交通費も貰えて無料のPCR検査も!? コロナ禍の入院治験に行ってみた

交通費も貰えて無料のPCR検査も!? コロナ禍の入院治験に行ってみた

写真はイメージです photo by mits / PIXTA(ピクスタ)

◆貧乏学生の定番「裏バイト」だった治験だが……

「これまで常連で参加してくれていた学生さんが減っています。ですが、新薬の販売はコロナに関係なくあるので治験への協力者集めに苦労しています」

 と新薬治験の企業担当者は話す。

 治験とは、主に製薬会社が発売する新薬の承諾を厚生労働省から得るために行う試験を指す。日本の治験は副作用がほとんど確認されないレベルの最終段階で実施されているとされる。

 健康な人を対象とする治験は若年層のほう適応者が多いため大学生など10代、20代の参加者を歓迎しているようだ。新薬は毎年のように発売されるので繰り返しニーズがあり治験参加者の安定した確保は製薬会社にとっては非常に重要となっている。

 そこで、製薬会社は適応者の囲い込みを行い、治験参加者はアルバイトとしてリピートする人も少なくないという。その主力母体が大学生など学生だったわけだが、特に大学生が減っていると担当者は話す。

 新型コロナウイルス感染症対策で、高校までは席間隔を空けたり、換気を徹底したりと感染対策を講じながら対面授業を続けているのに対し、多くの大学はもっぱらリモート授業を行っている。

 今年は大学へ入学するもほとんどキャンパスへ行くこともなく大学生になった実感がない学生も多いようだ。それも影響してか大学生の新型コロナに対する警戒心は他の世代よりも強く、不特定多数の人を避ける傾向に現われ治験も避けられているのかもしれない。

◆「治験」の基礎知識

 治験は主に2つの種類がある。入院治験と通院治験だ。

 入院治験は、健康な人へ投薬して身体への影響や血液成分を細かく記録するもので長いものは20泊21日などもあるが、多くは2泊3日か3泊4日となる。入院治験は年齢制限があり45歳までがほとんどだ。これは治験を実施する製薬会社が定めているもので、各会社ごとに35歳、40歳、45歳と年齢上限を設けている。

 報酬は15万円から40万円くらいが多く、メインの2泊3日くらいだと15万円から18万円くらいだろうか。支払い方法は一部を現金手渡し、残りを指定口座への振り込みなど実施会社により異なっている。

 もう1つの通院治験は、特定の持病を持っている人を対象としているものが多い。たとえば、糖尿病、高血圧、高眼圧、偏頭痛、膝痛、アトピー、巻爪などの個別症状がある人向けに自宅で投薬し月1程度で通院して改善状況を観察するものだ。こちらは対象年齢が広いものが多く、該当持病があれば参加ハードルは低い。その代わり生活報告などが課せられるため毎日報告を提出したり、飲酒や海外渡航などの行動制限を求められたりする。治験期間も3か月間くらいから長いものだと2年におよぶものなど多種多様だ。

 報酬は、通院1回あたりで支払われたりすることもあり、合計5万円から8万円くらいとなる。

 入院、通院どちらのタイプでも治験参加を希望すると説明会を兼ねた事前検査を受ける。ここで血液や尿、遺伝子検査、問診などを受けてスクリーニングされる。事前検査のみでも交通費として3000円から5000円を現金でもらえる。この交通費狙いでひたすら参加する人もいるようだ。

◆低くはない本治験へのハードル

 海外在住だった筆者は4年前に活動拠点を日本へ移してから治験へ応募してきた。20回近く応募しただろうか、そのうち本治験へ進むことができたのは通院治験1回のみで、あとはすべて事前検査で落ちた。

 治験は健康診断ではないので検査に落ちた理由は教えてくれないことが多い(治験実施する医療機関によっては個別に教えてくれるところもある)。原因が不明では改善しようがなくて困るのだが、著者の場合は、もともと脾臓が弱いことに加えて酒飲みなので肝臓、腎臓など内臓系の数値が悪い。ほぼすべての治験では事前査前24時間は飲酒禁止となっているので守って受けるも落ちまくった。

 この話をかかりつけ医に話すと、たった1日酒を断ったくらいで内蔵数値が回復するのであれば医者は廃業だよと呆れられた。

 ところが、11月末、人生初入院治験へ合格を果たした。合格は変な表現だが初めて事前検査を突破して入院治験へ進むことができたのだ。

 おそらく理由は私的な問題で8月上旬から節酒を始めこれまでの飲酒量の5分1くらいに減ったことが要因だと思われる。これまで休肝日なく毎日飲んでいたのが、1週間以上、一滴も酒を飲まなくても平気になった。まあ、この話は余談なので置いておくと、著者の場合は飲酒習慣が合格への障壁になっていたようだ。

◆入院前にはPCR検査も実施

 コロナ禍ならではのことだが、入院前にこれも人生初となるPCR検査(唾液採取)を受け、無事陰性となった(陽性だったら別の意味で隔離されるところだったが)。PCR検査を無料で受けてさらには交通費として5000円をもらえる。これは結構嬉しい。

 PCR検査直後、いよいよ人生初の治験入院が始まった。2泊3日を2週にわたり2回という行程だ。部屋は6人部屋でカーテンで仕切る程度でプラバイシーはカプセルホテル以下。苦手な人は厳しかもしれない。

 著者はちょっとだけバンコクの多国籍なゲストハウスをイメージしていたが、淡い空想だった。ここは日本、室内では3日間、挨拶も含めて一言の会話なしの虚無空間で過ごす。

 新型コロナ対策で常時マスク着用、食事も各ベッドで食べ、頻繁に指先の消毒を行い、換気のため窓を開けているので寒い。

◆Wi-Fiありで電子機器OKなら仕事も十分可能

 入院初日と2日目は体調を整える期間で規則正しい生活をするだけで何も試験はない。本番は最終日の3日目に投薬と決まった時間に血液採取をして最後に医師の問診を受けて終了となる。

 と、さらっと紹介してみたが、室内はWi-Fiが飛んでおり最終日の半日を除けばパソコンやスマートフォン操作ができる治験だったので、ひたすらベット脇の荷台にパソコンを設置して溜まっていた原稿を黙々と書いていたため、ほぼ平時と変わらぬ仕事をしつつ入院生活を過ごした。

 治験によっては医療機器使用でスマホ操作も禁止という治験もあるので事前に確認したほうがいい。普段からノマドワーカーのようなパソコン1台で仕事ができちゃう人なら問題なく仕事ができるのではないだろうか。

◆コロナ以前ならば食事はみんなで食べていたが……

 実際に入院治験へ参加した感想は3食つきの健康合宿というところか。入院中は提供される食事(弁当)以外は食べることができなかったり、飲み物も終日水(朝食にオレンジジュース)しか飲めない。飲酒はもちろん、喫煙もダメなので、これらが耐えられる人向けとなる。入院して実感したのは、軽いカフェイン中毒なのか、コーヒーが飲めないのがやや辛かった。

 治験募集会社の担当者によると、普段だと食事は一堂に介して食べるとのことなので、ポストコロナになれば治験者同士での交流は多少あるのかもしれない。

 また、1度治験へ参加すると次の治験へ参加するまで4か月間、空ける必要がある。つまり、年最大3回ということだ。

 治験者情報はどうやって管理しているのかと言えば、治験参加者を管理するデータベースがあり登録されている。このデータベースを治験実施企業や医療機関は参照することができる。そのため、もし偽って参加したことがバレると生涯治験参加禁止を受けることになる。同時に治験には高い秘密保持義務が課せられるため違反すると製薬会社に訴えられることもあるとか(もちろん本記事も守秘義務に触れるようなことは書いていない)。治験に興味がある人は十分に注意してほしい。 

<取材・文・写真/我妻伊都>

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