コロナ禍だからこそ飲むべきか、飲まざるべきか? アルコールがもたらす繋がりを再検証する

コロナ禍だからこそ飲むべきか、飲まざるべきか? アルコールがもたらす繋がりを再検証する

イラスト/いらすとや

◆コロナ禍だからこそ飲むべきか、飲まざるべきか?

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。本日は、アルコールと表情・感情との関係について考えたいと思います。テーマは、コロナ禍だからこそ飲むべきか、飲まざるべきか?です。

 新型コロナウィルスが猛威を振るう以前、私はアルコールが好きで、さらにお酒がもたらす場の空気が好きで、毎日飲んでいました。量としては、ワインボトル1本〜2/3本くらいです。日々、どこかの居酒屋かBar、そして、家でも飲む生活をしていました。緊急事態宣言が発令されたのを契機に、家に閉じこもることになり、買い物に行くことも減り、アルコールを一切飲まない生活が続きました。

 すると、様々な変化が生じました。体重が5キロほど減り、睡眠の質が上がり、貯金が増え、仕事をする時間が増えました。仕事をする時間が増えたのは、良いことかどうか疑問ですが、アルコールを断つことで健康的になったことを実感しています。

 ジムに行っても、食事制限をしても「中々痩せないな」と思っておりました。また、「こんなに飲み代にお金を使ってたんだ!」という驚きがありました。これは幸いと、緊急事態宣言が過ぎてもアルコールをほとんど飲まない、飲んでも食事のときにたしなむ程度になりました。

◆社会的絆をもたらすアルコールの効用

 しかし、ここ最近、この生活に問題を感じるようになりました。それは、「絆」です。懇親会の場で、アルコールを飲みながら、公式な場、例えば、オフィスでの仕事上のやり取り、取引先との営業や交渉、大学での講義や社員研修中の場では、語ること・語られることのできなかった、個々人の心を映し出す話題や想いのやり取りが希薄になってしまっているように思うのです。こうしたやり取りから、意外な発見や発想も生まれることもあり、チャンスの喪失も感じています。

 アルコールのもたらす社会的絆についてメタ分析した研究によれば(Capitoら, 2017)、アルコールを飲むことでポジティブな表情が増え、ネガティブな表情が減るということがわかっています。さらに、偏見を抱く人に対しても丁寧に振舞えることを通じて、人間関係を良好にしてくれる可能性があることをFairbairnら(2013)の研究は示してくれます。Fairbairnら(2013)の研究は次の通りです。

◆アルコールは「気不味い空気」を緩和する

 実験参加者を3人1組のグループに分けます。このグループは、全て白人の同人種グループか白人2人に1人ブラックアメリカンが入った異人種混成グループです。

 グループ毎に、アルコール飲料、プラセボのアルコール飲料(実験参加者は本物のアルコールが入っていると思っているものの、本当はアルコールではない飲料)、アルコールではない飲料を0分、12分、24分のタイミングで飲んでもらいます。そして、36分間、会話をしてもらいます。その間、実験参加者の不快に関わる表情及び沈黙の頻度を計測します(沈黙が多いほどが不快を意味します)。

 実験の結果、アルコールを飲んでいない条件において、異民族グループの白人参加者らは、同人種グループの参加者らに比べ、不快な表情をよく多く浮かべ、沈黙も長いことがわかりました。一方、アルコールを飲んだ条件において、異・同人種グループ間に不快に関わる表情・沈黙の差に違いがないことがわかりました。

◆短時間かつ適度なアルコールで、物理的な密を避けても、心は密に

 この研究は、ブラックアメリカンに対する白人の差別意識を前提においており、日本にある差別と同じように考えてよいかは議論が必要です。しかし、そりが合わない、意見の相違がある、あまり話したことがないけど苦手意識がある、そんな方々と酒を飲みかわす場面に適応できる可能性があると思います。

 アルコールの摂取が、不快感に関連する表情を減少させることで、それに伴うネガティブな感情が減る。沈黙の頻度が減少することで、ぎこちない空気感が緩和される。その結果、コミュニケーション上、丁寧なふるまいになる、丁寧なふるまいに映る、こうしたことが起こるのではないでしょうか(アルコールの飲みすぎで気持ちが大きくなり、トラブルを起こすような人は論外ですが)。

 苦手意識を持つ人が、酒の席で陽気になり、ネガティブな顔をせず、こちらに言葉を投げかけてくる。一方、苦手意識を持つ人に対して、アルコールがネガティブな気持ちを減らし、その相手に投げかける言葉を増やす。温和な表情で言葉を交わすことで誤解が解けたり、譲り合いの気持ちが生じるのかも知れません。

 苦手な方とのコミュニケーションに限らず、無目的で効率を考えないコミュニケーションは、人となりを理解したり、意外な発想をもたらしたりととても大切です。

 コロナ禍において、物理的な距離の広がりが心の距離の広がりになり、悲しい事件や心の病気につながってしまう出来事が垣間見られます。これまでと同じ飲み会は難しくても、リモート飲み会や三密を避けられる飲み会、時短飲み会など工夫は色々出来ると思います。短時間かつ適度なアルコールで、物理的な密を避けても、心は密に、コロナ禍でも楽しい忘年会や新年会を過ごして頂ければ幸いです。

参考文献:

Capito ES, Lautenbacher S, Horn-Hofmann C. Acute alcohol effects on facial expressions of emotions in social drinkers: a systematic review. Psychol Res Behav Manag. 2017 Dec 5;10:369-385. doi: 10.2147/PRBM.S146918. PMID: 29255375; PMCID: PMC5723119.

Fairbairn CE, Sayette MA, Levine JM, Cohn JF, Creswell KG. The effects of alcohol on the emotional displays of whites in interracial groups. Emotion. 2013;13(3):468?477.

<文/清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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