかしくないという前提のもとに生活するのが、我々にできることなんじゃないでしょうか。買い物や仕事はしなければいけないので、完全にロックダウンするのは難しいですからね。経済とのバランスもありますし。無症状で感染している可能性もあるので、結局検査をしないとわからないというのがコロナの怖いところです。政府の対応については、GoToトラベル・キャンペーンなどで、この時期に移動を促しているのは、やらなければいけないことの真逆だと思います」

 幸いにも家族は陰性、本人は軽症で済んだMさんだが、筆者の周囲だけでも「一日20時間ぐらい寝たきりで、10日ほど記憶がなくなりました」(40代・男性)というケースもあった。

 日本でも感染者は増えるいっぽうなだけに、万が一感染した際の対策や、より円滑・安全な検査システムの導入、そして指針となる政府の対応が必要となるだろう。Mさんの証言からも、きっと学ぶことがあるはずだ。

<取材・文/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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