コロナ禍での葬儀。葬儀社・僧侶たちの知られざる苦労とは?

コロナ禍での葬儀。葬儀社・僧侶たちの知られざる苦労とは?

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 新型コロナウイルスの感染拡大は、生活の様々な場面に大きな影響を与えています。それは、冠婚葬祭の場も例外ではありません。今回は、通夜や葬儀にコロナがどんな影響を与えているのか、現場の声を取材しました。

◆コロナによる葬儀の変化

 日本で、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからおよそ10ヶ月。普段の生活をwithコロナで過ごすことには多くの人が慣れてきました。しかし、非日常とも言える弔事の現場ではどんな対策がなされているのか、都内の葬儀社に勤務する石坂さん(仮名/女性30代)は次のように話します。「基本的には、一般に行われているものと同じですね。マスクの着用、アルコール消毒液の設置、手に触れる場所の消毒、式場のイスの間隔をあける、換気といったところです」。

 そうした中で、大きく変わった部分としては、葬儀の前後に密となりやすい場面だそうで「式の前までに霊安室でご遺体に対面できるのも5名以下にさせていただいています。それから、出棺時の霊柩車への同乗は、運転手との距離が近いためにご遠慮いただくようにお願いしていますね」と石坂さん。

 また、葬儀内容の注文にも変化があったようで「通夜や葬儀を行わず、ご逝去された場所から直接火葬場へお送りする『直葬』を選択する方が増えました」とも話してくれました。

◆コロナ禍での葬儀社の苦労は?

 あまり多くはありませんが、どうしても会葬者が100人を超えるような葬儀もあったそうです。そうした大規模な葬儀では「式の間はもちろんですが、式の前や後でも会葬された方が密にならないように散会させるよう誘導するのが大変でした」と石坂さんはいいます。

 また、遺族や会葬者にとって、葬儀は故人との貴重な最後の時間なので、これまでも心配りをもっとも重要視してきたという石坂さん。「葬儀の場は、ご遺族や会葬の方にとってただでさえセンシティブですが、そこにコロナでのセンシティブさが加わるので、今まで以上の心遣いが求められています」(同氏)と、苦労を語ってくれました。

 さらに、対策について遺族に説明しても、それを参列者全員に理解してもらうのには、苦労したそう。「式の打ち合わせをするのは、ご遺族だけなんですが、式にはご親戚や友人知人の方もいらっしゃるので、その方々にもコロナ禍での葬儀方針をご理解ご納得していただけるように対応するのには、とても気を使います」。

 方針の説明は、ごくわずかな遺族にしかできないため、実際に葬儀の日には、それ以外の人に理解してもらえず、トラブルが起きてしまうこともあるのです。「火葬場に10名までしか立ち合えない時期があったんですが、実際立ち会いたい親族が20名になってしまったことがあります。打ち合わせ時に説明はしていたんですが。遺族側にしたら『最後なのに!』となってしまって。お気持ちもわかりますので、大変心苦しかったですね」(同氏)。

 石坂さんは最後に「ご遺族のお気持ちとルールをすり合わせるのも、私たちの仕事です」と、プロらしい言葉をくれました。

◆お坊さんはマスクで読経に苦労

 葬式で変化があれば、もちろんお坊さんにもその影響が及びます。目黒区にあるお寺の副住職を勤める古田さん(仮名/男性40代)にお話を伺いました。まずお寺でも普段は、手洗いや換気や人数の削減など、一般的な対策はもちろんしているそう。

 お坊さんといえばお経ですが、声を出すために飛沫が広がる原因になりそうですが、古田副住職は「マスクをつけたまま読経しています」と話します。その苦労については次のように語ってくれました。「東京の通夜葬儀での読経は、おおよそ40分程度ではあるんですが、個人的には大変です。読経している最中の、予期せぬタイミングでマスクが口に張り付いて、一瞬呼吸ができなくなることがよくあるんですよ」と副住職。

◆「高齢者をお迎えするので心理的な負担が大きい」

 前述の、葬儀社に対するようなトラブルやクレームはあるのか伺うと「特にはありませんよ。『こういったご時世だから仕方ないですよね』という声がほとんどです」との返答で、クレームの多くはお寺ではなく葬儀社に向けられているようです。お寺は普段から檀家としての交流があるため、理解をしてもらいやすいということが、背景にあるのかもしれません。

 さらに古田副住職のお寺では「檀信徒さんに不定期でお送りしているお葉書で、何か迷うことがあったら、いつでも相談してくださいと伝えているので、相談に応じて柔軟に対応ができているんだと思います」とも。やはり、普段からのコミュニケーションの積み重ねが、トラブル回避には重要のようです。

 それでも、心配事は絶えないとのこと。「お寺は、高齢者や基礎疾患をお持ちの、いわゆるハイリスクな方をお迎えすることが多いので、その点、心理的な負担は大きいですね」と、副住職。

 何事にも代えがたい別れのひとときである葬儀。ここに制限がかかってしまうことは、多くの人の悲しみが癒されない結果になってしまいます。そうした面からも、一刻も早いコロナの収束を願わずにはいられません。

<取材・文/Mr.tsubaking>

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