パチンコ業界の高射幸性遊技機撤去。店舗側の断腸の思いと業界内の葛藤

パチンコ業界の高射幸性遊技機撤去。店舗側の断腸の思いと業界内の葛藤

ナオ / PIXTA(ピクスタ)

◆業界に波紋を呼んだ、「ともえ町田」の組合員資格停止

 700店舗以上ある東京都のほぼ全てのパチンコ店が加盟する東京都遊技業協同組合(以下、都遊協)が11月16日、組合店舗である「パールショップともえ町田609」(東京都町田市、以下「ともえ町田」)の組合員資格停止を決定したと業界関係誌が一斉に報じている。

 政府がコロナ禍による緊急事態宣言を発布した4月、都の営業自粛要請に応じなかったいくつかの店舗すら実質的には処罰することのなかった都遊協が、今回、一組合員の資格を停止した、一般メディアにも取り上げられないこのニュースは、果たしてパチンコ業界にとってどのような意味を持つのか。その内幕を探る。

 「ともえ町田」に組合員資格停止処分が下されたのは、「組合活動に支障をきたし、またはきたす恐れのある行為を行った」ことが理由だ。

 具体的には、パチンコ業界が推し進める高射幸性遊技機の撤去に応じなかったという問題である。

 コロナ禍による国家公安員会規則の改正により、2020年5月20日以降に設置期限を迎える全ての旧規則遊技機(2018年2月の遊技機規則改正によりそれ以前の旧規則遊技機は順次撤去しなければならない)は、その期限が1年間延長された。

 多くの部品を海外から調達する遊技機の製造が滞っていることや、遊技機の大量入替による人の接触機会を低減させることが目的であった。

◆パチンコ業界団体に単独、反旗を翻した「ともえ町田」

 しかし、14に及ぶパチンコ業界団体の統括的な役割を担う「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」(以下、21世紀会)では、国家公安委員会規則が定める設置期限よりも短い期限での撤去を促した。

 特にギャンブル等依存症に影響を及ぼすとされる高射幸性遊技機は遅滞なく本来の設置期限をもって撤去するよう取り決めた。法的根拠は無い。あくまで業界の自主規制としてである。

 21世紀会は、この取り決めをパチンコ店が遵守するよう、該当遊技機の撤去を約束させる「21世紀会誓約書」を作成し、全国のパチンコ店の99%以上がこの誓約書を提出している。

 「ともえ町田」は、この誓約書を提出せず、また該当する高射幸性遊技機の撤去も行わなかった。これが組合員資格停止の理由の内幕である。

◆それでも9割が高射幸性遊技機の撤去に応じる理由

「全国のパチンコ店が、業界の未来を考え高射幸性遊技機を撤去するなか、その取り決めを守らないお店には正直、怒りを越えて悔しさを感じます。確かに法的には問題ないかも知れないが、業界関係者であるならば、撤去しなくてはならない理由も充分に知っているはずなのに」

 神奈川県にある某パチンコ店の店長は、感情を噛み殺しながら筆者にこう話してくれた。そもそも全国のパチンコ店は、なぜ法律に反する事のない遊技機を撤去しているのか。

 高射幸性遊技機はパチンコ店の営業を支える柱の遊技機である。ましてコロナ禍によって客数も売上も格段に落ち込んでいる。そのような状況下において、ほぼ全国のパチンコ店が高射幸性遊技機を撤去したのは、政府のギャンブル等依存症対策に協力する業界の呼び掛けに応じたものであるし、同対策において警察行政が一番問題視している高射幸性遊技機をしっかり撤去することにより、今後の規制緩和の議論の土台を築きたいという業界の思惑に同調したきらいもある。

 業界団体が21世紀会の取り決めに応じない場合、何かしらのペナルティを課すという声明を発出しているのも理由だろう。

◆高射幸性遊技機を撤去していないパチンコ店は他にもある

 しかし足並みが揃わない。

 高射幸性遊技機を撤去しない「ともえ町田」側にも、法律に反していないという反論もある。業界団体がペナルティを課すのであれば、そしてそれが正当なものであれば甘んじて受け入れるという姿勢もある。

 双方に言い分はあるのだが、その主張の根本が、個社個店の視点なのか、9000店舗以上が営業を続ける業界視点なのかが問題なのだ。そしてこの二つの視点から導き出されるものが相反する場合、それは衝突せざるを得ない。

 実は該当する高射幸性遊技機を撤去していないパチンコ店は「ともえ町田」だけではない。

 全国規模ではいくつかのパチンコ店が、高射幸性遊技機での営業を続けている。ちなみに大阪府のみ撤去期限は12月末以降なので設置は可能なのだが、それ以外のすべての都道府県では該当遊技機の設置期限は過ぎている。業界団体はそのようなパチンコ店を歯痒く思っているし、そのようなパチンコ店の隣で営業を続ける競合店は歯噛みをする思いだろう。

 そのような業界内の様々な思いが交錯する状況で、今回都遊協が下した処分は、実は業界団体側が、全国で初めて公に処分したもの。処分によって「ともえ町田」が被る不都合の大小が大事なのではない。都遊協が示した「一罰百戒」の想いが果たして全国のパチンコ店に伝わるのか――

 高射幸性遊技機を巡るパチンコ業界内の葛藤は、まだまだ複雑に絡み合っている。

<取材・文/安達夕>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

関連記事(外部サイト)