2020年の女性たちに勇気を与えたシスターフッド映画11選

2020年の女性たちに勇気を与えたシスターフッド映画11選

HUSTLERS公式サイトより

 2020年、新型コロナウイルスにより、映画業界は大打撃を受けた。大作の公開延期が続き、映画館は苦境に立たされ、多くの関係者が仕事を失い、収束の目処は一向に立たない。それどころか、冬になり世界中でさらに感染拡大が広がり、より状態は厳しくなっている。

 そんな中でも、映画業界には新しく、喜ばしい潮流がある。2020年は、女性のエンパワーメントに溢れる、または女性の辛い心境に寄り添った、“シスターフッド”映画が充実していたのだ。

 シスターフッドとは、女性同士の連帯や絆を示す言葉だ。1960年代から1970年代のウーマンリブ運動の中でも使われており、近年の映画作品においては厚い信頼や友情に基づく、姉妹または姉妹に近い関係性を指すことも多いようだ。

 ここでは、幅広い方におすすめしたい、2020年に日本で公開されたシスターフッド映画を11作品紹介しよう。いずれも女性が勇気づけられるだけでなく、男性にとっても学びが得られる作品だ。

◆1:『ハスラーズ』

 ストリップクラブで働く女性たちが、ウォール街の裕福な男たちから数年に渡って大金を騙し取っていたという実話の映画化だ。彼女たちはリーマンショックのあおりを受けた上に、シングルマザーとしての生活費や、収監中の恋人の弁護士費用など、それぞれの事情で困窮していく。それなのに、「経済危機を引き起こした張本人である金融マンたちは、なぜ相変わらず豊かな暮らしをしているのか」ということに憤り、彼らから金銭を巻き上げようとするのだ。

 主人公たちがやっていることは犯罪そのものなのだが、「そうせざるを得なかった」彼女たちにどっぷりと感情移入ができるようになっている。社会における格差や搾取の構造もあって、本来であれば犯罪をせずに真っ当でいられたはずの “良き人たち”が、生き延びるために道を間違えていく様は悲哀に満ちていると同時に、「搾取してきた男たちを騙す」という過程があるために痛快でもある。そんな複雑な心境にさせてくれる作品なのだ。

◆2:『スキャンダル』

 2016年にアメリカで実際に起こったセクハラ騒動の映画化だ。クビを言い渡されたベテラン女性キャスターが、テレビ業界の帝王と崇められるCEOを告発するという、原題の「Bombshell(爆弾ニュース)」通りの衝撃的な内容となっている。

 劇中では権力者の男性が立場の弱い女性を性的な目で観察、いや“品定め”をするというシーンがあり、セクハラの気持ち悪さとおぞましさを真正面から描くという覚悟があった。

 あえてカタルシスを排除した淡々とした語り口であるため、痛快なエンターテインメントを求める人には向かないだろう。だが、その極めて“現実的”な描き方こそが、いかに女性が巨大で理不尽な権力に苦しめられてきたか、いかに告発することが難しかったのか、というこれまでの普遍的な事実を際立たせるようになっている。

◆3:『チャーリーズ・エンジェル』

 テレビドラマとして人気を博し、2000年公開の映画版も大ヒットした『チャーリーズ・エンジェル』をリブート(仕切り直し)した作品だ。3人の女性が世界の危機を救うためにアクションを繰り広げる!という実にわかりやすい内容であり、『トワイライト』シリーズなどで人気のクリステン・スチュワートの“イケメン”ぶり、実写映画版『アラジン』でブレイクしたナオミ・スコットの“戸惑いながら頑張る新人”はずっと見ていたくなる魅力がある。

 正直に申し上げれば、女性の強さを示すためとは言え男性キャラクターを相対的に下げすぎじゃないか、物語がいくらなんでも無茶じゃないか、などの不満もある。実際に本国では興行的にも批評的にも失敗作となってしまったのだが、単純明快なガールズアクションムービーだからこその痛快さは存分にある。カッコいい女性たちの連携や関係性を手っ取り早く観たいという方におすすめしたい。

◆4:『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒BIRDS OF PREY』

 スーパーマンやバットマンで知られる“DCコミック”の人気キャラクター、ハーレイ・クインを主役に迎えた作品だ。悪のカリスマであった恋人のジョーカーと別れたハーレイは、全ての束縛から解放され、新たな最強チームを結成。謎のダイヤを盗んだ少女をめぐって、残忍な敵と対決することになる。前述した『スキャンダル』ではセクハラを受けてしまう役を演じたマーゴット・ロビーが、こちらではボコスカと男をなぎ倒すキャラへと変貌しているので、合わせて観るとよりスカッとできるだろう。

 屈強な男たちを体術やバットでぶっ飛ばしていく痛快なアクションがてんこ盛りで、ハーレイの“気まぐれでめちゃくちゃ”な性格を反映したような時系列をシャッフルさせた作劇も楽しい。口下手で社会に馴染めない美女、職場で軽んじられている中年女性、生意気な少女など、チームのメンバーそれぞれが個性的でみんな大好きになれる。アメリカンコミックという世界中で人気の題材で、ストレートなガールズフッド映画が生まれたという事実が、嬉しくって仕方がない。なお、現在はNetflixで見ることができる。

◆5:『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』

 誰もが知る名作小説「若草物語」の映画化作品だ。女性がアーティストとして成功することが難しい時代に、活発な性格の主人公ジョーは小説家になる夢を一途に追い続ける。彼女をはじめとした四姉妹の姿を通じて、当時の(現代にも通ずる)抑圧的な男性社会の中で道を切り開こうとする女性たちの、「その人らしい生き方」を肯定する物語にもなっていた。

 公開前は『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』という邦題はやや賛否を呼んでいたが、実際に本編を観た方からは称賛の声が多かった。本作は元々の「若草物語」におけるジョーという人物と、そして“物語”の意義をも、新たな視点から問い直しているからだ。画面の隅々までこだわった美術や衣装はひたすらに美しく、現代と過去を同時並行で描く作劇にも大きな意味がある、類まれな傑作だ。

◆6:『チア・アップ!』

 平均年齢72歳というおばあちゃんたちがチアリーディングに挑むという内容だ。のんびりと余生を過ごそうとしていた主人公がおせっかいな隣人にたきつけられ、メンバーのオーディションを開催したところ、集まったのはチア未経験どころか、腕は上がらない、膝は痛い、はたまた坐骨神経痛持ちだった……という、とんでもない立ち上がりとなっている。

 おばあちゃんたちのケガや健康について不安になってしまいそうなところだが、物語としては完全に王道のスポ根ものであり、素人だったメンバーが大きな壁に直面し、いったんは挫折をするも、新たな可能性を見つけて一致団結をし、そして無謀な挑戦に挑むという、むしろ安心して見られる内容になっている。彼女たちの「年齢なんて何のその!」なバイタリティを目の当たりにすれば、誰もが「何かをやってみようかな」とチャレンジをする勇気がもらえるだろう。

◆7:『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

 学校生活を勉学に捧げてきた女子高生が青春を取り戻すため、リア充たちのパーティに突撃!という過程を追った青春コメディだ。目的地にたどり着くまでの(下品なギャグ込みの)様々なイベントはそれだけで面白く、レズビアンの親友の恋を“当たり前”に応援しているということが見ていて心地よい。単にリア充だと思われていたクラスメイトたちが、複雑な人間性を持っていることが徐々にわかっていくということもポイントだ。

 はっきりとLGBTQや多様性を意識した、しかし「大げさにしない」ことが、最先端であり理想的な描き方であると実感できた作品でもあった。ちなみに、途中で登場するムチャクチャな性格の金持ちの女の子を演じたビリー・ラードは、『スター・ウォーズ』シリーズのレイア姫役で知られる故キャリー・フィッシャーの娘であったりする。キャリーが『ブルース・ブラザース』で演じていた破天荒なキャラが、そのまま娘に引き継がれたような感動もあった。

◆8:『82年生まれ、キム・ジヨン』

 韓国の社会で生きる平凡な女性の生きづらさを描き、ベストセラーとなった小説の映画化作品だ。結婚を機に仕事を辞め、育児と家事に追われた女性がうつ病になり、いつしか「他人が憑依した」かのような言動をするようになってしまう。大きな事件が物語を引っ張るわけではない、極めて淡々と展開していく内容だが、そのことがむしろ「小さなことの積み重ねが女性を苦しめる」という普遍的な事実を教えてくれている。

 劇中では、日常的かつ“当たり前”に口にされる、女性への差別的な言動がそこかしこにある。妻のことを心から心配する、まともで優しそうに見える夫でさえも、無神経で浅薄な考えを持っていたりする。男性こそ、「自分もパートナーや身近な誰かを傷つけてはいないか」と襟を正せる内容だろう。解釈が分かれるであろう結末は、ぜひ一緒に観た人と話し合ってみてほしい。

◆9:『パピチャ 未来へのランウェイ』

 世界中から称賛されるも、アルジェリア本国で上映中止の憂き目に遭ってしまった作品だ。紡がれているのは、イスラム原理主義による女性弾圧が行われていた時代に、ファッションデザイナーを志す女子大生の物語。序盤の大学構内で起こる出来事をはじめとして、劇中の理不尽な状況は信じがたいものがあるが、これは1990年代に現地の女子学生たちが日常生活で体験していたことそのままだったのだという。

 主人公が直面するのはとてつもない悲劇であり、その後も簡単な道は用意されていない、かなりハードな内容となっている。だが、どん底からの一縷の希望を描くからこその、女性への慈愛のメッセージが確かにある。自由を渇望し、不当な迫害に抵抗し、何よりも自らのために立ち向かう女性たちの力強さを、ぜひ見届けてほしい。

◆10:『ウルフウォーカー』

 ハンターを父に持つ少女が、人間とオオカミがひとつの体に共存している不思議な女の子と出会うことから始まる物語だ。製作スタジオの“カートゥーン・サルーン”は、これまでの長編作品3本全てがアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされるなど高い評価を得ており、今回も躍動感のあるアクションシーン、豊かなキャラクターの表情、美しい背景描写など、そのクオリティは折り紙付きだ。

 本作の悪役は男性社会の権威主義的な価値観の体現者であり、植民地にされていたアイルランドの過去も作劇に反映されている。そこからの「女性の解放」を描くという、明確なフェミニズムのメッセージを備えていた。そのような社会派の一面、歴史的背景を示しつつも、子どもが観ても存分に楽しめるエンターテインメントになっているのが見事だ。なお、12月11日よりApple TV+で配信されている。

◆11:『魔女見習いをさがして』

 こちらは現在公開中のアニメ映画であり、1999年から4年間にわたって放送された女児向けアニメ「おジャ魔女どれみ」の派生作品だ。子どもの頃に「おジャ魔女どれみ」を観ていたという共通点を持つも、年齢も、住む場所も、悩みも全てが違う3人の大人の女性が不思議な巡り合いで、共に“聖地巡礼”出かけたり、人生の転機を迎える様が描かれている。

 ファン向けの内容に思えるところだが、その実「おジャ魔女どれみ」を全く知らなくても楽しめる。男性に頼らず自立をしていくという女性観は現代的であるし、SNSの炎上およびその付き合い方などの身近な問題も提示されたりする。現実には存在しない“魔法”の解釈も、実に感動的なものになっていた。少しでも“オタク”であるという自覚があったり、はたまた好きなアニメや映画について話すことが喜びだ、という方にとっては、きっと大切な作品になるだろう。

◆まとめ

 今は、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラ騒動による#MeToo運動の広がり、女性や人種マイノリティーなどを積極的に起用することなどを条件とするアカデミー賞の新基準の設立など、多様性やフェミニズムの観点を、作り手側も意識する時代になっている。これらのシスターフッド映画は、その時代の変化の流れに沿った結果として生まれたところもあるのだろう。

 また、これらの作品では、女性が独りのままではなく、女性たちが共に助け合い、そして目指すべき道を見つける様が描かれている。悩みを打ち明けたり、話し合ったりすることもまた、現実での問題解決の足がかりとなるはずだ。

 さらに、12月18日からは女性がまさにヒーローとなって活躍する『ワンダーウーマン1984』、2021年1月8日からはハリウッド映画を支えてきたスタントウーマンにスポットを当てたドキュメンタリー『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』が公開される。

 強い女性の姿を描く作品は、さらに世に送り続けられているのだ。コロナ禍の苦しい状況は続いているが、ぜひこれらの映画に触れて、男性も女性も勇気や希望を、はたまた現実にフィードバックできる学びを得てみてほしい。

<文/ヒナタカ>

【ヒナタカ】

雑食系映画ライター。「ねとらぼ」や「cinemas PLUS」などで執筆中。「火垂るの墓」や「ビッグ・フィッシュ」で検索すると1ページ目に出てくる記事がおすすめ。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」 Twitter:@HinatakaJeF

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