卒業アルバムの表情でその人の行く末がわかる!? 表情分析の研究が面白い

卒業アルバムの表情でその人の行く末がわかる!? 表情分析の研究が面白い

作り笑顔でも、幸せな表情と寿命の連関関係が明らかに

◆顔と性格、未来や運命に関係性はあるのか?

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。年の瀬も迫り、来年の自身の行く末が気になる今日この頃。

 みなさんは、顔占いや人相学、観相学というものを信じますか?顔の輪郭や眉・目・口の形、それぞれの位置関係などから人物の性格や行動傾向、未来、運命を予想する占いの類型というか、技術というか、行為です。

 表情や微表情を毎日分析し、分析対象人物の表情と感情、その後の行動の結末を観ていると、顔面筋の動きだけでなく、「動きのない」顔そのものからも何か読みとれるのではないかと考えることがあります。

 顔そのものからわかる情報として、現在すでにAIによる顔認証技術などで利用され、妥当性が高い特徴として知られているものに、年齢、性別、民族、個人識別などがあります。

 しかし、気になるのは、その先。顔と性格、未来や運命との関係です。そこで本日は、私たちの顔と特性との関係について紹介し、より良く人生を歩むヒントを考えたいと思います。

◆卒業アルバムから、その人の「その後」がわかる!?

 顔の姿・形とそれを持つ人物との関係について、科学的には何がわかっているのでしょうか。

 例えば、記念アルバムの中にある人物写真を見、その人物が現時点で自殺しているか・自殺していないかという判定を実験参加者にしてもらうと、偶然のレベルを超えて、その判定が正確であることがわかっています(Kleimanら, 2012)。

 実験参加者は、自殺者の顔には衝動的攻撃性が感じられると報告しています。また、写真に写っている人物の印象を実験参加者に推測してもらうと、この推測と人物の社会的成功度とに関連が見出されています(Rule, & Ambady, 2008; 2009; 2011)。実験参加者は、社会的成功をしている人物の顔は、自信に満ち溢れ、指導力にみなぎり、支配的な雰囲気を醸し出していると報告しています。

 こうした研究は、顔からの情報をもとにした実験参加者の主観が、その人物の特性をある程度確からしく予測出来ている証拠と言えます。しかし、根拠が主観であるゆえ、顔のどんな特徴がその人物の特性を示すのか具体的にはわかりません。

 一方、本連載(「”犯罪者の顔”は先天的に決まっているのか?」)でも以前紹介しましたが、AIを使って犯罪者の顔と非犯罪者の顔とを比べた研究では(Wu, & Zhang, 2016; 2017)、顔の各パーツと犯罪者顔との関係を具体的に見出しています。

 この研究によれば、犯罪者の顔の特徴とは、「口が小さく、上唇が曲がり、両目の間隔が狭い顔」ということです。

◆観相学のメカニズムは科学的に実証可能か?

 しかし、現代科学の多くは観相学的な考えやその実証可能性に否定的な見解を示しています(トドロフ, 2019)。妥当な実験デザインを作る困難さと相まって、ある顔の形や顔の各パーツの相対的位置関係が、人物の特性を示す理由を適切に示せていないと考えています。

 特定の眉・目・口の位置関係が人物の攻撃性を示すと、実験参加者が主観的に感じる、あるいはAIがその関係を抽出するのは、なぜか。特定の顔パーツの位置関係を持って生まれると攻撃的な印象に映り、周りの人々が抱くそうした印象がその人物の行動を攻撃的にしてしまうのか、日々、攻撃的な行動をしているからそうした顔になるのか、あるいは、その両方か。とても興味深い関係なのですが、科学的にはまだよくわかっていないようです(※)。今後の研究の進展に期待しています。

〈※観相学の研究の中に相貌心理学というものがあります。その源流はフランスにあります。フランス語の原著に観相学的な考えが科学的に実証されているものがあるかも知れません。しかし、筆者はフランス語を読めないため、この見解はあくまでも日本語と英語の著作や論文に基づくものとなります〉

◆観相学は微妙だが、表情は行動を決定づける

 一方、顔面筋の動きを伴う顔、すなわち表情と性格、行動や未来との関係については、あるメカニズムを紐解くことが出来ます。ここでは静的な観の相の研究と比べるため、一瞬の表情を固定した写真との関係を調べた研究を取り上げます。

 フェイスブックの写真の中で笑っている人物は、しかめ面の人物に比べ、人生に対する満足度が高く、より良い人間関係を送っていることがわかっています(Seder & Oishi, 2012)。

 また、卒業記念アルバムで幸福表情が弱いほど、離婚する傾向にあり、幸福表情が強いほど、婚姻関係の安定性や満足度が高いことが実証されています(Harker & Keltner, 2001)。さらに、Cross(2016)の研究では、学生証の身分証明写真を分析対象にした研究から、学生証の写真の表情が、真顔に比べ幸福表情の人物は、予防的な目的で医療施設に多く訪れることがわかっています。

 こうした研究は、顔と特性との関係についての研究同様、因果関係についてはわかりません。しかし、素材である写真は、フェイスブック、卒業アルバム、学生証と他者に観られることを前提とした写真です。このことから、写真が一種の自己表現の場、他者に見せたい自分像を作る場になっていると考えられます。

 Cross(2016)の研究で考えてみます。学生証の証明写真に笑顔で写る学生は、健康であるから笑顔になる、もちろん、この方向も考えられます。しかし、感情というものは刹那的なものであるため、証明写真を撮影するとき、この学生の気分は優れないかも知れません。

 しかし、人に見せることを意識して笑顔を作り、撮影に望む。こうした自己表現を心がける学生は、そうでない学生に比べ、人当たりがよく、健康に気を使い、活動的に人生を歩もうとする。こう考えることが出来るのではないでしょうか。

 病気予防の目的で医療機関に訪れるということは、病気の早期発見につながり、寿命にも関係してくると考えられます。

◆表情写真から未来を占える

 例えば、野球選手の写真から幸福表情の強度と平均寿命との関係を調べた研究によると(Abel & Kruger, 2010)、満面の笑みを浮かべている選手は平均80歳まで生き、軽く笑っている選手は平均75歳まで生き、真顔の選手は平均73歳まで生きることがわかっています。

 写真に込められた一瞬の表情は、他者を意識した表情であり、その表情に伴う心理状態を形成し、それに適した行動へと向かうのではないでしょうか。そうであるならば、一枚の写真に写された表情からその人物の心理と未来を推測することは、厳密に把握することは難しくても、大まかな方向性を把握することは可能であると考えられます。

 私たち日本人の場合、学生証は真顔がデフォルトだと思います。そこで、より自由度の高い卒業アルバムあるいは、フェイスブックを含むSNSなどに写るご自身のカバー写真を参照したらよいのではないでしょうか。その表情は、笑顔ですか。真顔ですか。

 みなさんの来年の健康、否、寿命を占いましょう。目尻にしわが寄るくらいの笑顔なら、真顔の方に比べ、平均的に長生きできるでしょう。そうでなければ……長生きしたければ……満面の笑みを心がけましょう。人に対する配慮が変わり、行動が変わり、活動的になり、幸せに長生き出来る可能性が上がると期待できます。

参考文献:

Abel, E. L., Kruger, M. L. (2010). Smile intensity in photographs predicts longevity. Psychological Science, 21, 542?544. doi:10.1177/0956797610363775

Cross, M. (2016). Does a Smile on Picture Day Keep the Doctor Away? The Connections between Facial Expressions in Student Identification Photographs and Health Care Center Visitation. UC Irvine. ProQuest ID: Cross_uci_0030M_14038. Merritt ID: ark:/13030/m5w717m6. Retrieved from https://escholarship.org/uc/item/267407kw

Harker, L., Keltner, D. (2001). Expressions of positive emotions in women’s college yearbook pictures and their relationship to life outcomes across adulthood. Journal of Personality and Social Psychology, 80, 112?124.

Kleiman, S., & Rule, N. (2012). Detecting Suicidality From Facial Appearance Social Psychological and Personality Science Social July 1, 2013 4:453- 460.

Rule, N. O., and Ambady, N. (2008). The face of success: Inferences from chief executive officers’ appearance predict company profits. Psychological Science, 19, 109-111.

Rule, N. O., and Ambady, N. (2009). She’s got the look: Inferences from female chief executive officers’ faces predict their success. Sex Roles, 61, 644-652.

Rule, N. O., and Ambady, N. (2011). Face and fortune: Inferences of personality from Managing Partners’ faces predict their law firms’ financial success. Leadership Quarterly, 22, 690-696.

Seder, J. P., & Oishi, S. (2012). Intensity of Smiling in Facebook Photos Predicts Future Life Satisfaction. Social Psychological and Personality Science, 3(4), 407?413. https://doi.org/10.1177/1948550611424968

Wu, X., & Zhang, X. (2016). Automated Inference on Criminality using Face Images. arXiv preprint arXiv:1611.04135.

Wu, X., & Zhang, X. (2017). Responses to Critiques on Machine Learning of Criminality Perceptions. Addendum of arXiv:1611.04135.

アレクサンダ―・トドロフ(著)・中里 京子 (訳)『第一印象の科学――なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?』みすず書房 2019年

<文/清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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