データで見れば国民は我慢したのに再加速した日本の感染拡大。原因はアクセルとブレーキを同時に踏む防疫行政の愚

データで見れば国民は我慢したのに再加速した日本の感染拡大。原因はアクセルとブレーキを同時に踏む防疫行政の愚

(Photo by Stanislav Kogiku/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

◆第3波エピデミックSurge再加速

 前回、破滅的な速度で増進中だった本邦における第3波エピデミックSurgeが、突然急減速し、その理由がGo To Eat Point(GTEP)ではないかという仮説を論じました。

 残念ながらこの仮説については、統計の挙動しか証拠はありませんが、PCR検査新規陽性者*の行動履歴、接触履歴を追跡すればそれによって確実に分かることであって、防疫上の責任は厚生労働省(厚労省)にあります。そしてこれは、防疫のイロハのイです。

〈*抗原検査陽性者もPCR検査で確定検査され、PCR検査陽性の場合に感染者として診断される。これは、PCR法が感度100%、特異度100%でありCOVID-19確定診断のGolden Standardであるためである。付言するとPCR検査は人件費、減価償却費を入れても高く見積もって1人10ドル≒千円程度のコストと極めて安価であり、全世界の貧しい国でも大規模に行われている。〉

 前回、気がついた方もいたと思いますが、「日本と韓国における100万人当たり新規感染者数の推移(ppm Raw DATA)2020/09/01-2020/12/09」というグラフを注意して読むと、横ばいから微減の推移をたどっていた本邦の日毎新規陽性者数が、12/6から12/9にかけて増加に転じていました。

 その後の推移を見ますと残念ながら12/7頃を起点に本邦の日毎新規感染者数は、増加傾向を再加速したと考えられます。日毎新規感染者数が2倍になる事に要する倍加時間は、11月末から12月初めにかけて1年近くに延びていたものが現在(12/16現在)では、45日程度まで加速しています。この傾向が続くと、12月中には倍加時間が30日以下に短縮される可能性があり、強い警戒を要します。

◆第3波エピデミックSurge再増進の原因は今年最後の3連休=「我慢の三連休」

 折角新規感染者数の増加率がゼロ近くまで下がっていたのが目に見えて再加速した理由はカレンダーを一見して分かります。12/7の2週間前は、11月最後の連休でした。

 11/21〜11/23の連休に怖がりの筆者は、いつものように家に閉じこもっていました。この1年近く筆者が出かけるのは、人出のなくなった夜に限っています。まるでアリクイのような夜行性です。実は筆者は、学生時代に「夜の男」と呼ばれ、夜になると実験をしている(昼にはあまりいない)為に、ボスから、たまには昼にいてくれと頼まれていたような気もしますが、きっと気のせいでしょう。

 さて、11/21〜23の連休中の賑わいは報道にとても詳しいです。ここにそのほんの一部をご紹介します。

●“我慢の3連休”スタート 観光地の人出は... 2020/11/21 FNN

●“我慢の3連休”始まる 感染拡大の北海道に観光客 2020年11月21日 ANN

●“GoTo見直し”の中・・・3連休の観光地は人出増も 2020年11月22日ANN

●3連休の人出増 観光地で目立つ2020/11/24 日本経済新聞

 このように11/21-23の三連休には、秋の紅葉を楽しむ観光客で各観光地がかなりの混雑になったようです。但し、報道やデータをよく読みますと、行楽地、繁華街、交通結節点では前日比でかなり混雑している場所が見いだされますが、前年同月休日比(昨年11月の休日と比較して)では、一部の例外を除き大幅に人流は減少しています。要するに、観光地には通常に比べれば多くの人混みが発生し、不特定多数の対人接触が発生していますが、例年比では相当に減少していたと考えられます。

 これは内閣官房の公開している「全国主要駅・繁華街エリアにおける人流の動向」*からも分かります。

〈*11/20、11/21、11/22、11/23、11/24〉

 報道では、「我慢の三連休」というスローガンを守らない愚民扱いされていますが、実際には例年に比べ市民は、相当に出控えていたことが分かります。そうであっても連休効果で観光地の移動傾向は、大きく増えています。結果としてその2週間後に統計上のCOVID-19新規感染者数が増加に転じたと考えられます。やはり個々人の努力に任せる「我慢の三連休」といった精神主義では、最早COVID-19には太刀打ちできないことがはっきりしたと言えます。

 全国各地の移動傾向を見ても、市民の移動傾向は減少気味ではあるものの第3波エピデミックSurgeを収束に向かわせるには全く不十分です。結局「我慢の三連休」というスローガン防疫では、最早実効性に全く不足しているという事です。また、東京医師会長が「我慢の三連休」と呼びかけたのが連休直前の11/18ですし、同日、加藤官房長官は、事実上その呼びかけを否定*していました。

〈*加藤長官「移動自粛、必要ない」 医師会長呼びかけに 2020/11/18朝日新聞〉

 アクセルとブレーキを同時に踏むというドシロウト運転が本邦の防疫行政では常態化していると言えます。

◆感謝祭後の合衆国

 合衆国では、11/21-11/29がサンクスギビング(感謝祭)の休日であり、本邦で言えば盆暮れ正月が一斉に来たようなとても大切な祝日です。この期間には、親戚一同が全米から一箇所に集まり会食(パーティ)を楽しむ習慣です。さらに一族郎党に加えてご近所さんまで呼び寄せます。大学生もキャンパスから出て里帰りしますので、全米の多くの大学では帰省をしないように学生に呼びかけました。それでも殆どの学生は帰省してしまうため、週一回の学内PCR検査に加えて出発前と大学に戻った直後のPCR検査を行った大学もあります。

 CDCは、サンクスギビングの休暇直前の11/19になって漸く旅行を取りやめるように推奨するガイダンスを公表しました*が、時既に遅く11/21から空港が大混雑するに至りました**。市民の旅行が止まらなかったため、合衆国疾病予防管理センター(CDC)では、航空機などでの移動の前後に検査を行うことを推奨していました。

〈*Celebrating Thanksgiving 2020/11/19 CDC:旅行時の注意点が示されているが、旅行は避ける、サンクスギビングは同居者だけで祝う、zoomなどの遠隔手段で親戚と会食することなどが推奨されている〉

〈**Thanksgiving: CDC says avoiding travel and gatherings is safest 2020/11/19 The Washington Post:記事中の写真は、ロサンゼルス市のドジャースタジアムに設置されたドライブスルー・PCR検査場である。1日8,000人の検査能力があり、平均待ち時間は20分ときわめて円滑に運用されている。ドジャースタジアムは、全米最大のPCR検査施設(検体採取場)である。CNN New DAY 2020/11/15よ〉

 CDCの対応が著しく遅れてしまったのは、トランプ政権の徹底した無関心とホワイトハウスによる圧力の為とされ、世界最強の医療大国である合衆国は、4年前の有権者による選択によって全く精彩を欠き、今日では、一日3000人を超える市民が死亡しています。合衆国では既に累計30万人を超える人々がCOVID-19によって死亡しており、今月中に第二次大戦による合衆国の犠牲者数を超えます。

 合衆国でも前年同期に比べると旅行者数は減少しており且つ日常の経済活動による移動傾向が大きいためにサンクスギビングの移動傾向への影響はむしろ減少に働いていますが、普段大きな移動をしない人たちが州をまたぐ大移動をし、更に目的地で会食(パーティ)をおこなった為に今週頃から新規陽性者の激増につながる可能性があり、厳戒されています*。合衆国は、100万〜200万検査/日という巨大な検査能力を持ちますが、既にロジスティクスの限界に達しており感染後、統計に表れるまでに20日前後を要しています。

〈*Despite Covid, 4 million traveled for Thanksgiving, new data shows 2020/12/15 CNN〉

◆米国でも医療は限界に近づいている

 CNNでは、公衆衛生や防疫の専門家がサンクスギビングの休暇を「今年だけは同居家族だけで楽しむか、大勢で集まりクリスマスをICU(集中治療室)の中で迎えることになるかの選択になる」とまで踏み込んで連日盛んに発言していましたが、既に合衆国の医療は限界に近く、これから重症者が急増しても入院する病床すら無いという状況が迫っています。既に11月の時点でネヴァダ州のレノ病院では満床となり、駐車場を改造して病室を拡大したことが報じられています*。この病院では、11/29頃を頂点として一旦峠を越えましたが、サンクスギビングの影響による患者増加に備えて特設病室は維持しているとのことです。

〈*Nevada hospital treats patients in parking garage amid coronavirus surge 2020/12/07 CBS〉

 レノ病院のICU担当医による特設病棟内でのセルフィーのTweetが出ましたが、トランプ大統領は、これをフェイクとするTweetを引用リツイートして厳しい批判を浴びました*。

〈*Nevada doctor Jacob Keeperman rebukes Trump retweet saying photo of covid medical unit was fake 2020/12/02 The Washington Post〉

◆本邦に対し厳しい見方をする海外研究機関

 本邦は、世界で唯一の国策による検査抑制を行っており、医師会検査については陽性者のみ集計、自主検査は陽性者が自主検査結果を医師に持ち込み、医師が診断の上で報告しないと集計しないという徹底した不作為によってCOVID-19統計が壊れています。とくに医師会検査の始まった5月以降、陽性率などの重要指標が意味を成さなくなっています。

 防疫を航海に例えれば、最重要の羅針盤であり、海図である統計を自ら破壊する国は、本邦以外になく、人類にとり共通の謎となっています。

 これはたいへんに困ったことで、本邦の統計を諸外国と比較する際にはたいへんに注意を要します。

 COVID-19感染者、死者などの基本統計は、検査の有限性から真の値と乖離があることは世界共通で、ICL(インペリアルカレッジロンドン)や、IHME(保健指標評価研究所)は、現在も継続して全世界の統計について、新規感染者や死者の真の値について評価をおこなっています。

 各国についてそれぞれの研究機関は統計が大幅な過小評価であることを指摘してきていますが、本邦についてとくにICLは、著しい過小評価をしていると批判的な評価をしています。

 本邦における第3波エピデミックSurgeについて、ICLは、現時点で8倍近い数値を公表しています。IHMEも真の値は3.5倍を超えると評価しています。但し、これらは、筆者が前回指摘したGTEP(GoTo Eat Point)中止によるエピデミックSurgeの急減速を評価に入れておらず、筆者は著しい過大評価ではないかと考えています。

 ICLは変化が生じて4週間以降後、IHMEは3週間以降後に評価の見直しをしますので、筆者はそれを待っていますが、その分を差し引いても本邦第3波エピデミックSurgeは、既に第1波、第2波の最悪値を凌駕しており、現在も増進中であることは明らかです。

 本邦では既に統計に連休後のエピデミックSurge再増進が現れており、合衆国もサンクスギビング休暇の影響が統計に現れ始めます。

 本邦では、既に医療があちこちで限界に近づいており、旭川や大阪では医療の破綻が始まっています。この状態では、仮に日毎新規感染者数が横ばいでも医療の破綻は全国に広がってゆきます。医療が破綻すると、COVID-19 だけでなく出産分娩、虫垂炎などの日常的な手術、ガンなどの手術、交通事故・急患などの救急医療が機能を失いますので、大勢の市民の命が失われることになります。

 現在本邦の急務は、第3波エピデミックSurgeを確実且つ大幅に押し下げることに他なりません。この好機は、3連休直後に一週間変化率がほぼゼロになった11/30前後でしたが、その好機は無為に逃してしまいました。今後は、副作用の大きな強力な介入をする必要があると筆者は考えます。

◆今後が比較される日韓両国

 第3波エピデミックSurgeは、本邦と韓国が酷似した推移をたどっています。但し本邦では、全国でエピデミックが進行しているのに対して、韓国ではソウル市域に集中しているという差があります*。

〈*CNN Newsroom 2020/12/14 4:35(EST)頃〉

 韓国では12/14より世界的に模範とされている「K防疫」が大幅に強化されましたが、本邦では大きな動きがありません。12/13から年末年始にかけての日韓の動向に世界が注目しています。

◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ34:迫り来る地獄5

<文/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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